【本】七十歳死亡法案、可決/垣谷 美雨

七十歳死亡法案、可決
七十歳死亡法案、可決垣谷 美雨

幻冬舎 2012-01-27
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2020年、高齢者が国民の3割を超え、社会保障費は過去最高を更新。破綻寸前の日本政府は「七十歳死亡法」を強行採決する。(「BOOK」データベースより)

最初は、このセンセーショナルな法案に対して「そんなアホな!」と思ってまじめに読む気がしなかった(それなら何故借りたのかと言う話だけど…)。
国民が、不承不承ながらも法案を受け入れているようなのが(反対している人たちも多いが)まるで現実味がない。
そもそも法案そのものに説得力がない・・・・・気がする。
でも、それをまぁまぁ気持ちをなだめつつ読んでみると、「法案」がテーマではなく、老人の介護を通して主人公一家の現状が見えてくるのだ。これがまた、いまや日本国中誰もが他人事とは思えない状態。
寝たきりの老母の介護を、妻が一手に引き受けているのだけど、夫は無関心、自分は働いているのだから、専業主婦で仕事もしていない妻が介護するのは当然と思っている。
息子はエリートコースから外れてしまい、いまや引きこもりのニート。ご飯も母親に運んでもらい、部屋で食べている。
介護を手伝ってもらおうと思った長女は、逃げるように独立。
55歳の主婦は「七十歳死亡法案」によって、姑の介護があと2年で終わることが希望の光だ。
反面、自分の人生もあと15年で終わると思うと2年も介護で潰されたくないと思う。思いつつも、今の自分の精一杯のやりかたで、誠実に姑を介護している。その孤軍奮闘が痛々しくも立派なのだ・・・が。それが介護されている老母にも夫にも、誰にも伝わらない。当然のことと思われている。
主婦の目を通して、家族のあり方が浮かび上がってくる。どこかおかしいんじゃないか?妻だけに負担がかかる介護のあり方に、何故この家族は疑問を抱かないんだろう。でも、案外そんなものかも知れないと思う。自分たちの家族のあり方を俯瞰して眺めることは難しいのだろう。
また、ニートの息子の目を通して、若者たちの現状が。特養ホームで介護の仕事をしている長女の目を通して、終末介護のあり方などが描かれていて、本当に「生きにくく」「死ににくい」世の中をあぶりだしている。
姑の視点に立てば、戦争で家族もなにもかも無くし、苦労と言う言葉では足りない、生きて越し方に頭が下がりもする。人生の終焉に少々のわがままも言いたいよね…と思ってしまう。

七十歳死亡法案なんて、可決され施行されたらどうなるか?そんなことはまじめに考えるのがバカらしいと思う。
思うけれど、そのことを本気で真剣に考えたら、にっちもさっちも行かなくなった日本の将来も、希望がわいてきて明るくなるのかもしれない。
物語はあまりにもうまく行きすぎで、ご都合主義ともいえるだろう。
でも、小説ぐらい、ありえないほどうまく行ってもいいじゃないか・・と思わせる爽快感がある。

実際、今の世の中「老人になったら早く死んだほうがいいですよ」と言う感じがあふれている。
私の親も「年よりは『早く死ね』って言われてるような気になる」と言っています。
作中でも介護される老母は「生きててすみません」と思っている。
なかなかに身につまされるお話だったなぁ。
著者の作品はどれも少しずつ、不思議な設定で面白いですよ。

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