なぜ家族は殺し合ったのか/佐木隆三

なぜ家族は殺し合ったのか
なぜ家族は殺し合ったのか佐木 隆三

青春出版社 2005-06-01
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消された一家―北九州・連続監禁殺人事件 人はいつから「殺人者」になるのか 殺戮者は二度わらう―放たれし業、跳梁跋扈の9事件 殺人者はそこにいる―逃げ切れない狂気、非情の13事件 その時、殺しの手が動く―引き寄せた災、必然の9事件


ものすごく怖い本。
こんなのを読んだらユーレイも物の怪も吸血鬼も怖くないです。
人間の恐ろしさ、残酷さおぞましさ、そしておろかさと弱さ。余すところなく描かれていた。ほんとに怖かった…。



この事件は「新潟少女監禁事件」が発覚した直後に発覚した「小倉少女監禁事件」です。ニュースでも大々的に報道されたのでまだ記憶に新しいですよね。少女がおじいさんのところに助けを求めて逃げ出して、少女の父親は犯人との同居の末に殺されたと言った事件です。あの時はこの事件がここまで凄惨な事件だったとは知らなかった。本書でも報道の順番を追って、書かれているので最初のうちは何が何やらわからないという状態です。が、徐々に事件の全貌が明らかになるに連れ、読むだけでも胸苦しさを覚えるほどにおぞましく、陰惨で凄惨な事件だと言うことが分かってくる。それはもう、こんなおそろしい犯行が今までに会ったのかと思うほど。例えば大昔だけど「津山30人殺し」などと言う戦後最大の虐殺事件もある。でも、残酷さで言うと断然今回の事件のほうが残酷だと思うのだ。

この事件が残酷なのは、殺されたのは逃げ出した少女の父親だけではなく、犯人の家族だったと言うから驚くではないか。松永太の内縁の妻の緒方淳子。その緒方の実家の、父と母、妹夫婦、その子ども二人…自分の肉親たちを6人、「一家殲滅」に追いやっていると言うこと。また、6人の中でも家族でありながら松永に操られるままに、暴力をふるったり、その果てに直接手をかけて殺したりもしたらしいのだ。

そして殺した上に、死体をバラバラにして処理していること。
特に、発見された少女はその殺人や死体処理を強要させられており、その供述が本文中に裁判のときの証言と言う形で明らかにされてるのだけど、非常におそろしいです。人間をバラバラにする…、小説ではいくらでも読んできたし、慣れてるかもしれない。だけど、この本での「それ」は、今まで読んできた小説とは格段に違うおそろしさがあった。手が震えるようだった。
脳は頭の天辺を切るのではなく、下あごから…などと言う供述があり、生々しい恐怖に駆られます。

それにしたって、何故そんなことになったのか、それは本書をぜひとも読んでいただきたいのだけど、人間の愚かしさ…たきつけられれば家族でありながらも、疑っては暴力をふるったり果ては殺したり…そこまで落ちてしまう弱い生き物なのだと言うことが分かる。またそれをさせる松永の残忍さには声も出ないぐらいだ。

著者は、この犯人像がオウムの麻原彰晃と似ていることに注目。麻原が部下や信者をマインドコントロールで支配下においたように、松永もまた「虐待」「電気ショック」という暴力による恐怖感を植え付けることで、被害者たちをマインドコントロールしたと言うこと。麻原は殺人は「自分はやってないし、指図もしていない。部下が勝手にやった」と言ったが、この事件の犯人松永太も「家族同士で勝手に殺しあった」と言ったことも似ている点だ。
一番怖いのは、松永太が「実行犯ではない」…ということか。

いかに凄惨な事件でもそれを直視して反面教師として学習するしかないという著者の思いが、事件の凄まじさの前では霞んでしまいそうである。
わたしは事件のルポは好きで割と読むが、ここまで怖いと思ったのは初めてだったように思う。
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