2009'01.08
![]() | オリンピックの身代金 奥田 英朗 角川グループパブリッシング 2008-11-28 by G-Tools |
昭和39年、東京でオリンピックが開催された。戦後の復興をわずか20年でとげ、華々しく蘇った東京を全国民が見守り、期待し、誇りに思っていた。だけど、その繁栄の影には使い捨てられたコマのような命が幾つもあった。また、東京が栄華を独占している一方で、地方の寒村では人々はまだまだ電気さえ充分に使えない貧しい暮らしを強いられている現状があった。
そんな中で主人公は「東京オリンピック」を「人質」に、「身代金」を奪おうとした。国家から。
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主人公の国男は東大の院生です。行く末は明るい未来が待っていたでしょう。なのに、なせわざわざ人生の坂を転げ落ちようとするのか、ちょっと不可解でした。国男が感じる疑問、国への不信感、オリンピックに対する反感など、それぞれはとても説得力があるんだけど、だからと言って「そこまで」するか?と思ってしまう。
でも、読み進めるうちに段々と説得されてしまうのです。国男がこうしなければならないと言うその気持ちが、こちらにも届いてくるのです。
主人公の国男、そして同級生でテレビ業界の須賀忠、警察、それぞれの視点から、ほんの数日ずらして、交互に事件が語られていく、その手法が面白く釣り込まれていきました。そのズレが段々と狭まり、やがては一つに・・・。
国男の二面性にはこちらも、好感度を上げたり下げたりさせられながら読んだけど、途中で一緒に行動するようになるスリの村田が大変、いい味でした。この二人の間にある「相手を思う」気持ちがとても好きです。あわやオリンピック妨害がなしうるのか?・・とさえ思わせられる緊迫感のなかで、いつのまにか「成功するといい」とさえ思い、国男たちの行動を応援していました。ふたりが警察を翻弄し、煙に巻く様子には爽快感さえ感じました。
最初のほうのくどいまでの時代背景、風俗の描写は正直辟易するけれど(今現在描かれている小説にここまで詳しく流行や風俗は書かれないでしょう)東京オリンピックに対する日本人の思いの深さや、日本中が熱狂したイメージが伝わり、戦争を知らない私は先人に頭が下がる気持ちがしました。
表向きだけではなく、その裏で何があったか、誰が犠牲になったのか、国家の繁栄は、影に大きな犠牲がつきものなのでしょうか。気付かなかったそんな部分に気付かされ、ミステリーとしてだけじゃなく面白い作品でした。
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奥田さんの作品は「邪魔」「最悪」から入り好きになったファンには待望のサスペンス。私もそうです。しばらくは逆のイメージの伊良部シリーズは食わず嫌い。でも読んでみたら面白く、「マドンナ」「ガール」も大好きな作品に。
しかし、やっぱりこう言うサスペンスタッチの作品ももっと書いてほしい。
★★★★★





一言でいえば、奥田流「テロリスト」物語と思える作品は、長いと思ったけど、一度読み始めたら、止まらなかったです。次はどうなる、どうなるみたいな。そのせいか、ストーリーを負うのが精いっぱいで、キャラに感情移入できなかったけど、熱い思いは伝わってきました。繁栄に裏には犠牲がある、底辺で生きるものにスポットをあてているせいか、ダークな話なのに、奥田さんの人柄のせいか、温かさを感じました。
2009/02/08(日) 21:51:39 | ラム │ URL | [編集]