歳月の梯子/アン・タイラー

4163161805歳月の梯子
アン・タイラー
文芸春秋 1996-04

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お初の作家だけど、女性心理をえぐる事に長けていると言う評判を聞いて読んでみました。
とてもおもしろかった。グイグイと読まされました!

子ども達も大きくなり、自分が家庭の中でそれほど重要ではないと思えて、ちょっと落ち込み気味の主婦(つまり「空の巣症候群」)が、唐突に家出をしてしまう話です。
最後にはどうせ収まるところに収まるんでしょ・・・と、斜に構えて読んでたんですが、これが面白くって一気に読んでしまいました。
「ふとした拍子」の家出に、自分自身も戸惑いながら、新しい土地で新しい自分になることを、リアルに具体的に「実現」していく主人公。あれよあれよと生活の地盤を固めていく主人公の姿が、とても眩しいのです。生き生きとした主人公に、こちらも「翼」をもらったような気分で、とても爽快になれました。登場人物たちもみな好感が持て、彼らとの関わりの中で「変化」してゆく主人公の姿には、ワクワクさせられたし、スリリングですらありました。
小さな心理描写がリアルで丁寧、だから自分自身に置き換えて読みやすい展開で、「わかるわかる」と共感を呼ぶ箇所がいたるところにあります。

家出、なんて、主婦には大冒険。
しかし、知らない街で、心機一転、まったくのゼロからやり直したい。今まで持っていたものを全て捨てて、家族も知人もいないところで全然違う生活を始めたい、って、誰にでもこう言う気持ちはあると思うな〜わたしは。
ただ色々考えると、たいていの人が思うだけで終わるのだと思う。主人公ディーリアにはその「いろいろ」を想像することができなかったのか、それができないくらいいっぱいいっぱいになっていたのか。よーく考えるとちょっと鈍感なような気もしたけど、読んでる最中はそんなことは思わない。ディーリアには「一歩」踏み出す「勇気」があったのだと、思いました。
できるのなら、こんな風にしてみたい・・・一度しかない人生だもん、一度くらいこんな事があってもいいのじゃない?と思いながらしばし、爽快感に浸りました。
じっさいにそれをやったときには、寂しくもなるだろうし、恋しくもなるだろうという、そういう気持ちも含めて、すべてが面白かったです。

しかし、子どもって言うのは、母親は自分を無条件で愛してくれて当たり前だと思ってるもんね。
お弁当箱を出さなかったり、洋服を脱ぎ散らかしたり、漫画やビデオを出しっぱなしにしては怒られても、すぐにムッとして反抗的な口答えをして、お風呂だとかゴハンだとか言っても全然聞いてくれなかったりしておきながら、でも、だからそれが母親の家出の一因になるって言われても、絶対に理解しないと思う。こっちはそれで、マジで家出したいぐらいキレそうになることがあるんだけどね。
そんな風に絶対的に「安心」(⇒愛情を疑わない)している子どもがいると思うと、家出なんてとんでもないですわね。

以下ネタバレ↓

わたしは、あっちの街で関わった人たちを「タイムトリップ」のように、「なかったこと」にするのか?って言う所がちょっと疑問。もちろん、話の結末としてはこれで良いと思う、でも、たとえばディーリアがハウスキーピングをしていた家のノア坊やとか・・。そのおじいちゃんのナットとか。ディーリアをほんとに頼りにしてしまっている人たちを、やっぱりサムの言うように「捨てる」ことになるんだろうか?そうだとすれば、やっぱり深く関わってしまったディーリアの「罪」のようなものを感じるのだけど。

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17:22 : [本・タイトル]さ行トラックバック(0)  コメント(0)

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