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【本】震える牛/相場英雄

4093863199震える牛
相場 英雄
小学館 2012-01-31

by G-Tools


うーん!センセーショナル!
怖い怖い。
ちょっと食べ物を買う気も食べる気すら失せてしまった・・・。


2年前の殺人事件を追うことになった刑事の田川。
ある居酒屋で深夜に起きた強盗殺人事件。
得意の鑑取り捜査で地道に調べていくと、ただの強盗殺人ではない局面が浮上した。
片や、大手スーパーのオックスマートを調べるライターの鶴見は、郊外型の大型ショッピングセンターとその周辺店舗との関係を探っていた。

一見、何にも関係がなさそうな両者は、物語である以上、なんらかのつながりがあるだろう・・と思わせられる。
その両者のつながりは何なのか?というのが、ひとつの軸になる。
強盗殺人を追う田川刑事の、事件に向き合う姿勢とその人物像に好感が持てるのと(妻に「ちゃん」付けで呼ばれたり、絵に描いたような娘との関係が鼻についたが・・・)徐々に鑑取り捜査が実って真相に近づいていく過程がスリリングで、読み応えがあった。
最初は、オックスマートの話は、いったいどう関係してくるのかさっぱり分からなかったけど、オックスマートが企業としての姿勢を問われる内容が明らかになるにつれ、これはただのフィクションとして気軽に読み過ごすことではないのでは・・・と、緊張感が高まってきた。
それがもうひとつの軸になっている。
このオックスマート、大手スーパーであり、傘下の各企業をあまた展開し、大型ショッピングセンターを各地方に作っている。明らかにあの企業をモデルにしているのだろう・・と言う対象がある。
大手スーパーの進出は、ご存知のとおり地元の商店街を直撃し、多くの町でシャッター商店街を作ってしまった。
作中のライターも、実はある小さな小売業の娘という設定で、彼女の実家のように、大手スーパーにつぶされてしまった小さなお店は数え切れないだろう。
こうして本を読むと、そうだ、大手ショッピングセンターが諸悪の根源だ!なんて思うかもしれない。でも、ふと一消費者に戻ってみると、そこへ行けば何でもそろう、安くて便利なショッピングセンターは、いまや生活に欠かせないものだと思う。
やっぱりどうしても、安いものを求めてしまう・・・。
それが結局回りまわって自分たちの首を絞めていることが分かっていても。
それとは別に、食べ物の話。
この作品には「マジックブレンダー」という、衝撃的な機械が登場する。
マジック=魔法の、ブレンダー=ブレンドする機械と言う意味だろう。
これがどう使われているかは、本書を読んでいただければと思うけど、結局それもこれも、消費者(私)が、安ければいいのだという意識でいては、これはまったくフィクションと割り切れない不気味さがあると思う。
たとえば数年前に発覚した偽装和牛の問題だって、あの肉屋がどんな手を使って肉を増やしていたか、ミンチには何が入っていたか・・・それはまさにフィクションではなく、実際に起きたこと。
多少大げさに書いてあるかもしれないし、フィクションならではの「盛り」もあるだろうと思う。
でも、決してスルーできない恐ろしさがあった。
利便と低価格を求める消費者。
そこへ漬け込む企業。
便利なバイパス付近に大手ショッピングモールが出来、その周辺におこぼれの客を狙って安売りの牛丼やめがね屋や洋服のチェーン店が軒を並べる。その土地のカラーはまるでなくなり、全国どこへ行っても同じ風景。
しかしガソリンの高騰で、客足が遠のく。ショッピングモールは集客が出来なくなり撤退。
大きな廃墟が残る。
大手ショッピングモールは結局、シャッター商店街と廃墟を残し、次なる土地を求めて移動する・・・という。
日本はどんどん壊れてしまう。
そんな危機感。
ファストフードがなぜすばやく買えるのか、添加物の害はどうなのか。そういうことに無頓着でいいんだろうか。
そんな深い問題提起があって、ミステリーのオチとしては、殺人事件の真相などは物足りない感じも受けたけど、全体的にずしんと読み応えのある作品だった。




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