【本】ロスト・ケア/葉真中顕

4334928749ロスト・ケア
葉真中 顕(はまなか・ あき)
光文社 2013-02-16

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戦後未曾有の大量殺人事件の真相に迫る問題作。

冒頭裁判にかけられている「彼」。43人もの命を奪ったと言う罪で。
寝たきりの老人を殺して回った殺人鬼。
その真相は・・・。

ミステリーには違いが無いけれど、書かれている内容はあまりにもシビアでヘヴィ。
ただのミステリーとかフィクションとかでは済まされない切実な内容だった。
私にはまだ介護が必要な肉親がないので、たぶんピンとは来ていないんだろう。
でも、そんな私にも、この先確実に訪れるだろう「未来」がありありと目に浮かぶように描かれていたと思う
人類史上類を見ない老人大国となる日本、そこで老人たちはどのように老いて行き、どのように死んでいくんだろうか。医療が発達して、命だけは長々と永らえることが出来る今・・。そして介護をする側は、見取る側は?
介護保険の導入によって介護がビジネスになり、ビジネスになった以上は、利益や効率が優先させられてしまう。
ときには命よりも・・。そんな中で人は幸せに老後を生きられるんだろうか?
介護に疲れ果てた登場人物の一人は言う。「人が死なないなんて、こんな絶望的なことは無い」と。

本書では、舞台となる介護施設が介護報酬の水増し請求や、事業所指定の不正取得などを摘発される。
不正という字面から浮かぶような悪行が行われているわけではない、と言うことが本書を読んではじめて分かった。そうしなければならない内幕というのが確かにある。
なんといっても現場は過酷だ。
理想を追いながらも、現場の状況に我慢できずにやめてしまう介護士がいたり、使命感などから続けていても、限界ぎりぎりの介護士がいたり・・本当に介護の現場は、過程でも施設でも過酷だ。
読みながらとても陰鬱になってしまった。
そんな中で「彼」は、淡々と殺人を続けていく。
40人以上を殺しても、それは発覚しない。「彼」は確信を持って殺して回っているのだ。

それに気づくのは、自身も親を介護施設に預けている検事。
この検事たちはどうやって、犯行に気づいていくのか。
そこもまた見所の一つ。
データをコンピューターで分析して、やがて、犯人像を結んでいくのだけど、その過程がすごい。
たかがデータとか、たかが数字と思う。しかし、こんなにもはっきりとさせることが出来るんだ、と驚きつつ寒心してしまった。

そして、犯人はやがて逮捕される。
しかし、それで物語が終わるわけではない。物語は永遠に問題を提起し続けるのだ。


介護すること、見取ること、介護保険の落とし穴、介護ビジネスの裏側、安楽死と尊厳死など、色々な現代の日本の抱える問題が描かれていて、考えさせられてしまった。

登場人物の一人が発する言葉がある。「迷惑かけていいですよ」。

絆は「ほだす」と言う意味合いもある。
縛り付けると言う意味を含む。
「きずな」と言うほど聞こえが良くない意味が含まれている言葉なのだ。
でも、ひとは一人では生きられない。つながりなくして生きられない。
世の中に、人に迷惑をかけずに生きている人なんていないのだ。
迷惑をかけることを恐れすぎるより、迷惑をかけたりかけられたりしながら、それが無理なく自然につながりながら生きていける世の中であって欲しい。




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