【本】はぶらし/近藤史恵

4344022416はぶらし
近藤 史恵
幻冬舎 2012-09-27

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人気だけど、初めての作家さん。
面白かった。
主人公は脚本家としてそこそこ成功している独身女性、鈴音。手持ちのマンションと、他に仕事場も持ってる。
そんな「恵まれた」人生を送っている彼女の元へ、あるとき、親しくもない高校時代の友人、水絵が頼ってやってくる。行き場のないその友人を、水絵が仕事を探すための1週間と言う期間限定で、泊めてあげることにした鈴音。
しかし水絵には幼い子どもがいたのだった。

そんな「他人」と同居することで感じるストレスや苛立ち、仕事が見つからない場合はどうなるのかと言う不安や疑問など、とても上手く描かれていて、主人公の心理が伝わってきた。

今まで自分ひとり、気ままに暮らしてきた鈴音は、家の中の自分じゃない人間の気配に疲れてしまう。たとえば、それはテレビを見る音だったり、いつもなら乾いた風呂場を使っているのに、自分が使うときにはビショビショと濡れているとか、自分の家なのにドアを開ける前にブザーを鳴らさなければならない不便とか、一見些細なこと。だけれど、そんな些細なことが重なれば結構なストレスになることは周知のことだ。
水絵は、風呂の残り湯で洗濯するのでお湯を捨てるなとか、一日入っただけでお湯を入れ替えるのはもったいないとか、家の主である鈴音に進言する。でも、それは鈴音が決めることで、鈴音がしたいようにすべきだ。なのに、鈴音は水絵の意向に沿う。
そこに加えて、仕事が見つからないのに、出て行けとはいえない鈴音の気の弱さというか、気のよさというか、優柔不断というか。でも私には鈴音は「良い人」に思えたのだけど・・・。そう言った鈴音の気性と、水絵の切羽詰ったからこそのずうずうしさ、居直り開き直りが、まったく噛みあわずに、読んでいてイライラした。
あんたがそれを言うことじゃない。筋合いじゃない!と思うことしばしば。

特に象徴的なのはタイトルにもなっている「はぶらし」。
鈴音が水絵親子にはぶらしを貸してやるのだけど、翌日水絵ははぶらしを買い、鈴音に返そうとする。しかし、返そうとしたのは、前日、自分が使ったはぶらしなのだ。。。
その心理がなんだか不気味で、その不気味さは全編通じて薄れることはなかった。


でも、人は人に「親切に」と心がけないだろうか?
昔話でも、汚い姿の老人に親切にすれば、その老人は神様だったり天使だったりして、親切にした人間に報いが訪れるだろう。だけど、実際にはそんなことはできっこないということか。
私のことで言うと、何度か、物貰いが家に訪ねてきた。お金をくださいとか。
あるいは、不幸を装った人たち??が、自分が売っている何かを買ってくれと言う。
ボランティア風の人が来た事もあった。(近所中軒並み回るようなのだがそういえば最近は全然見ない。)
でも、それは、お金を上げたり、買ってあげたりしても「あげてもよかったんだろうか??味を占めてまた来ないだろうか?私がだまされたんじゃないだろうか?」と嫌な気分になり、逆に何もしてあげずに追い返しても、結構な罪悪感を感じて当分の間、ウジウジとしてしまう。親切にしてもしなくても、どっちにしろ悶々と嫌な気分を味わってしまう。これはなぜ?いつも疑問だった。
自分に解決できない問題を持ち込まれた不快感からそう感じたのかもしれない。
だから水絵の気持ちはとても良く分かったし、また自分だったら、水絵のようにして上げられないと、逆に感心したという面もあったのだ。

物語は最後に、あっと思わされる結末になっている。
大きな驚きはないけれど、(実は映画「パシフィックハイツ」みたいな物語なのかと思ったのだった)ストンと腑に落ちる結末で、なんとなくすっきりした・・ような、しなかったような(笑)。

しかし、あんなにも執着した息子に対する態度が、やっぱり腑に落ちないと言うか?
だからこそ、この結末なのか。
なかなか印象的な物語だったと思う。

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