茶々と秀吉/秋山香乃

4286016382茶々と秀吉
秋山 香乃
文芸社 2006-06

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歴史上の人物は後年の研究や考察によって、良くも悪くもなりうるものです。今生きている人間だって、見る角度を変えれば違う面が見えるのだから、何年も何十年も、写真すらない時代に死んでしまっている人物に関してはなおの事。
秀吉は、せっかく無一物からやがては天下人へののし上がりを実現させたサクセスストーリーの主人公であるにもかかわらず、無謀な朝鮮出兵を試み失敗し、失意のうちに死んでしまい果てはお家断絶とまでなったおばかな武将?
そして、茶々はその秀吉にはべり、正妻ねねを苦しめながら秀吉の甘い汁を吸いわがままの限りを尽くした悪女?

このシリーズはそんな偏見を払拭する物語です。

前作「茶々と信長」の続編である本書、柴田勝家と於市の方の自害により、幼い妹たちと一緒に秀吉に引き取られた所から、今回の物語はスタート。
そして、周知の如く秀吉の側室となり淀城を与えられ、淀のかたと呼ばれ一世を風靡する、秀吉が死ぬまでの茶々の半生を描いてあります。
逆に言えば、ここでは茶々との秀吉の半生を描いてあるということ。
二人の心の交流がすごく丁寧に描かれていて読ませられます。
茶々が秀吉に心を開き、ふたりが心を通わせあうまでになるくだりの心理描写が丁寧で説得力があるので、ちょっとときめいてしまうほどです。
「抱くときは心も一緒に抱く(無理には抱かない)」という秀吉のせりふに、くらっとしてしまいました(笑)。
この「茶々と秀吉」では、茶々の視点から見た秀吉の心理描写によってなぜ狂気ともいえる朝鮮出兵までに至ったのか、すごく説得力に満ちた解釈がされていて、深く納得してしまいました。
茶々は聡明で洞察力もあり、人の心を思いやる気持ち、慈しみの心、そして強さ、と何もかも兼ね備えた女性で、その性質的な美点や芯の強さが余す所なく描かれ、茶々に好感を持たないではいられません。
そして、そんな茶々が思ったひと秀吉、彼にも好感を持ちます。
元来人間臭く機転が利き賢く、そして明るく豪放磊落と言う感じの秀吉は人すきがする人物だと思うけど、ひときわ魅力的に描かれているのではないでしょうか。
彼の人生が終わるとき、しみじみと涙が出ます。

露とをち露と消へにしわが身かな
  なにわのことも夢のまた夢

次は「茶々と家康」ですか。これも期待大!待たれます!


4835590767茶々と信長
秋山 香乃
文芸社 2005-02

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00:02 : [本・タイトル]た行トラックバック(0)  コメント(4)
淀殿と秀吉の関係は、なんか、強制的っていうか仕方ない関係のように思っていたけれど、二人の間に通い合うものがあったというのは、ちょっとうれしいです。
歴史上の人物像は、後世の判断によって決定づけられてしまうから、なるべく、いい方に解釈してあげたいって気持ちもありますから。

2007/01/08(月) 17:00:50 | くまま │ URL | [編集]

くまま♪
でしょ?
わたしも、くままとおなじように感じていましたが、この本はそういう感じで、この二人を描いていないです。
二人の間にはきっちりと、愛情と尊敬と思いやりが通じているのです。
そんな風に描いてある本を読んだ事がなかったので新鮮でしたよ。
でも、説得力もあったと思う。
いい風に解釈してあげたほうがいいですよねぇ?
本当にそういう意味では読後感のよい本でした。
秀吉の死が寂しく感じるほど。
人生って、露のようにはかない物なんですね。
千利休の存在も、出番はないけど光っていました。
よかったらお手にとって見てください。読みやすいですよ。

2007/01/08(月) 22:52:46 | short │ URL | [編集]

感情移入できるよね。
茶々の思いは、浅井家復興のため、父を供養するため、腹違いの弟を探すため。↑にも書いてあるけど、ふたりには尊敬と愛情はあったね。歴史小雪は善と悪が分かれやすいけど、秋山さんの話はそれがないからいいよね。悪女のイメージを覆し、聡明な茶々を描いた秋山さん、第3弾が楽しみです。

2007/01/23(火) 22:16:44 | ラム │ URL | [編集]

らむりん、これは「信長編」よりもずっと感動したよ。
「信長」も良かったんだけど、信長よりもやはり秀吉のほうが魅力的に描かれていたなぁ。
茶々っていつも稀代の悪女って捕らえ方をされているけど、この本を読むと、この姿が本当と思えるから不思議よね。
やはり長女の立場として、性格がこうなっていったと言う分析が入ってるから説得力があるのでは?
戦国時代は面白いよね。
第3弾もすっごく楽しみだわ~~。
秋山さんってBL出身なんだとか?
マンガもそうだけどBL出身って侮れないよねー。

2007/01/23(火) 23:35:23 | short │ URL | [編集]

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