【本】ブラックボックス/篠田節子

4022510455ブラックボックス
篠田節子
朝日新聞出版 2013-01-04

by G-Tools



食の安全に大きく真正面から取り組んだ意欲作。自分が食べているものを信用できなくなる恐ろしさがあった。巻末の参考資料を見て、ますますこの物語がただのフィクションでなく、現実に起きていることなんだと慄然とした。
滅多に食べないのだが、たとえばファミレスのサラダなんかは、切り口の新鮮さを保持するために、薬液に漬けると聞いていた。家庭で調理すれば分るが、生野菜は切れば間もなく変色する。長時間サラダバーに置いておいても変色しないなんて、それだけでも不自然なことだ。
しかし、この本を読んで、外食のサラダを避ければそれでいい、スーパーのカット野菜を使わなければそれでいい、と言う問題ではないと言うことがよーくわかる。
田舎なので隣のおばちゃんが自分の畑で作った作物をくれたりする。自分の家にも小さいながら畑があり、両親が細々と季節の野菜を作ってくれる。収穫作業は手伝ったり任されたりしている。
土は当然付いているし、食べるためには落とさなければならない。洗って綺麗にして、虫がいたら取り払う。
たしかにスーパーで買うよりも手間がいるのだ。
でも、今の主婦達は(この言い方も良くないらしい。食の管理を引き受けているのが主婦だけで、子どもの健康状態に問題が起きれば母親だけの責任とされる物言いに問題があるのだ)徹底的に手間を嫌うことが多い。
消費者のニーズは、安心して食べられる安全な作物。泥がついてなくて、虫もついていない、虫食いの痕もない、見た目の美しい野菜。扱いやすく手間いらず、そのうえ栄養豊かで味もいいもの。。そして、安いもの。。。
生産側は消費者のニーズと、コストと言う両面をクリアして農作物を作らねばならない。その結果、この本に登場するようなハイテク農場が・・・いや、ハイテク農作物工場とでも言うべきファームが登場するのだ。
残留農薬や偽装表示には敏感な消費者達。でも、農薬を大量摂取した野菜と、その必要はないけれど遺伝子操作された野菜を比べたら、どちらを選ぶのだろう?
また、表示義務のない薬品も中にはあり、それらがいくつか体内に入り独自の化学反応を引き起こさないとは限らない。
自分のことだけなら危機感も低いかもしれない。しかし我が子にそんな危険な食べ物を与えることが出来るのか。
いま、子ども達に多い重篤なアレルギー反応だって、元はその母親の長年の食生活に原因があるといわれたら?
食は生きることの基本中の基本だ。
本書はそれらに対して人々が、あまりにも無知でいい加減できちんと学習しなかったことへの警告であり、わがままを求める姿勢に対して反省を促しているのだと思う。
しかし、そんなことをいっていたら何も食べられない・・。とどうしても思う。
そしてだからと言ってどうすればいいのか分らない。
無知で無力だ。
このまま自分達に都合の良いことだけを求め続ければ、やがてその要求は企業の餌食となり、今よりももっととんでもないものを食べさせられる時代が来る。そんな危機感でいっぱいになってしまった。

小説としては実は読みづらい。
まるで生協の学習会で勉強させられているような感じだった(私には)。
物語のメリハリもそれほど大きくないので、だれてしまった。主人公達にもイマイチ肩入れできない。
テーマとしてとても興味深いし、提起される問題には瞠目すべきだと思うけど、いかんせん「物語」としては面白みに欠けたと思う。
それでも、一読の価値ある作品だろう。
海外労働者の実態や、農家の現状にも言及していてその点も読み応えがあった。
以前読んだ「震える牛」も良く似た感じがしたけれど、小説としては「震える牛」のほうが面白かったかな。
スポンサーサイト
11:30 : [本・タイトル]は行トラックバック(0)  コメント(0)

コメントの投稿











 管理者にだけ表示を許可

トラックバック

この記事のトラックバックURL