【本】七つの会議/池井戸潤

4532171164七つの会議
池井戸 潤
日本経済新聞出版社 2012-11-02

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空飛ぶタイヤ」から「鉄の骨」「民王」「下町ロケット」「ルーズヴェルト・ゲーム」「ロスジェネの逆襲」・・・その他・・・と読んできたけど、どれも「空飛ぶタイヤ」よりも面白いと思える作品は正直言ってなかった。なんとなくマンネリでよく似たテーマに良く似た展開。今回はタイトルからして短編集かと思って期待しなかった。
が!!
これがまぁ私的には「空飛ぶタイヤ」に次いで、と言うより遜色ないほど面白く感じた!
舞台は、東京建電というメーカー。大手電機メーカーのソニックの下請けのひとつである。
タイトルのとおり、各章それぞれいろんな会議があり、連作短編の形を取っている。
第一話は「居眠り八角」。八角というお荷物社員が上司をパワハラで訴え、それが会議に発展する。
第二話は「ねじ六奮戦記」。東京建電よりもうひとつ下請けの町工場だ。兄と妹のふたりが工場の経営について論じれば、いつでもそれが「会議」になる。
第三話は「コトブキ退社」。不倫の末に会社を辞めることになったOLが、自分の仕事を残そうと、会社に軽食コーナーを作ろうと会議に諮る。
と言う風に、一見すればそれぞれがどう繋がるのか分らない。
が、第一話の「居眠り八角」のラストでどうにも腑に落ちない、疑問が解明されないまま物語が続いていて、なんとな~~く、2話3話を読むと、その疑問の答えに近づいているのが分ってくる。
やがて現れてきたのは、池井戸さんお得意の、企業の・・いや、世の中の収益至上主義に対する反感。嫌な上司、嫌な企業を描かせればお手の物なのだろう。
第2話に登場するねじが発端のひとつである。
ねじ、小さな小さな「部品」だ。
その小さな部品がやがては巨大なトラブルを引き起こしていく、その過程がとてもスリリングに描かれていて釣り込まれた。
また、東京建電では、徹底したコストの削減を目指し、それはもう阿漕なほどなのだけど、そのために社員に対する思いやりがない。社員はまるで使い捨ての「部品」扱いだ。社員は会社の一本のねじにすぎない、そう言っているように思えた。
ねじも社員も、ちっぽけなひとつの部品が反乱を起こしているようでもあり、その符号が面白く感じたし、爽快な気分にさえなった。
「空飛ぶタイヤ」などのほかの作品にも共通するのだけれど、客に対して誠実さのない企業は、客、人のためじゃなくひたすら儲けのためにある企業は、本当に恐ろしいと思える。
「仕事は儲けのためにするのではない。人の助けになるのだ。客を大事にしない商売は滅びる」
作中人物の言葉だけれど、ずっしりと心に残った。
ラストは決してハッピーエンドと一口に言えるものではないだろう。
でも、そのほろ苦さと、やっぱり池井戸作品らしい爽快感と、絶妙のバランスだったと思う。
とても面白かった。オススメ!!


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13:40 : [本・タイトル]な行トラックバック(1)  コメント(2)
珍しく悪と善がはっきり分かれてなくて、嫌な奴にも事情があって、これがサラリーマンの現実かと思いました。

でも経理部の新田や親会社の梨田は嫌な奴でしたけどね。

私も「空飛ぶタイヤ」を越す池井戸作品はまだです。「ルーズヴェルト・ゲーム」は結構いい線いきましたけど。

夫と息子に今池井戸さん勧めてます。
「ほこ×たて」って番組あるじゃないですか。あれは今まであまり光の当たらなかった職種に光を当てて、おお!こういう仕事もあるんだなって子供たちに夢を与えると思うんですよね。

そしてそれを小説にしているのが池井戸さんだと思います。池井戸さんの小説は、そうやって普通に働くお父さんたちの仕事や会社を書いていて、息子にもそうやって仕事を選んでほしいなって親心で・・・。

ま、親の心子知らずで、まだ無理でしょうけど。

善人と悪人がはっきり分かれてなくても、きちんと梨田は飛ばされ、新田もいい気味(笑)でさすが池井戸さん、そこは忘れてなかった。

2013/05/18(土) 18:31:35 | じゃじゃまま │ URL | [編集]

じゃじゃままさん、コメントありがとうございます。
例によって、半年前に読んだので、細かいところは忘れています。
登場人物も誰が誰やら(^_^;)
八角さんは記憶にあるけど・・・。

ほこたて、時々見ます!
面白いですよねヽ(^o^)丿
うんうん、ああいう番組を見て、自分の将来になんらかのインスピレーションを
受けてもらいたいですね。
じゃじゃままさんのお子さんは今から将来のこと、決めていく段階なんですね。
これからが楽しみですね~。

>池井戸さんの小説は、そうやって普通に働くお父さんたちの仕事や会社を書いていて、

うんうんわかります!
ミステリーの中にもサラリーマン小説的な味わいもありますよね。
次の作品も楽しみですねヽ(^o^)丿

2013/05/20(月) 21:33:55 | short │ URL | [編集]

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2013/05/18(土) 18:25:11 |