サウス・バウンド/奥田英朗

4048736116サウス・バウンド
奥田 英朗
角川書店 2005-06-30

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伊良部シリーズで奥田さんのほかの作品も読みたくなり、大勢の人の感想を読ませていただいたり、オススメしていただいたりして、この作品を読んでみた。
気持ちの良い小説だった。スカッとするような。
しかし、ちょっと前はあったのだ。「学生運動」なんかをを取り上げた小説が。でも最近はとんと見ない。ので、近年にはすごく珍しい類の小説だと思った。ややもすれば敬遠しがちな内容になってしまいそうだけど、そこが奥田さんの上手いところ。敬遠どころか、かえって真剣にそう言うことを考えさせられたから。


奥田さんの魅力は登場人物(主人公)の内面描写が見事なこと。
第一部は、二郎が不良に絡まれたり、元過激派の父親のもとで起きる騒動に巻き込まれたりする様子を、小学生の日常に絡めながら描いてあるのだけど、主人公が小学6年生なので、修学旅行を楽しみにしていたり、女体に興味があったりという年齢相当の感情の起伏などがとってもリアルに描かれている。
ドラマチックな展開になって緊迫した場面にも「ウサギ小屋の掃除」なんかをしなくちゃならなかったりっていうのが妙にリアルで笑えたり。
不良との対決、そのなかで友達との関係、体制に反対する父親の姿、お嬢だった母親、いろんなことが一気に押し寄せて、それでも自分をしっかりと持ち、ちゃんと成長してゆく二郎が愛しい。
ともだちとの関係もすごく清々しく、男の子っていいなと思う。
友達との別れの場面は泣けた!!

このまま終っても良かったと思うけど、第2部は第2部でまた魅力あり。
自然の中でのサバイバル同然の暮らしをしていくうちに、勃発するリゾート建設との抗争。その中で父親への見方が変わり見直していく様子、読者も一緒に味わうことになる。
どこに行っても騒ぎの中心の父親一郎。
だけど、素朴な西表の人たちとの暮らしの中で、何が大事なのかを考えれば父親のことが段々と理解できるようになっていくのだ。

雄大な自然の中で、のびのびと暮らす二郎たちの姿にエールを送りたくなる、そしてこの島しかなかったら戦争は起きないという言葉に深い感銘を受けた。

アカハチって知らなかったんですが、今度読んでみたいなと思う。南にアカハチ、北にツキノエって感じだったのだろうか。俄然興味が湧きました。

ラムちゃんからお借りしました。ありがとう♪
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00:28 : [本・タイトル]さ行トラックバック(0)  コメント(5)
shortさんこんばんは~♪
またまたうれしい発見★この作品私もつい最近読んだばかりなんですよ♪

第一部も良かったですが第二部はさらに魅力がupして・・・沖縄の美しい風景が目の前に現れるような錯覚すら覚えました。奥田さんの表現力のすごさに脱帽です(*^_^*)

>そしてこの島しかなかったら戦争は起きないという言葉に深い感銘を受けた。

私もshortさんに同感です。
私利私欲を持たず自然のままで暮らすことが出来たらなんて素晴らしいのだろうとしみじみ思いました。
最初は??と思いながら読み進んでいくうちに次が気になり一気に読んでしまいました。いい本でしたね~♪
TBしますね~♪

2006/08/30(水) 19:27:43 | caho │ URL | [編集]

奥田 英朗さん、大好きなんですよー。
中でも「サウスバウンド」大好き♪
重いテーマなのに、説教くさくないところがいい。
そして内面描写は秀逸ですよね。
「マドンナ」でも感じたのですが、どんな主人公にでも感情移入しやすいのは心理描写が上手いからですね。
「空中ブランコ」と「イン・ザ・プール」は、私も2冊続けて読んだのですが、短編ということもあって、同じパターンの展開に飽きてしまいました。
この2冊なら、私も「女流作家」と表題作が好きです。

2006/08/30(水) 21:50:18 | ブラッド │ URL | [編集]

>cahoさん、いらっしゃーい♪
サウスバウンド、よかったですよね!
わたしは第一部の少年の日常を瑞々しく描ききった部分に感動を覚えました。
もちろん沖縄の描写も良かったけど、トイレは水洗が良いです(笑)
でも、今時分たちの暮らしている社会の構造に、今まであんまり深い疑問を感じていなかったなぁと言うことをつくづく思いましたよね。
なんか、さすが、奥田さんって感じ。
最近、cahoさんとは運命を感じるほど作品がかぶってますよね!!(笑)
またお互い面白い作品に出会いたいですね♪


>ブラッドさん♪
ブラッドさんのサウスバウンドの感想も、大いにわたしの食指を動かした原因になってもらってますよん。
大事なことを伝えてるのに説教臭くないですよね。ちょっと灰谷健次郎の「太陽の子」なんかも思い出したんだけど…。爽快感があって重くないね、こっちは。
伊良部先生は、たしかに続けて読むと飽きるかも。わたしは大丈夫だったけど、その気持ちは良く分かります。短編集だしね。「女流作家」はいい話でした。どうして女性心理をこうも上手くかけるのか。当分ついてゆきます。奥田センセー!

2006/08/31(木) 13:46:42 | short │ URL | [編集]

楽しんで読んでくれたみたいで嬉しいです。
奥田さんの作品が好きなのは、その人の立場になって描いているから。一風変わった父親を持つ少年の心理描写が上手く描いていた作品でした。
間違ったことを間違っているとは言えない、正しいと思うことは正々堂々といえない世の中で、はっきりと言えるお父さんこそ貴重な存在の人だなあと思いました。お父さんの言葉についうんうんとうなづいてしまう私がいました。でも、身内や周りにいたらひいてしまうかも(爆~)

2006/09/07(木) 23:12:11 | ラム │ URL | [編集]

らむちゃーん、いままで何故に奥田さんを読まなかったのか…(邪魔と最悪は読んだけど)
こんなにも面白い作家さんは珍しいよね。
たしかに、こんなに心理描写が上手いからこそ人をひきつけると思いまス。
うん,本で読むと伊良部先生にしても「チームバチスタの栄光」の白鳥にしても「砂漠」の西嶋にしても多分リアルな付き合いでは距離を置きそうな人たちが、すっごく魅力的に描かれることが多いよね。みんなに共通するのは言いたいことを(正しいことだけどおおっぴらには言いにくいこと)を堂々と言うってことかな。
一目を気にしないというか
マイペースというか。
憧れるのかも知れないね…。

2006/09/08(金) 22:00:34 | short │ URL | [編集]

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