【本】晴天の迷いクジラ/窪美澄

4103259221晴天の迷いクジラ
窪 美澄
新潮社 2012-02-22

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ふがいない僕は空を見た」に続いて2作品目に読んだ著者の本。
こちらも面白かった。
タイトルの「迷いクジラ」と言うのは、主人公の一人のふるさとに、(多分和歌山?)迷い込んだ大きな鯨のこと。
クジラは生きるか死ぬかの瀬戸際です。
このクジラのように、物語に登場する3人の主人公たちは、とても生きにくい人生を歩いている。
由人は、農家の次男。長男は引きこもり。妹は未婚の母。父親の「家から出て行くほうがいい」と言う言葉で、たいした目的もなく東京の美術系専門学校に入り、恋人が出来・・・と順調に見えた人生も、会社が危うくなったことで由人の人生も一変する。由人はいつの間にかうつになってしまった。
その会社社長の野乃花。生まれ持った美術の才能は類まれだったが、若くして嫁いだ婚家で、わが子を捨てて逃げるようにして東京へやってきた。東京での成功も凋落も、野乃花の神経をすり減らしていたのだった。
正子は、過干渉の母親に育てられ、息も絶え絶えになっていた。
由人と野乃花は、「自殺」から逃れるようにクジラ見物を思い立つのだけど、そこで、正子を偶然拾い、3人の奇妙な同行となった。
3人の生きることの苦しさが伝わってきたが、特に「正子」のそれは壮絶。
この小説の前に「母がしんどい」というエッセイマンガを読み衝撃を受けたばかりだったので、正子の人生(まだ子どもだけど)が一番胸に迫るものがあった。
3人はクジラを見に行って、その村である祖母と孫の二人暮らしの家に居候することになる。
そして、そこでの田舎の暮らしと、クジラ見物と言う特殊な状態が、だんだんと3人に影響を与えていく。薄皮をはぐように3人は元気になっていく。ほんの少しだけど・・・。
落ち込んでいく人の気持ちよりも、浮上する人の気持ちのほうが、やっぱり読んでいて心地よいものです。
小説の場合、最後は上手にみんなが立ち直ってめでたしめでたし・・・となることがある。
それをご都合主義ということもあるけど、私はそれも良いと思っている。だって、小説の中くらい取っても都合のいいことがおきても良いじゃないか・・・と思うのだ。
じつは、本書はそこまで「甘い」物語でもない。(「ふがいない・・」もそうだったかな)
しかし、そのラストが却って切実に感じられる。だって人生は甘くないもの。
甘くなくても生き辛くても、人は生きていかなくては。
苦しいときや悲しいときはに「晴天」が励ましてくれる・・・そんな気持ちになった。


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11:35 : [本・タイトル]さ行トラックバック(1)  コメント(0)

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