あの戦争から遠く離れて―私につながる歴史をたどる旅/城戸久枝

4795847428あの戦争から遠く離れて―私につながる歴史をたどる旅
城戸久枝
情報センター出版局 2007-08-20

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これは、中国残留孤児である父親の生涯を丹念に調べ上げた、その実の娘さんの手による渾身のノンフィクションです。城戸久枝さん、著者のお父さんは城戸幹さん、その父親(著者の祖父)が満州軍の軍人であったことから、満州で終戦を迎えます。しかし、中国残留孤児のご多聞に漏れず、様々な悪条件が重なり中国に取り残されてしまうのです。彼はしかし、中国にて情厚い中国人女性に引き取られ、とても愛情深く育てられます。
やがて来る文化大革命の時代に、日本人であることを表明した幹氏はとても中国では生き難く、身の危険さえ感じるように・・・。大学に合格するだけの実力があっても、日本人であると言うことがマイナス材料となり不合格になったりするのはマシなほうで(と言うのは語弊がありますが)、その後の生活の全てが幹氏が中国で生きることを否定しているのです。そこで、幹氏は日本に帰ることを考えます。とても中国で生きる道はないのです。
だからと言って国交回復前の中国から日本に帰ることはとても困難なことで、ましてや世の中は文革の嵐の最中で、日本人はとても危険な目に合っていて、そんな中で幹氏がとても苦労した末にやっと日本に帰ることになるくだりは、とてもハラハラさせられるし涙なくしては読めません。特に中国の育てのお母さんとの別れ・・。
それら一連の経緯がとても丁寧に描かれていて、リアルに再現されていて読み応えがあります。
これを調べたのが、娘さんの著者なのですが、第二部はその父親の物語を書くことになった経緯やその取材の内容が描かれていて、いわば第一部のメイキングと言えましょう。
父親が中国残留孤児であるということに思いを馳せ、その人生をなぞろうとする娘の気持ちとは、親子のつながりの深さを思わずにいられない感動作品でした。
特にやはり、中国で幹氏を育てたお母さんの無私の愛情には頭が下がります。自分だったらそんな風に出来るのか??と思ってしまいます。育てたと思ったら日本に帰ってしまう息子・・。泣きながらも幸福を念じて、送り出す母。
こう言う親子の映像はかつてテレビでよく見られましたが、帰って来た残留孤児のひとにはこんな人知れぬご苦労があったのかなと思いました。タイトルがまたとても良いとおもいます。


この作品は、第39回大宅壮一ノンフィクション賞を山田和さん「知られざる魯山人」(文藝春秋刊)と同時に受賞しました。
選に漏れてしまったノミネート作品は城島充さんの「ピンポンさんー萩村伊智朗伝」(講談社刊)、鈴木敦秋の「明香ちゃんの心臓ー<検証>東京女子医大病院事件」(講談社刊)の2作品ですが、私は「ピンポンさん」と「明香ちゃんの心臓」の2作品を読み、とても感動しました。漏れたとは言え、名作だと思うことを追記しておきたいです。
22:15 : [本・タイトル]あ行トラックバック(0)  コメント(0)

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