【本】ビルマ・アヘン王国潜入記/高野 秀行

4794208499ビルマ・アヘン王国潜入記
高野 秀行
草思社 1998-10

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「魔のゴールデン・トライアングル」と呼ばれる土地、それは、インドシナのタイ、ラオス、そしてビルマの国境地帯に広がる、世界最大のアヘン産出地帯である。
ここで世界の60~70%のアヘン系麻薬が作られ、世に送り出されていると言われる。
その中でも特にビルマ (著者はこの国をあえて『ビルマ』と呼ぶ) ビルマの中でも「ワ州」と言う土地で沢山作られているらしい。理由は自然がアヘン栽培に適しているからだそうだ。
ワ州は、道らしき道もない秘境で、そしてワ人たちは首狩り族であり (さすがに今ではその風習はない) ビルマもイギリスも(植民地時代)統治できず、有史以来国家の管轄下にあったことがない。言葉はワ語と中国語しか通じない。
そんな「恐ろしげな」土地に、著者は乗り込み、そこでアヘン栽培の一部始終、ケシの種まきから栽培、収穫、アヘン製造までを4~5ヶ月かけて体験し、まとめ上げた渾身のルポルタージュなのだ。

・・・と、聞くといかにも不穏で恐ろしく、物々しい体験談になっているかのようなイメージだと思うのだけど、表紙の写真 (麻薬の元であるケシの花が美しく咲き乱れる中に、銃を構えた兵士たちののどかな笑顔) のように、実は著者が滞在した村は、ごくごく普通の農村であり、住民たちは普通の農民たちなのだ。そこではみんな、文明が行き届かず原始的な暮らしながらも、平和に穏やかに礼儀正しく毎日を送っている。
本書からは、著者の村民たちを見つめる視線の温かさが伝わり、日本人がワの村で暮らす苦労やギャップをおもしろおかしく伝えながらも、村人たちと親交を深め村人と同じ視点に立つ、人情のあるとても面白い「読み物」になっている。この著者の人間味に好感を抱かずにいられない。
「潜入」という言葉のイメージからすると、とても意外なことに、村人たちとの別れのシーンなどは泣けてきてしまった。
アヘンと言うものが、世界人類にとって一体なんなのか、軍との関わり国家との関わりなど、考えさせられる事も多く、他にも、この現代にこう言う暮らしをしている人々がいると言うこと、多数民族と少数民族の入り乱れる国家のありようなど、日本しか知らない自分には想像もつかないことで、色々と教えられる事が多かった。
そして、アヘンの古代からの歴史、ビルマと言う国の複雑さなどが、とても分かりやすく読みやすく魅力的な文体で書かれていて読み応えがあった。
この本が書かれてから10年。混沌としたビルマで、あのワの村人たちがどうしているだろうと、思いを馳せずにいられない。

★★★★★


4087461386アヘン王国潜入記 (集英社文庫)
高野 秀行
集英社 2007-03

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