超「暴力」的な父親/梁 石日

4584121524超「暴力」的な父親 (ベスト新書 152)
梁 石日
ベストセラーズ 2007-07-19

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以前、梁石日さんの「血と骨」を読んだ時に、その主人公の破天荒と言うか型破りと言うか破れかぶれと言うか、なんとももの凄い人となりに驚いたのです。「こんな人間が主人公ってアリ?」みたいな。
でも、その「血と骨」に登場した主人公は、著者の父親がモデルと聞いて二度ビックリ。実在の人物だったとは!あまつさえ、著者の父親だったとは!
で、その父親について著者が語ったのがこの本書『超「暴力」的な父親』です。最初から釣り込まれるように一気読みしてしまいました。

まるで吼えるように、猛るように人生を荒々しく生きた、梁さんの父上。DVはあたりまえ、母親に暴力を振るう家具を壊す(時には家も)しかも、母親が一生懸命働いて得たお金も自分のために奪い去る、それが当然の如く。自分がいくら稼いでも一切家族のためには使わない、びた一文でさえ。妾は作るし、その生活費を妻に要求したり、息子(梁石日さんのこと)にたいして、妾を「お母さんと呼べ」と言ったり。
妻が瀕死の病に倒れてもやっぱり、お金を出さなかったり。
と、驚きの連続なのです。
ただ、儒教の国の生まれのこの父上は、一家の嫡子である梁さんには暴力を振るわなかったらしい。しかし、身体的暴力は振るわねど、たとえば息子の目前で自分の肉体を、無残に傷つけて見せたりという一風変わった「仕置き」は何度もしている。
圧倒的な存在感を示す父親も、老いには勝てなかったようで、というか、多分日ごろの生活の付けが回ってきたのか、病に倒れます。
そしてついには著者と決定的な別れのシーンを迎えますが、それがなんとも哀愁に満ちているのです。
また、著者の梁さんがこの父上を反面教師にして「良い父親」になったのかと言うと決してそうではないらしく、その辺りが赤裸々に描かれているのも興味深いです。
どんな父親像も、このひとのまえにはかすんでしまうと思われる、梁俊平氏の強烈なすがた。事実は小説よりも烈しい!!

「血と骨」の感想は↓に。

4344401050血と骨〈上〉 (幻冬舎文庫)
梁 石日
幻冬舎 2001-04

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4344401069血と骨〈下〉 (幻冬舎文庫)
梁 石日
幻冬舎 2001-04

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昭和のはじめから戦後まで、斉州島からの出稼ぎ労働者の「金俊平」の、一生を通して、踏みつけられても立ち上がり、たくましく命の限り生きる在日朝鮮の人々を描く。

感想 びっくりするほど、ひどい男です。この主人公の「金俊平」。
ここまですさまじい悪の権化のような男が主人公の小説は読んだことがありません。

ともかく、酒と女と博打に明け暮れる毎日。
少しでも気に入らないことがあると、暴れて家一軒でも破壊してしまう勢いだし、相手に対しても殺しかねない勢い。耳に齧り付いて、引きちぎり、その耳を食べてしまう・・なんて、おっそろしいことも。
傷ついて立ち直れない時も、自らの糞尿にまみれて身動きすらしない、という型破り。
で、その後始末をするのがたった一人の友達「高信義」。
こんな男のためにどうしてそこまで・・・と言うくらい、人がいいのだ。
この物語の主人公は「金俊平」と言うよりは、「金の持つ毒気」と「それに当てられて振り回された人たち」と言えるのではないか。
かわいそうなのはこの男と結婚した「英姫」だ。
何の因果で・・繰り返される暴力と理不尽。しょっちゅう暴れては家財道具を壊すし、よその土地で女と暮らしたりするのに、たまに帰ってきてはそのためのお金の無心。
妻は暴力を振るわれるよりはと、何も言わず女と暮らすためのお金を差し出す。そのお金も身を粉にして働いて得たなけなしの財産だ。
もっとかわいそうなのはこどもたち。
この男の唯一誉められる点は、自分の子供を犯さなかったことぐらいではないか?
それぐらい、ひどい素行の持ち主なのだ。
いつかはこの男も改心するのだろうと期待しながら読むんだけど・・・。

でも、この本の中に描かれている金を取り巻く人たちの、強さたくましさに、引き込まれた。
当時の朝鮮からの労働者たちの生活も、すごく生々しく再現してある。
日本の中でどんな辛酸をなめたとか、戦争にたいする思いとか。
途中であまりの金のひどさに投げ出したくなった本書、2段構えで500ページ以上、結局止められなくなり後半は一気読みしてしまった。

*「闇の中の子供」の衝撃が、この作者への興味を沸きたて、次の本を借りたくなったので選んだのがこれでした。
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