【本】いのちの初夜/北条民雄

いのちの初夜 (角川文庫)
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角川書店 1955-09
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以前、高山文彦氏の「火花」を読んだとき(感想はこちら)、是非とも「いのちの初夜」は読まねばと思いました。そのときネットの青空文庫で読めると教えていただき、表題だけはチラチラッと読んでいたのですが、WEBでは読みにくく熟読には至らず。今回ひょんなことから自分の家の本棚にあることを知り、手に取ったのです。(青空文庫はこちら

短編ばかりの薄い一冊の文庫本ですが、とても重量感があります。

収録作品は「いのちの初夜」のほか
「眼帯記」
「癩院受胎」
「癩院記録」
「続癩院記録」
「癩家族」
「望郷歌」
「吹雪の産声」
そして、巻末には川端康成のあとがきと、友人である光岡良二氏の「北條民雄の人と生活」という寄稿文、最後に年譜となっています。
「火花」の感想文にも書いたのだけど、ハンセン病というのは徹底的に差別迫害された病気で、そのことがまずこの病気になってしまう不幸のひとつだろうと思います。それがまず前面に繰るのではないかと思っていましたが、この本を読んで、この病気の過酷さに改めて驚かされました。
特に「癩院記録」と「続癩院記録」は、小説ではなく日々この病院の患者たちがどのように過ごすのかを、淡々と記録したものなのですが、病気の軽いものは全て、重い病状の患者たちの世話をすることになっているようです。それがまた、分刻みですべき事が決められており、包帯の取替えや、食事の世話、下の世話など、とても大変なこと。それをこなしながらも、体の変形、段々と緩慢に変わって行く症状・・・自分の行く末を末期患者の見た目からはっきりと予知するのです。自分もやがてはあのようになるそして「ボロ雑巾のように死んでいく」と、知らされるその絶望の深さはどんなものか。それは想像を超えていると思うのだけど、この本から著者が受けた衝撃や味わった絶望、あるいは諦観が伺えます。身体的不自由や痛みももちろんのこと。
だけど、作品にチラチラと見え隠れする希望の気持ち。生きようとする強い気持ちも確実にあり、両方に揺れる著者の気持ちが伝わり、涙なくしては読めません。本当に内面の描写がすばらしく、思い切り感情移入してしまいました。(と言う言い方はおこがましいと思いますが)
また巻末の、川端康成、光岡良二両人の後書きが泣かせます。特に光岡氏の寄稿文は、真の友人として、真に著者を理解していることが分かり、友情の深さなどに感動です。だれがどうして、こんなに他人を理解し思えるのだろう・・・それが、著者民雄の生涯でも、特筆すべき事の一つなのではないかと思いました。
「火花」同様、心にずっしりと重く残る素晴らしい一冊でした。


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10:52 : [本・タイトル]あ行トラックバック(0)  コメント(0)

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