三たびの海峡/帚木 蓬生

4101288046三たびの海峡 (新潮文庫)
帚木 蓬生
新潮社 1995-07

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久しぶりに再読した本。唐突にコレが読みたくなり、図書館で借りてきた。
図書館の本は、なんと「閉架」に置かれており、棚には陳列されてない。
こんな名作なのに、とても残念な処遇ですね。

近頃、トシのせいで変なところで涙もろくはなっているけど、本を読んでいて涙が出てくると言う事が、滅多になくなってしまった私ですが(「サイのクララ」↓は泣けましたぞ)、この本は再読に関わらず、冒頭から涙なしで読むことが出来ません。

主人公の河時根は、日本統治下の朝鮮で、苦しいながらも家族と共に生きていましたが、日本軍の強制連行により、日本で炭坑夫として強制労働させられます。
物語は、強制労働から辛くも生き残った主人公が、帰りついたふるさとで長い年月を過ごした後に、あることが耳に入り、みたび目となる海峡を渡り、日本にやってくるところからはじまります。
耳にはいったあることとは、自分たちが強制労働を強いられた炭坑の象徴とも言える「ボタ山」をなくし、合理的で近代的な施設を建ててしまおうという、政治家の動きがあるということ。
その政治家とは、自分たちを無理矢理日本に連れてきて、人間以下の扱いの中で労働を強いていた、かつての責任者だったのです。
風化させてはならない、その象徴のボタ山をなくしてはならない、と、主人公は日本に渡る決意をしました。そして、もう一つの理由は、主人公が日本女性との間にもうけた、息子に会うため。そしてもうひとつの理由とは・・・。再び日本に渡った主人公が、なしえた事とは・・・。

主人公が振り返る苦渋の思い出が、とても衝撃的です。この本を読んで、確かに原子爆弾を落とされたし、ものすごい空襲を受けた日本は戦争の被害国である。だけど、それと同時に、加害国でもあるんだと言うことをまざまざと突きつけられます。
原爆資料館、平和記念公園・・・それらも大事です。戦争は被害を受けたからこそ「二度と戦争をしてはいけない」と、痛切に思えるのかもしれないけれど、自分たちの国が、かつてファシズム国家であり、他国を蹂躙してきたと言うことも、同じくらいきちんと受け止めて次の世代に引き継がなければならないのでは・・・と、本書を読むと、そんなことを思えます。

それだけではなく、帚木さんらしく、そこかしこに、「思いやり」があるのが泣かせる一因。
連れ去られた主人公が、ふるさとを思う気持ち、両親を思う気持ち、また両親が主人公を思う気持ち、労働者同士の連帯感や、極限の中でもちゃんと友だちを思いやる気持ちが、とても帚木さんらしい優しい筆致で書かれていて、前半は読んでいる間中、泣けて泣けて仕方がなかった。

こう言うのを読んでしまうと、また、未読の帚木作品を是非とも読まねば・・・と思えてしまい、またしても読みたい本が増えますね。
とりあえず、「逃亡」あたりは是非とも読みたい。
そして、「逃亡」つながりで・・・。結構多いですね「逃亡モノ」。

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