【本】預けたお金を返してください!―/矢吹紀人

4871540855預けたお金を返してください!―ドキュメント・銀行の預貯金過誤払い責任を問う
ひまわり草の会(被害者の会)預貯金過誤払被害対策弁護団
あけび書房 2009-07

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ある日銀行でいつものように記帳しようとする。はて、通帳が見当たらない。
とりあえずキャッシュカードで残高を確認する。その金額をみると不思議な事に残額が「0」と表示される。何かの間違いかと思い窓口に尋ねる。
窓口の行員は言う。「昨日、全額お引き出しになられました」と・・・。
そんなはずはないと食い下がると、行員は「お客様相談室」に案内した。
そこで言われたのは「ご家族の誰かがお金に困って黙って引き出されたんじゃないですか。納得いかないのなら警察に行って下さい」・・・と言う信じがたい一言だった。
打ちのめされながら警察に行くと、「またあそこの銀行か!」と呆れた様子。
どうやらこの手の被害が多発しているもよう。それなのに、銀行員は易々とお金を渡してしまったのか。印鑑は貸し金庫に預けてあり、安全だと思っていたが・・・。
その後の銀行の態度も、警察の態度もとても被害者に親身になっているとは言いがたく、意外にも盗まれた通帳から引き落とされたお金は、銀行側に落ち度がなければ返金の義務がないそうだ。
そのようにうたわれている民法487条が存在する為に。
被害者は泣き寝入りするしかないのだろうか。

と言う、冒頭のショッキングなケースを読んで、背筋が凍る思いがしました。
そして読み進めるうちにもっと恐ろしくなりました。
二つの意味で恐ろしいです。
ひとつは、もちろん、知らないうちに通帳やカードを盗まれ貯金を引出されてしまうと言う犯罪被害に対する恐怖。ドアをピッキングで開ける、物色して易々と通帳を盗む。印鑑をスキャンなどして簡単に偽造する、カードは3分あればスキミングして、暗証番号も分かってしまう。これらは自分が知らないうちに行われる・・・。と言う恐怖。
もうひとつは、「被害者」でありながらも、誰からも守ってもらえず、あまつさえ銀行警察両機関に不誠実極まりない態度で傷つけられてしまうという恐怖。
被害者の「安全だと思って銀行に預けているのに・・・!」と言う悲痛な叫びが胸に痛いです。
たとえば、預金者が60歳とか65歳なのに、窓口で現金を引き出したのは30代の男。(防犯カメラで確認)なのに、窓口行員は本人確認もせず大金を渡している・・とか、自分の誕生日や住所を書き間違えても渡している場合もあるし、不審に思って深く追求しようとして、その「犯人」に逃げられても、通帳の持ち主に何の連絡もしないとか・・・杜撰なことが書かれていて、言葉もありません。
被害を訴えても
「本当に盗まれたの?落としたんじゃないの?」とか
「アルツハイマーってこともある」とか
「あんた、若い娘なのに1000万円も良く貯めたね」とか
・・・銀行さん、その態度はないでしょう?と、言いたくなるような話が満載で、空恐ろしいです。
ちなみに、「預貯金過誤払い問題」と言います。

そして、薬害エイズの訴訟に関わった弁護士たちを中心に、(じつはこの弁護士さんたちも被害にあっており、数少ない原告勝訴を勝ち取っている)2002年「預貯金被害110番」が立ち上げられました。
被害者が一縷の望みを託してここに接触して、(その数の多さに驚く。電話が鳴り止む事がなかったようです)被害者のつながりができ、その輪が広がり、集団訴訟へと発展していきます。
被害者の人たちは、「ちゃんと通帳やカードを管理していなかったから悪いんだ」と言う中傷を受けることもあったようですが、被害者が訴えなければ世の中は変わらないと、その一心で奮起しされたようです。
それまでの裁判の判例から、原告が勝訴するという事はとても稀有なことであり難しい事だったそうですが、弁護士さんたちの知恵と働きで、法律を変えることに成功するまで、被害者の人たちの戦いを本書の後半で書いてあり、ドラマよりもドラマティックで手に汗を握る展開。真実は小説よりも感動的です。それにしても、その甚大な苦労と言うかパワーと言うか・・・。頭が下がると同時に、ここまでしないと、保護されないなんて変だろう・・と言う疑問が。
たとえば、クレジットカード会社などは、カードの盗難の場合には全額補償するそうで、通帳よりもキャッシュカードに対してはもっと頑なに被害を認めない銀行って・・いったいなんだろう?と思ってしまいます。
憎むべきはたしかに、「泥棒」なんですけどね。
「預金者保護法」が法制化されたといっても、今後も被害は後をたたないだろうし、明日は我が身かもしれません。一読の価値ある一冊です。

ホームページ「ひまわり草の会」盗難・偽造キャッシュカード被害者の会
預けたお金を返してください!―ドキュメント・銀行の預貯金過誤払い責任を問う
/矢吹紀人 ひまわり草の会(被害者の会)預貯金過誤払被害対策弁護団

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