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東京島/桐野 夏生

4104667021東京島
桐野 夏生
新潮社 2008-05

by G-Tools


戦争中に実際に起きた事件をモデルにしていると言うことで、その事件のあらましを読んだだけでも「これを桐野さんがどのように『料理』するのか」と期待が大きかったのだけど、時代設定などが「戦時下」から「現代」にと、変えてあるせいもあり、やけにあっさりした物語になってしまったと言う感想。
物語は、清子と隆の夫婦が世界一周クルージングの旅に出て遭難し、流れ着いた無人島にあとからまた漂流者の団体が流れ着き、そしてそこにまた別の一行が流れ着き・・・結局島は男が30人以上いたのに、女は清子ただ一人と言うアンバランスな状態になってしまうのです。助けは来ない、一切の文明もない無人島で、清子たちはどう生き抜いていくのか?と言う物語。
「漂流」を題材にした本と言うと真っ先に吉村昭「漂流」を思い出します。これはまさに著者が、無人島での漂流を体験したのかと思えるほどの圧倒的なリアリティがあって唸らされたのに対し、桐野版ではなんだか全然リアルな感じがしなかったのです。読む前は「漂流」ものとは思ってなくて、きっとたった一人の女をめぐって男たちが壮絶な争いをするんだろう・・などと、なんとなくだけど考えていたので意外だったし「漂流もの」として捉えたら、吉村さんの「漂流」には叶わず、物足りない気持ちが残ります。吉村版ほどの切実な緊迫感がまるでないからです。
しかし、リアリティはなくとも不思議と物語は強い説得力があり、ぐいぐいと読ませられてしまいました。この「説得力」こそ桐野さんの持ち味、そして相変わらずの吸引力に感心させられ、ラストの意外性も満足。いかんせん、物語の内容に比べてボリュームがないように感じたのだけど、私としてはもっと長い物語にして、もっと書き込んで欲しかったです。
桐野作品の自分的ベストは「メタボラ」「ダーク」です。

★★★
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