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世界屠畜紀行/内澤旬子

世界屠畜紀行
世界屠畜紀行内澤 旬子

解放出版社 2007-01
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ドキュメント 屠場 (岩波新書) 食べ物としての動物たち―牛、豚、鶏たちが美味しい食材になるまで (ブルーバックス) 屠場文化―語られなかった世界 (ミニミニ・ブックス) 被差別の食卓 (新潮新書) 私の牛がハンバーガーになるまで―牛肉と食文化をめぐる、ある真実の物語


「屠畜」とは、生きた動物を殺して食肉に加工する過程全般を指す言葉。
著者はモンゴルで初めて動物を殺して肉にすると言う行為を目の当たりにし、猛烈に興味を持ち、動物が肉になるまでの過程を克明に知りたいと思いはじめる。日本では特に、「屠殺」と言う仕事は差別と関連付けて考えられがちだけどそれはなぜか、と言う疑問と共に海外の屠畜現場を取材して歩きます。韓国、バリ島、エジプト、イラン、チェコ、モンゴル、インド、アメリカ・・・。もちろん日本でも東京の芝浦屠場や沖縄、本当にパワフルに各地を、「屠畜」現場の観察取材のために渡り歩いていると言う印象です。ひたすら「屠畜の面白さ」を伝えようとするガッツ!その姿勢とパワーにはひたすら頭が下がります。すごい。。
彼女は屠畜現場を見て、目を輝かせてしまうのです。あまつさえ「やりたい!」と思う。そういうタイプの人間は、おそらく20人に一人ぐらいしかいないのではないかと言われてしまいます。そんなユニークな彼女の渾身のルポルタージュが本書なのです。食と文化、宗教からも屠畜を見直してみる幅の広さも伺え、とっても興味深い内容です。屠畜の過程を見たままこと細かくレポートしてあり、イラストも手伝ってものすごく臨場感があるのも本書の魅力です。
屠畜が身近な地域での取材を見ていると、人々の屠畜への慣れや、著者の屠畜に触れる喜びやパワーが伝わってきて、なんだか自分にもその屠畜現場が平気で見られそうな気になって来るから不思議。子供たちにも是非とも見せるべき、見せて「君たちが普段食べているお肉は、こんな風に生きていた動物の『命』をいただいているんだよ。だからきちんと『いただきます』と言って、残さずに食べなければいけないよ」と教育すべきだと思えてきます。
たしかに、それは大事なこと。普段私たちは肉を見ても、『元は動物だったのだ、命いただきます、南無阿弥陀仏・・』などと思うこともなく、平然と(嬉々として)食べてしまいます。そんな自分の「罪深さ」にハッと気付かされるという本でした。
ただ、冷静に考えてみると、やっぱり自分に屠畜の現場を著者のような心理状態で眺める事ができるかどうかは、不明です。多分、動物を「殺す」のを目の前で見せられたら「怖い」と思ってしまうんじゃないでしょうか。内澤さんはそれを「何故怖いのか、残酷で可哀想だと思うのか」と疑問を呈していますが、本能的なものかな。自分も食べられるために殺されるのがイヤだから、動物のこともそう思うのかも。ともかく、それは「なぜ?」と聞かれても答えようがないぐらい、当然の気持ちのような気がします。
その上で意識しなければならないのは、人は自分が生きるために「他の命」を心ならずも奪ってしまっていると言う事、そして、自分には(極限状態にでもならない限りは)出来ないと思う「動物を殺して食肉に加工する」と言う過程を、誰かに、請け負ってもらってると言うこと。それを思うとき、「食」に限らず人間は生きていくうえで、他人の手を煩わせずには生きていかれない事にも気付くはず。「人に迷惑をかけるような人間にだけはなるな」と、よく聞きますが、人は生きているだけで人に何らかのお世話になっているのですよね。

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23:06 : [本・タイトル]さ行トラックバック(0)  コメント(2)
こういう本が、これほどおもしろいとは、露ほども想像しませんでしたよね。これに関連して、「豚のPちゃんと32人の小学生」も読んでみたいと思っています。

2008/09/18(木) 09:44:04 | くまま │ URL | [編集]

はい、面白かったです~~!上手いです、著者。読ませますね。そして、何よりもパワーに引っ張られる内容でしたね。
「豚のPちゃん」もね、興味ありますよ!
また読んだら語らいましょう~♪

2008/09/18(木) 16:00:24 | short │ URL | [編集]

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