2007'09.16
![]() | 悪人 吉田 修一 朝日新聞社出版局 2007-04 by G-Tools |
面白かった!一気読みした。
保険外交員をしていた石橋佳乃が、土木作業員の男に殺され死体遺棄されてしまうという事件が起きる。殺された佳乃の両親、同僚、上司、逮捕された男の祖母、叔父、友人、以前に親しくしていたヘルス嬢、そして佳乃が憧れを抱いていた大学生やその友人の目を通して、この事件に関わった人々を描く群像劇。
登場するすべての人たちの人物描写が巧い!と思った。どこか悪意があったり、どこか善人であったり、まず誰もがその両面を持っているのだと、凄く説得力のあるキャラクターたちが生き生きと描かれていて、それだけで話に一気に入っていった。自分がこの物語の中に登場するとしたら、どんな風に描かれるだろうかと、ふと考えたりもした。
佳乃が殺された夜、本当はいったい彼女が誰に会いに行ったのか、誰に会ったのか、なぜ殺されてしまったのか、読者はそれを追々分かっていくのですが、単なる「殺人事件」じゃなく、そこまでに至る経過と、取り巻く人々のドラマが読み応えがあるんです。
殺されてしまう佳乃。いやなヤツなんですよ。見栄っ張りでうそつきで。出会い系サイトで出会った男と援助交際をしたりして。だけど、だからと言って殺されてしかるべきかと言うと決してそんなことはない。親から見ればいつまで経ってもかわいい娘。でも、徐々に明らかになる娘の生活に驚かされて。かわいそうな人たち。娘を殺された上に、まだマスコミや世間に心ない仕打ちを受ける。どう言う育て方をしたんだと言う声も。みんな勝手な事ばっかり言うね。でも、自分もその「みんな」なんだな。テレビでコメンテーターたちのコメントを聞くときは、心して「選別」しようと思った。
そして、祖父母を大事にするいい青年なんだけど、無骨で寡黙で上手く他人とコミュニケーションの取れない祐一、華やかで友達は多いけど軽薄で鼻持ちならないボンボンの増尾、一体どっちが「悪人」なのかと聞かれたら誰もが思うことは同じでしょう。祐一よりも増尾に憎悪を抱いてしまう佳乃の父親の気持ちが、すごくよくわかった。(こいつにはどこかで天罰が下るといいと思ってしまう)育てる側の気持ちが、石橋の両親、祐一の祖母どちらの気持ちもじわじわと迫ってきて感動した。でも、どっちも最後は顔を上げてくれて、その彼らの姿に一番感動!「バスの運転手、動くサインポール」これが二大感動シーン。ありがとう、吉田さん、このシーンを入れてくれて。
それまでは、ほんとに何を考えているのかわからない部分のあった祐一(母親でさえ真意が理解できない)の、本当の気持ちが見えてくるラストには胸打たれます。ちょっとその前の展開が安っぽいメロドラマみたいで興ざめした部分があった(逮捕直前の光代の号泣)んだけど、それがちょっと残念だったかな。
切ないラストにしばし余韻に浸る。
オススメします!





著者が並々ならぬ覚悟でこの作品に取り組み、できる限りの力を注いだという熱意が伝わってくるような本でした。
2007/11/17(土) 02:51:42 | タウム │ URL | [編集]