【講】藤川 幸之助さん

満月の夜、母を施設に置いて
満月の夜、母を施設に置いて藤川 幸之助 谷川 俊太郎 松尾 たいこ

中央法規出版 2008-06
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徘徊と笑うなかれ 手をつないで見上げた空は: 認知症の母からの贈り物 (一般書) 詩画集 いっぱいごめんいっぱいありがと―認知症の母とともに

先日、藤川幸之助さんという作家で詩人のかた(ご本人のHPはこちらです)の、講演会を聞かせていただくご縁がありました。
認知症のお母さんの介護をされた経験をお話されました。

お母様は60歳で若年性アルツハイマー型認知症を発症され、84歳で亡くなられました。
最初は夫である、藤川さんのお父様が介護を一手に引き受けておられたのだそうですが、お父様は突然持病の心臓病で亡くなってしまいます。
おそらくご自分がいつか突然亡くなってしまうと言うご懸念があったのか、お父様は遺言を準備されていました。
その遺言に、二男である藤川さんに、お母様の介護を「お前がやること」と、記されていたそうです。

なんで?

と思われた藤川さんですが、それでも、覚悟を決めてお母様の介護を始められました。
その長きにわたる体験を、講演会でお話くださいました。

認知症は本人も辛いでしょうが、家族も辛いです。
目の前で変わっていく親を見なければならないのは、きっととても辛いと思います。
強くたくましい、賢く包容力のあったはずの親の変貌は、なかなか受け入れられないものかも知れません。
すると、この講演会も悲痛なイメージがあるかもしれませんが、意外にも講演は笑いに包まれ、何度も大爆笑が響き渡っていました。
藤川さんのユーモラスな話しぶりに、聴き入っていました。
でも、やっぱり泣けました。
笑ったり、泣いたり、忙しい2時間半でした。

先生は詩人でおられるので、ご自作の詩を(BGMつきで)織り込みながらの講演会でした。
(それがまた泣かせるんです。反則です(^-^; )

藤川さんは、「自分が母を支えている」と思い込んでいたけれど、実はそうすることで、「自分が母に支えらえている」と思われたそうです。
お母様が認知症になったからこそ、命や人生について考えることができ、優しくなれたのだ、と。

さて、その藤川先生が、明日テレビに出演されます。

NHK Eテレ ハートネットTV

リハビリ・介護を生きる あなたの中の私を失う時 
認知症の母を詠む 詩人・藤川幸之助

2015年5月13日(水曜)
再放送2015年5月20日(水曜)

番組HPはこちら


※番組HPの曜日が間違っています(>_<)




個人的に、講演の内容で印象に残ったことを、すこしご紹介します。

全編印象的なお話でしたけど、お母様ご本人が、ご自分の記憶がだんだん失われていく自覚があって、完全に忘れてしまう前の辛さ・・みたいな部分は特に心に残っています。
荻原浩さんの「明日の記憶」を読んだ時も、すごく身につまされたのですが、自分が認知症でいつかすべてを忘れてしまうと言う自覚が、自分を苦しめるのです。
藤川さんのお母様に限らず、認知症が進んでくると、家族の会話に入っていけない。
家族が笑っても、なぜ笑っているのか、話の内容が理解できない。
理解できないけれど、その場の雰囲気に合わせて、自分も笑う。
そして、人の話が理解できないから、唐突に自分の話をする。
それしか、話が出来ないから。
でも、それは何度も何度も繰り返した、同じ話になってしまう。
家族は何度も聞かされた話にうんざりして、
「さっきも聞いた」
「何度も同じことを言うな」
などと、遮ったり怒ったりしてしまいます。
そのときの、本人の気持ちって、どうなんでしょうね。
想像することもできないのですが、辛いだろうなと思います。
藤川さんのお母さんは、そんな中で、いつしか部屋から出て行き、三面鏡の前で自分のメモ帳を見ていたそうです。
そのメモ帳には、自分の名前や家族の名前が書いてあり、お母さんは何度も何度も繰り返して、読みながらなぞっていたそうです。忘れないように。自分の名前、夫や息子の名前を忘れないように。
筆圧でメモ用紙が破れるぐらいに、強く、何度も、なぞっていたそうです。
その時のお母様のお気持ちを思うと、言葉がありません。

