【本】舟を編む/三浦しをん

4334927769舟を編む
三浦 しをん
光文社 2011-09-17

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本屋大賞を受賞した本作品、私もそれで興味を持って図書館に予約したのだけど(買わない派でごめんなさい!)順番が回ってくるのに、なんと半年以上待ちました。それだけ人気がある・・ということで、読み終えてみればそれも大いにうなづける面白さ!
最初、タイトルを聞いたとき、なんとなく時代小説かな~と思った。「天地明察」みたいな感じかな?と。何の根拠もなかったけど、そう感じたのです。
でも、開いてみたらこの本は、辞書編纂の物語でした。
定年間際の荒木は、次に編む辞書のために人材確保に動く。そこで「まじめ」(馬締)という社員に出会う。まじめと辞書部のひとたちは、その後15年をかけて、ひとつの辞書「大渡海」を作り上げていくのである。
私たちが普段何気なく使っている辞書。そこには本当に、想像を絶するほどの、気が遠くなるほどの工程があるし、時間も必要なのだということが分かる。言葉に関する考察もそうだけど、使われている紙にしても…。
ひとつのことを、みんなが協力し合って成し遂げていく達成感と感動。
読んでいて、実にわくわくさせられました。
三浦さんはご自身がオタクなだけに、こういう言語オタクの描き方もお上手。興味のない人間がそばにいたら必ずや面食らうしあきれるだろうと思うような会話を、とてもリアルに描いていると思う。
冒頭の、荒木と松本先生の会話なんかは、「感動すべきところ?」「笑うところ?」という際際のラインが絶妙だったのじゃないでしょうか(^_^;)。
ここに登場する言語オタク、辞書オタクというべき人種の人たちが、言葉に、辞書に向ける深い愛情と畏敬の念が、こちらにも伝わってきて驚きもするけれど、私は心から胸を打たれた。
世の中というか、私たちが教授する文明は、どれほどの、こういうオタク(エキスパート)たちの手によって作られ、豊かになっているんだろう。意識せずとも知らぬ間に、たくさんたくさん恩恵を受けているんだなぁ…と、しみじみとしてしまった。
それだけじゃなくて、登場人物たちのやり取りがまたいいのだ。
人が人を思う気持ちがてらいなく描かれていて、ラストなどは大泣きしてしまった。
まじめさんという主人公の人物造形もよかったけれど、私は最初に同じ部署で働いていた西岡さんが大好き。見た目は軽薄で、辞書にも言葉にも疎い西岡だけど、その実はちゃんと辞書に対する愛情も、そしてまじめを支える気持ちもあって、この人がこの本の中で一番好きだった。好感を持てるキャラクターがいるかどうかは、小説を読む上でとても大事なことだから、ここも作者にまんまとやられた感じだ。
辞書、それは見た目は(本にしてはごついけど)小さなものだ。
でも、そこにとても壮大な空間を感じることが出来る。
海のような、宙のような、広大な無限の空間の中で、一そうの舟が浮かんでいる。その舟が「言葉」なのだ。人間になくてはならない言葉が、そんなイメージを浮かび上がらせてくれる。
この物語をこの尺で描いたこともすばらしいと思う。潔くズバッと何年間も切り取られている手法も見事だった。切り取られはしていても、その間もいつも彼らと一緒にいたような、その間の出来事が目に浮かぶような気分にもなった。
直感的に「天地明察」と同じにおいを感じたのだけど、それは間違ってなかった。
天地明察」と「クローバーレイン」を髣髴とさせる爽快感と感動があった。
おススメです!



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