【本】幸せの条件/誉田哲也

4120044157幸せの条件
誉田 哲也
中央公論新社 2012-08-24

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「ロスト・ケア」が現代日本の介護問題に切り込んだ小説なら、こちらは現代日本の農業問題に切り込んだ小説だった。会社のOLをしている梢恵は、社長の意向で長野の農家に「バイオエタノール」を作るための米の作付けを依頼するため、現地に行く。
しかしどの農家も、バイオエタノールのための作付けなど興味なく、けんもほろろで話も聞いてもらえない。
今は農家といっても、手広く米を作っている農家は少なく、減反のための休耕田が多い。
そんな中で、「あぐもぐ」と言う農場を営む安岡は、梢恵に「一度農場で働いてみろ」と言う。
そして梢恵は意に反して農場で働くことになったのだ・・・。
都会で大学へ行き、OLとして働く梢恵には何もかも初めてのことだし、知らないことだらけ。
そんな梢恵の視点で描かれるので、農業を知らない読者も、梢恵と一緒に農業のことを知っていく。
大変だけど、思っていたよりももっともっと大変なのが分かる。
性格的に、どことなくはっきりしないし覇気もない梢恵なのだけど、あぐもぐの人たちに囲まれ一緒に働くうちに、働くことの意義を見つけ生き生きした女の子に変わっていく。
安岡社長をはじめ妻の君江やその娘、あるいは従業員たち、みんな「良い人たち」で読んでいて気持ちが良い。ちょっと昔のドラマみたい・・と言う感じはしたけど・・。
そんな人々に囲まれて、成長する梢恵の姿がとても気持ちよく読めた。
農業の現状や、無農薬農業の意味など、学ぶところも多かった。

あと、3,11の東日本大震災が作中で起きる。
安岡の従弟が福島にいた。地震の直接被害は殆どなかったけれど、田んぼは作付け制限を出されてしまう。もちろん原発事故の影響だ。
それがたった300メートルのところで境界線を引かれ、作付け制限を受けてしまったのだ。
従弟一家はあぐもぐにやってくる。もちろん、快く迎える安岡一家。
普段遠いところで生活をしていると、こういう人たちがいることを忘れがちな自分にとって、とても耳が痛く感じられた。
原発と言うエネルギーとバイオエタノール。
そんな対比も含まれた小説だった。

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