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【本】我思うゆえに我あり 死刑囚・山地悠紀夫の二度の殺人

4093897220我思うゆえに我あり 死刑囚・山地悠紀夫の二度の殺人
小学館 2009-10-16

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「我思うゆえに我あり 死刑囚・山地悠紀夫の二度の殺人」小川 善照 (著)

自分の母親を惨殺して少年院矯正施設に入り、出所後またなんの関係もない姉妹二人を惨殺して死刑になった、山路悠紀夫の短い生涯を描く。本作は、小学館ノンフィクション大賞の優秀賞を獲得したもので、本になるのを待っていました。作者の思うところあって、小説仕立てになっていますが、ノンフィクションとしてとても読み応えがありました。

最初に、山路が母親を殺害した頃、愛知豊川市で17歳の少年が「人を殺してみたかった」と言って何の関係もない主婦を殺害したり、佐賀ではやはり17歳の少年がバスジャックをして乗客を殺害したりと、少年たちの犯罪が多発していて、この事件もその流れで言えば同じように心に残している人もいることと思います。
アスペルガー症候群と言う言葉が一般に知れ渡るようになったのも、これらの事件を介してだったようです。
この少年たちが総じて「アスペルガー症候群の疑いあり」という診断を受けているようなのです。

アスペルガーと言う発達障害が、事件と結び付けられて考えられがちですが、本書を読み、山路悠紀夫の生涯を見るとその発達生涯よりも深刻なのは、生い立ちの影響だと断じられるのでは。

実の所本心を、ありていに言わせてもらえば、こんな人間がもしも身近なところに住んでいたら、怖くてたまりません。
自分の知り合いがこう言う被害にでも合おうものならきっと「死刑に!」と思うでしょう。
3人の命を奪ったこの山路悠紀夫ですから、その生い立ちがどうであれ、同情するなどもってのほか、被害者の命に対して冒涜するようなものです。
・・・そうは思っても、同情せずにいられないほどかわいそうな人生なんですね、これが。
父親が酒乱で暴力、母親との不和、それでも酒気のないときには良い父親であったから大好きだった、でも酒がたたり早死にしてしまう、その後、母親にも見捨てられたような生活になり、お金の苦労もあり、学校ではいじめられ不登校になり・・・と・・・。惨憺たる子ども時代。
同じような境遇で育ったからと言って、即ち犯罪者に誰もがなるのかと言うと、決してそうではないのだから、生い立ちを言い訳にしてはいけないだろうけど、それでも、何とかならなかったのか?と思わずにいられません。
先日読んだ『橋の上の殺意』のときも同じように、小学校時代の担任の心無い仕打ちに絶句しましたが、山路が家庭の調理実習で「君は教材費を支払ってないから食べることは出来ません」などとクラス全員の前で言うなど、今回もそういったものが育つ上で心の傷になったんじゃないかと察せられます。
それだけが原因ではないだろうにしても、いろんなマイナスが相乗して、まずは自分の母に圧倒的な憎しみを抱き惨殺し、少年院に送致され、出院の後、ゴト師という裏の家業に身を落とすが、それでもなんとか「まともに」生きようとするも、何がきっかけか二人の姉妹を惨殺、と結果3人の命を奪ってしまう。
どこかで、なんとかなったかもしれない。姉妹が被害にあわずにすむような、そんな道が山路にあったかもしれない。それが本書を読んでいるときに切ないまで感じられて、辛いほどなのです。
なによりも悲しかったのは、彼のことをちゃんと理解しようとしている人々(弁護士など)に対しても、決して心を開くことなく、そして、自分の犯した罪や手にかけた人たちに対して何の罪の意識も呵責もなく「自分は生まれるべきではなかった。死刑でいいんです」と言い放った山路の絶望の深さ。いや、絶望し徒労感に浸ったのは数少ない支援者だったかもしれません。その人たちの悲しみが伝わってくるようです。自分の命を愛せない人間は、他人の命をも尊重できないのか・・・・。

でも、裁判で言った事が本心だとは誰にも分からない。山路は罪を受け止め、罪の意識を感じていたのかもしれません。表面にださなかっただけで。そう思わないとやりきれない。本当に救いがない辛すぎる事件でした。
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22:02 : [本・タイトル]わ行トラックバック(0)  コメント(3)
たまたまブックオフで「我思うゆえに、我あり」
を見て「この快楽殺人犯の本を読もう」と軽い気持ちで買いました。
泣いた、、、。

山地は鬼畜でもなく、快楽殺人者ではないと思います。早く死刑になりたくて強がって言った言葉のような気がします。
生い立ちや境遇を言い訳にせず、心を閉ざしたまま逝ってしまった山地くん、、、。
何とかならなかったのかと悔やまれます。
きちんと教育を受けれていたなら、頭は良かったはずなので(デカルトなんて普通理解できない)
能力を発揮できた場所があったはず。

それと調理実習でみんなの前でクッキーを食べるな、と言った教師を心の底から軽蔑します。

2012/01/20(金) 10:06:17 | お名前は? │ URL | [編集]

こんにちは。コメントありがとうございます。

「死刑でいいです --- 孤立が生んだ二つの殺人」池谷孝司
も同じ山路のことを書いた本です。
よろしかったらお読みになってみてください。

確かに教師の言動は許せませんよね。
そういう些細なきっかけの一つ一つが積み重なって
山路悠紀夫という殺人者を生んだのなら
教師にも責任の一端があるように感じられます。

しかし、やっぱり殺されて亡くなった方とその後家族が一番気の毒で・・・・
やりきれないですね。

2012/01/22(日) 15:36:12 | short │ URL | [編集]

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2012/02/06(月) 22:53:17 | - │ | [編集]

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