【本】俺は駄目じゃない/山本甲士

4575238228俺は駄目じゃない
山本 甲士
双葉社 2013-05-21

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巻き込まれ3部作と「ぱちもん」が大好きだったけど、「わらの人」を最後にご無沙汰していた山本さん。
このたび久しぶりに手にとって見た。
面白かった!
以前のような毒っ気は抜けてたけれど、主人公の性格をユーモアたっぷりに「見せる」あたりは、さすがの手腕。心の呟きのひとつひとつが面白くて、随所でくすくすと笑えた。

主人公は名井等(ない ひとし)。「余計なことには関わらない」「余計なことはしない」が、生きるモットーだ。それゆえ、平凡に地味に生きてきた。時には理不尽な仕打ちに合いながらも、耐え忍んできたのだ。
ところがあるときふとした拍子に、警察に誤認逮捕されてしまう。
そのことがきっかけで、あらぬ方向にあれよあれよと、望みもしないのに巻き込まれてしまった主人公の顛末が描かれた物語。
「どろ」「かび」「とげ」の巻き込まれ3部作とは、逆の意味での巻き込まれ系の物語と言っていいと思う。

面白いのは主人公等の性格だ。本当に事なかれ主義で、無気力と言うのではないけれど、極力無駄なパワーを使わないようにセーブしている感じ。余計な揉め事を避けるために、嫌なことでも引き受けたり。いいように利用されているのが見え見えなのに、女と別れられなかったり・・少々イライラさせられる場面もあった。

そんな等のところに、ある市民団体(と言っても3~4人の小さな規模)が接近してきて、ブログを立ち上げよと
言う。例によって断れない等は、言われるがままにブロガーとなり、事の顛末をネット上にアップするのだ。
するといろいろな人が訪れ、コメントを残し、管理人(等)とやり取りをし・・やがて、等のブログは大きな波紋を広げていく。ネットの持つ力は確かに巨大だ。

自分の意思とは関係なく社会が沸いて、動いていく。警察にまで大きな影響を与えるとなれば、普通の人間なら多少なりとも功名心が働いたり、いろんな欲が出てきたりすると思うんだけど、この性格の等だからこそ、あくまでも控えめ。そこが等らしくもあり面白い。すぐにキレる若者とは一線を隔している。
こういったドラマでは、弱い男がたくましく成長していくケースが殆どだと思う。
でも、等はいつまで経ってもあまり変わらない。あくまでも「事なかれ主義」で・・・そこがまた面白かったんだと思う。
それに、激変はないけれどほんの少し変わっていくところも良かった。

象徴的なのが表紙のイラストである。サラリーマンのボクシング。
じつは等もボクシングを習っていたが、その性格ゆえに、防御は出来ても攻撃が出来ずに、結局ボクシングをやめてしまった。
だけどそのとき、会長が「ここで積み重ねたことは、いつか役に立つから」と言う。
その言葉は、なにもボクシングの技術だけの話ではないと思う。等の人生そのものが「それまで積み重ねたことがムダではなかった」と言える人生になっているのじゃないか。結局、弱虫だヘタレだと思ってたけど等は、折れにくいしなやかな柳そのもの。


素晴らしい、よく出来た人間でなくてもいい。
駄目じゃない、それだけで十分だよ・・
そして、自分を「駄目じゃない」と思えることが大切なんだ・・・
そんなメッセージを受け取った。
とても清々しい気持ちになれた一冊。オススメ。



ちなみに、主人公の等は、中学のときに「など」「ら」とあだ名をつけられからかわれたと言うけれど、私も読むときついつい「など」と読んでしまっていたことを・・反省・・(^_^;)
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21:45 : [本・タイトル]あ行トラックバック(0)  コメント(0)

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