【映】偽りなき者

B00DEE04KK偽りなき者 [DVD]
角川書店 2013-10-04

by G-Tools


光のほうへ」のトマス・ヴィンターベア監督の作品です。
北欧版「それでもぼくはやってない」と言えるような作品で、主人公の冤罪が、他でもない市井の人々の「善意」や「正義」によって塗り固められていく過程が、恐ろしいほどリアルに描かれています。序盤は見るのをやめようかと思うほど嫌な気分になりました。

主人公は離婚した男ルーカスで、幼稚園で働いています。
親友の子どもクララが幼稚園に通っていて、親つながりでクララには、個人的にも親しくします。
クララは自分に優しくしてくれるルーカスにおませな恋心を抱くのですが、ルーカスにはもちろん、拒否されます。
傷ついたクララは幼稚園長に、ルーカスのありもしない性的虐待を、つたない言葉で訴えたのでした。

ルーカスが「変態」になっていく過程がじわじわと描かれていて、かなりゾッとします。
幼稚園児の言葉に「子どもは嘘をつかない」と、疑うこともせず頭から信じ込んでしまう大人たち。
クララは途中で自分のしたことに気付き、訂正しようとするんだけど、それすらも大人たちは信じない。
何を信じているのか?
ルーカスが「やった」と、思い込んでいる「自分」を信じてしまうのかなぁ。
嘘が一人歩きして、やがて大きな波紋となり、ルーカスを溺れさせていく。

警察による誤認逮捕とか証拠捏造で作られた冤罪などと言うものではなく、隣近所の親しい人たちが自分の「正義」「善意」と言ったもので、ルーカスを糾弾、断罪する。

クララの両親はルーカスの親友なんだけども、古い付き合いのはずのルーカスを信じようとしない。

あれれーそんなもの?
私は結構自分の子の言うこと、信じないけどね・・って爆弾発言ですか(^_^;)
いやでも、子どもってその場しのぎの嘘をついたりする生き物じゃないですか?
なぜこの人たちは頭からクララを信じて、ルーカスを変態だと思ったんだろうか。
まぁクララは(翻訳によるかもしれないけれど)きわどいところで、嘘をはっきりついたわけじゃないのですよね。
結果的に、微妙なところで、嘘をつかずに大人の気持ちを「誘導」したんだと思うんだけど。
またこの園長先生が、年寄りの女の人だから、「そういうこと」をはっきりと口に出せないのね。
だから余計に「事実」が歪んでいってしまった。
その辺のくだりが、どうにもこうにも胸が悪くてイライラとしてしまった。

私はこのクララの両親を「なんで長年の親友を信じないんだろう」と思ってしまった。

でも、クララの父親たちを責める気持ちも確かにあったけど、幼い娘を守ろうとする親心も確かに理解できた。

さて自分が渦中にいたらどうだったんだろうか。
まず、ルーカスを変態扱いしたと思う。
話が横道にそれまずが、先ごろ「殺人犯はそこにいる」(清水潔著)を読んだばかりです。
足利事件で17年間も牢屋に入っていた菅谷さんも、じつは「無実」だった(しかし真犯人は捕まっておらず今も「そこ」で生活をしているのだ)それを地道な取材で晴らした一記者の執念の記録なのですが、菅谷さんはノンフィクションの主人公ではなく、映画とは同じようには語れないんだけど、この事件にしても、私は報道によって菅谷さんが「犯人」で「ロリコン」で「異常者」だと思ったのでした。
自己弁護じゃないけど、その渦中にいて大衆と違う意見を持ったり行動を起こしたりすることは、難しいと思う。
少なくとも私は。
だから、映画の中のルーカスを異端者扱いした人々を責める資格は、私にはないと思う。

と言いつつ。
それにしても、それはないんじゃないかと言う悲しい描写がたくさんあった。

ここから先は、上記を読んで映画を見るつもりになったお方は、読まれないほうがいいです。
ネタバレしてます。













とくに、ルーカスの息子が辛い目にあった場面は泣けました。
百歩譲って、ルーカスを犯罪者として接しても仕方ないとしよう、でも、その息子に罪はないじゃないか??
父を思う息子が、父のために興奮したとしても、それは大人の裁量で受け止めてしかるべきでは。
この息子に対する彼らの行動が、私は一番許せなかった。
ルーカスの友達がマルクスにビンタする場面は悲しくて泣けました。
ひどすぎるやろー大人やろーやめろーー!!しかもマルクスが1回殴ったに対して大人が2回!!
も、ほんとに許せなかった。
同じぐらい悲しかったのがファニー・・・・(涙)
よくそんなことが出来たもんだ。
ワンちゃんの好きな人が見たら発狂しそうです。
辛すぎ・・・・。


それでも、1年後には結局以前と同じように元さやに収まってるように見える。
たとえそれが表面上だけだとしても、やっぱり違和感がありますね。

でも、人々はやっぱりルーカスを信じてなかった。

誰も死ななくてホッとしましたが・・・。


大衆に迎合せずに真実を見極めるのは至難の技で、そのために罪なきひとが辛酸を舐めさせられていることは、実はこの世にごまんとあるのかも知れません。
私たちは自覚なしに加害者になってるのかも知れませんね。






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