【本】漁港の肉子ちゃん/西 加奈子

4344020499漁港の肉子ちゃん
西 加奈子
幻冬舎 2011-09

by G-Tools


肉子ちゃん、本名は菊子だけど、太っているから「肉」子と呼ばれている。
北陸の小さな港町にある、焼肉屋「うをがし」で住み込みの店員をしている。
身長151cm.体重67.4kg. 151=憩い 674=むなしい、語呂あわせが得意である。
「けものへんに交わると書いて、狡い、て読むのやから!」
「自ら大きいって書いて、臭いって読むのやから!」漢字も得意だ。
語尾には必ず感嘆符「!」あるいは「っ!」がつく喋り方。
起きているときもにぎやかだけど、寝ているときもいびきでうるさい。
人を疑うことを知らず、なんでもストレートに受け止める、素直で能天気で人気者。
男に散々騙されて、流れ流れてこの、小さな港町にやってきたのは3年前。
寂れた港町で、肉子ちゃんや土地の人たちや織り成す人間ドラマを、肉子ちゃんの娘、キクりん(喜久子)の視点で描いた愛が一杯詰まった、優しい優しい物語。


最初はこの文体と、肉子ちゃんのパワフルさになじまず、戸惑ったけれど、中盤からはグイグイとひきつけられ最後はもう一気読み。
なんという優しい物語だろうか。最後は涙涙。。。。

肉子ちゃんの娘キクりん(11歳)の目線を通して見る肉子ちゃんは、(キクりんがそう思っているのではないけれど)、読者の私には決して「好感度100%」というわけには行かない、ちょっと風変わりな女性だ。
鈍感だし、下品だし、見てくれも美しくないし、ギャグは滑っているし…実際身近にいたら、こんな人と友達になれるだろうか?と思うような女性なのだ。
物語はどちらかと言うと、思春期に突入した、すこし大人に近づきつつある、娘のキクりんの物語だ。
同級生の仲間はずしや、はずされたりに悩んだり恐れたり、自分の態度に自己嫌悪したり。
また風変わりな男子の二ノ宮との接近。
東京から来たカメラマンに惹かれたり、他の人には見えないものが見えたり聞こえたり。
そんな中で、ペンギンのカンコちゃんの切ないミニストーリーがとてもいいアクセントになっていて、このあたりからぐっと物語りにひきつけられていった。
キクりんはとても大人っぽい女の子で、それまでの生活を思うと、必然的に老成しなければならなかったんだろう。でもやっぱり、どこかで「ムリ」をしていたんだろうと思う。
そんなキクりんを解き放ったのは、「うをがし」の主人、サッサンだ。
「おめさんは、生きてんらろ」
「生きてる限りはな、迷惑かけるんがん、びびってちゃだめら」と言う。
そして、
子どもらしさというものが大人の作り出した幻想であると同じに、ちゃんとした大人もいない。
いくら頑張っていい大人になろうとしても、辛い思いや恥ずかしい思いは絶対にするのだ。
そのときのために備えて、子どものうちに一杯恥をかいて、迷惑かけて、怒られたり傷ついたり、そしてまた生きていくのだ・・・・。
と、言う。

今、世の中は、人に迷惑をかけることを徹底的に忌み嫌う。
時には家族にさえ、いや、家族にこそ「迷惑をかけてはいけない」と言う風潮だ。
そんな中で、サッサンのこの言葉の重みがどんなものか。
こういう言葉を待っていた!と思って大いに感動してしまった。サッサンかっこいい!

そして明かされる肉子ちゃんの半生は、まさに人に迷惑をかけられて、すべてそれを受け止めて、愚痴もこぼさず文句のひとつも言わず、ただひたすら「迷惑」を受け止めて生きてきたことがわかる。
それがわかったとき、肉子ちゃんは私の中で天使になった。
相変わらず下品で鈍感で醜いけれど、キクりんが言うように「こんな人にはなりたくない」と思う・・のではなく「こんな人にはなれない」と思うけれど。


最初のほうでくじけそうだったけど、最後まで読んでよかったわー。。。オススメ!!!
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みんな、それぞれで生きている。それでいい。圧倒的な肯定を綴る、西加奈子の柔らかで強靱な最新長編。 女優宮崎あおいさんが以前NHK「あさイチ」で紹介してた本、お気に入りの作家

2012/10/05(金) 18:07:32 | 粋な提案