先生のお話の中にあった、別の人の話ですが、やっぱり同じように家族だんらんの中で、人の話を聞かずに自分の話ばっかりするおばあさんがいたそうです。
「さっき聞いた」「同じ話を何度もするな」と怒られるおばあさん。
みんながおばあさんを持て余していた時、幼い孫が言ったそうです。
「おばあちゃん、さっきの話、もう一度してよ」と。
おばあさんは早速話しました。
聞き終った孫くんは「おばあちゃんの話は何度聞いても面白いなぁ!」と言ったんだそうです。
そして、おばあさんはその、何度も繰り返したその話をしなくなりました。
おばあさんは、「聞いてくれた」こと、「求められた」こと、存在を「認められた」ことで、深い安心感を抱いたのでしょう。
同じ話を何度も、怒られても止められても繰り返してしまう認知症の人は、自分の存在の不確かさに慄いているのかもしれません。そして、自分の存在を確認するために、しゃべり続けるのかもしれません。

そのほかにも、初めてお母様を施設に預けたときのエピソード(お母様を施設に置いて、自分だけ帰ろうとしても、お母様は藤川さんの洋服を掴んで離さなかったそうです。そんなお母様を置き去りにする罪悪感と身を切られるような辛さ・・。)や、
認知症が進行する中で、料理ができなくなっても、息子である藤川さんのために、大大大好物のカレーライスを作ってあげたいと思うお母様のエピソードだとか
認知症のお母様を近所の子供がバカにしたときの、お父様の腹の座った対応だとか
そして、お母様がなくなった時のこととか

思い返しても涙が出るような、ご紹介したいエピソードの満載です。

自分の親が認知症になったら、きっときれいごとでは済まされない、しんどい思いをするのだと思いますが、藤川先生の講演を思い出すことができたらなぁ・・と思っています。
藤川さんは、子どものようになっていくお母様の姿を
「子供のような姿に還っていく」
「その姿で私を育ててくれた」
「認知症と言う病気が私と母の絆を強めてくれた」
「その存在そのものを愛しく思う」ようになっていったとのこと。

病気になったら、人は病気を治そうとばかりする。だけど、病気を受け入れることで、自分の道が見えてくる。
人はそこに存在するだけで大きな意味がある。と藤川さんは言われました。
認知症のお母様を、支えて、支えることで自分も支えられるという、関係性の中でご自分が成長されたとのことです。

ぜひともご紹介したく、記事にしてみました。
読んでくださった方ありがとうございました。





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14:52 : [本・タイトル]写真集などトラックバック(0)  コメント(4)
今年の母の日は、私も全く普通の日だったのです。そして今まさに、藤川さんの講演のレポートを作成中に(私はレポートを書くとき、一旦SNSに書くことにしてるんです。)に、shortさんの記事が飛び込んできて、偶然に驚きつつ、拝見しました。
私のレポートは、shortさんのように他の人に伝わるように書けるのかどうなのかわかりませんが、私の思ったことを素直に書いてみようと思いました。
今日も必ずテレビも見ます。情報、ありがとうございました。

2015/05/12(火) 15:11:59 | saki │ URL | [編集]

sakiさん、こんばんは(*^^*)
コメントありがとうございます♪

訂正があります。
テレビは明日の放送です。
曜日を見て、今日と思われたと思いますが、番組HPの情報が間違ってると思われます(^-^;
私は、移し間違えがあるといけないからと思い、番組HPをコピペしたのですが・・
確認せずに載せてしまって申し訳なかったです。
明日、見てくださいね(*^^*)

sakiさんもちょうどレポートを書かれていたのですね。
みなさん、お役目があって、本当にお疲れ様です。。<m(__)m>
私の文章は、それこそ、ブログで書き散らしているだけなので(^-^;
書かなければならないことの半分も書けてないと言うか、伝えきれてないと思いますが・・・(^-^;
どうしても、ご紹介したくて。
今頃になりました。
読んでいただいてありがとうございます。
sakiさんもレポート頑張ってください(*^^*)

2015/05/12(火) 22:05:13 | short │ URL | [編集]

再放送見てみますね。母は、施設で穏やかに暮らしています。認知症も、十人十色の症状や家族の状況があり、母はラッキーな部類だと思っており、自分の将来を考える勉強もさせてもらっているようでもあります。そう考えられるのも、母が施設に入所できたからなのでしょうね。

2015/05/13(水) 13:40:36 | くまま │ URL | [編集]

くままさん、コメントありがとうございます(*^^*)
自分だったらどうかな・・と、何でもかんでも、そんな風に思います。
藤川先生みたいに
くままさんみたいに
関われるのかなぁ。
ひとつ思うのは、残された時間はそんなにはないと言うこと。
だから、出来るだけ(と言う時点でもうすでに自分に言い訳してるんですけど)
のことはしていきたいなと思います。
でも、もしも大変な状態になったら・・(^-^;
(友達のお母さんが大変なのです・・・)
覚悟などしても無意味でしょうね(^-^;

お母様お大事になさってくださいね。

2015/05/15(金) 01:01:52 | short │ URL | [編集]

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