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イン・ザ・プール/奥田英朗

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奥田 英朗
文藝春秋 2006-03-10

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喰わず嫌いしていた「伊良部シリーズ」、どうして読まなかったのか、今までが悔やまれるほど面白かった!
伊良部総合病院の地下にある「神経科」の、ドアを開けると中からは「いらっしゃーい」と甲高い、場違いな歓迎の声が聞こえる。
そこには色白で不潔そうなデブの中年医師が、茶髪で無愛想な看護婦と患者を迎える。そしてまずは一本、注射をうつ。
なぜならばこの伊良部医師、患者の注射シーンが大好きで、何かと理由をつけてはすぐに注射する。そしてそれを興奮気味に間近で見つめる。看護婦らしからぬ看護婦マユミは露出狂なのか、いつも太ももをちらつかせながら無愛想に注射する。
そんな神経科で、患者は半信半疑(というか、殆ど通いたくないと思いながら)伊良部のペースに巻き込まれて翻弄されるうちに、問題の本質におのずと気付き、だんだんと、癒されていくのだ。

収録作品

●イン・ザ・プール
●勃ちっ放し
●コンパニオン
●フレンズ
●いてもたっても


いったい何が原因で体調が悪くなったのかわからない、表題作の「イン・ザ・プール」の患者は、伊良部のひと言からプールに通うようになって、一見体調が良くなったようだが、実は別の「依存症」を併発しているだけのこと。しかし、伊良部に翻弄されることで、自身の悩みには冷静になっていったのだろう。伊良部のはちゃめちゃな思考と行動がおかしく、ぐっと引きつけられる第一作目。

「勃ちっ放し」は、わたしは女なので分からない苦労が、オトコの人にはあるんだなぁと、思いを馳せてみる。浮気されて離婚に至ったのに、元妻をなじることすらしなかったことが、その「症状」の原因の一つであると思われる。伊良部にけしかけられて元妻のところに行くが、そこでのやりとりに切なくなる一遍。伊良部先生は離婚歴がある!そう言う驚きと、患者に対しての思いやりがちゃんと見えてて、好きなオチの物語。

「コンパニオン」
誰かにストーキングされていると言うコンパニオンの患者。狂気と妄想が紙一重。こう言う人間の「狂気」の話は好きなのです。ブラックな心理ホラーがグッド。

「フレンズ」
ケータイ依存症の少年の心の中の孤独と焦燥感が痛々しい。
結局は自分で自分の心と対峙しなくてはならないと思うが、伊良部先生は見事にその手助けをしている。そして、そのあとのフォローもちゃんと。ラストはあったかいクリスマスになるといいな、と思わせられてジワーンと目頭が熱くなる。これが、この本の中では一番好きな話。

「いてもたっても」
家を出る時に火の始末をしたかどうかが気になって、外出もままならない「強迫観念症」の男。伊良部は人を深刻にさせない天才の持ち味で主人公の悩みを解消してゆく。根本的に解消じゃないとしても、症状と共存してゆく覚悟というか、気構えみたいなものができれば、それだけでも患者は気楽なのでは。患者たちに何のカンのと言われながらも信頼されて、好感を持たれる伊良部の、わたしもファンになりました。
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