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【本】悪党/薬丸岳

4048739743悪党
角川書店(角川グループパブリッシング) 2009-07-31

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主人公の佐伯修一は元警察官だけど不祥事を起こして退職し、今は探偵事務所に勤めている。
その探偵事務所にあるときひとつの依頼が来た。自分の息子を11年前に殺した男、坂上が今、どうしているのかを調べて欲しいと言うものだった。当時少年だった坂上は、2年間少年院に収容されて出院している。いまだに坂上の罪が贖われたと思えない依頼主は、坂上を赦すか赦さないかを「知りたい」と言う。。。。

実は主人公の佐伯修一も、過去に肉親を犯罪でなくすという過去を持っています。過去とは言っても修一にとってはその苦しみや悔しさなど、あらゆる感情はそのままであり、まだまだ「過去」の話ではない。この探偵事務所に来るそういう依頼「犯罪者のその後を追う」と言う依頼に答えつつ、自分のいまだに癒えない苦しみや憎しみと向き合って行く修一の姿をとおして「贖罪とは」「赦すとは」など、考えさせられる物語でした。
赦す・・・とは、一体どう言うことだろう?
たとえば、裁判を受け量刑にあった刑を執行される。
5年間の実刑判決を受けるとすると、その5年が過ぎたら社会的には赦されているわけでしょうか?だけど、この本の中で被害者の肉親たちは、5年過ぎても犯人を赦す事ができない。それならば、犯人は赦されていないのか?誰が赦せば犯人は赦されるのか?社会が赦すとき?被害者遺族が赦すとき?ひょっとして神が許せば贖罪は終わるのか。(韓国映画の「シークレット・サンシャイン」はそんなところを深く問題提起していたので、本書を読みながら思い出した)そんなことをグルグルと考えながら読みました。
人の命を奪ってしまう、それは殺人事件だけじゃなく、事故でもあるし、殺意がなくて致死に至る場合もある、この本では「犯罪」に限られていたけれど、命を奪われて「赦せない」と思っている人たちは沢山いると思います。赦せないというか・・・家族を亡くした悲しみなんかは、どうやっても癒されないのじゃないかと思いますね。たとえば交通事故・・・まだ先のある人生を奪われた本人も、あるいはその事故で母を喪った子どもたちの悲しみは・・・いったい、赦される事か?
私はやはり、赦される事はないのではないか・・その罪は一生背負っていくべきじゃないか?と思っています。加害者の家族は罪を犯したわけじゃないと言うけれど、罪はなくても無関心でいてはいけないと思うし・・・。だけど、それは一体どう言うことなのだろうな、どう言う状態が逆に「赦されていない状態」なのだろうな・・・。
本書はそんな深いところに訴えてきた感じがしました。だからそういういみで坂上に共感できました。
修一は、本書の冒頭にあるように、肉親を犯罪で喪います。その苦しみ悲しみが読んでいて辛くて、かなりリアルに迫ってきました。
修一と坂上、そして修一の探偵事務所の所長である小暮、またキャバクラ嬢の冬美など、自分を取り巻く人たちとの関係のなかで、答えを見つけ出していく修一の姿に胸を打たれました。
事務所への依頼ごとの連作短編の形を取りながら、ひとつのテーマの答えを見つけていくという形ですが、とても心に残る一冊になりました。
ミステリーとは言えないのじゃないかと思いますが、一貫してこう言うテーマ・・・「少年犯罪と、その後」と言うものを扱い続ける著者の姿勢にも好感が持てます。また次作も期待しています。
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10:26 : [本・タイトル]あ行トラックバック(1)  コメント(1)
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2009/10/21(水) 16:17:19 | - │ | [編集]

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2009/12/01(火) 14:35:24 | じゅずじの旦那