【本】開かせていただき光栄です/皆川博子

4152092270開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU― (ハヤカワ・ミステリワールド)
皆川 博子 佳嶋
早川書房 2011-07-15

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最近、本はたくさん読んでいます。
感想を書いてないので、書く時間の分余計に読めているのかな?
そう思うと、読書の勢いが衰えないうちに、もっとじゃんじゃか読んでいこう!!
と思っているうちに、感想未アップは7冊になろうとしています。
(映画のほうも6作品ぐらい溜まっています)
しかし、この本「開かせていただき光栄です」が、すっごく面白い本だったので、とりあえず感想を書きたくなりました。
前置き終り!(^^ゞ




時は18世紀、所はロンドン。
兄の経営する聖ジョージ病院の外科医を勤める、ダニエル・バートンは私設の解剖教室を開いている。
あるとき、解剖教室に見知らぬ遺体が紛れ込んできた。
時を前後して田舎町からロンドンにやってきた詩人志望の少年ネイサン・カレン。
秀でた語学力を買われて、憧れの準男爵令嬢に物語の音読をさせられたり、ゴシップ新聞に寄稿させられたり。
解剖教室と詩人志望の少年。この両者のつながりは・・・。
数々の事件や不審な出来事に、盲目の治安判事、サー・ジョン・フィールディングの推理が冴える。



まず冒頭、解剖教室の様子が興味深く、一気に話に入り込んだ。
死体を解剖しているのだからその描写はグロいけど、師であるダニエルと5人の弟子達とのやり取りが面白くて、とてもユーモラスに書かれていて釣り込まれた。
医学の進歩した現代とはまるで違う当時の医療事情。解剖学は最先端科学であり、それまでの通説や常識を覆し新たな真実を医学に提供すると同時に、相変わらず人々から忌み嫌われる行為であり、イギリスでは非常識な行いだったようだ。
そんな中で、ともかく解剖がしたくてたまらないダニエルの口癖が「もっと屍体を!」なのだ。
科学者の立場で、なるべく多くの屍体を臨床解剖したいとの切実な願いがこもっている。
そんな解剖教室にいつの間にか忽然と出現した2体の屍体。
両方とも損傷の激しい屍体だ。
一体どこから来たんだろう・・・と、読み手も先が気になって一気に読まされる。


事件を解決していくのは、盲目の治安判事、サー・ジョン。
賄賂が横行して汚れきった法曹界において、希少な清廉、そのうえ聡明な判事だ。
判事には目の代わりを務める助手がいて、それが当時には珍しく女性であり、判事の姪であるアン=シャーリー・モア。彼女がまた「使える」助手なのだ。判事の目となり足となって事件解決の手がかりをつかんでいく。
この二人の関係は、ふっとリンカーン・ライムとアメリア・サックスを連想したのだけど・・。

目が見えないけれど、判事はその分聴覚がすぐれている。
物音にも敏感だし、人の声もすぐに覚え判別し、そして声色から相手が真実を語るのか嘘を言っているのか分かるという。
そんな判事と、目に見えない(わからない)「敵」との推理合戦がとても面白い。
物音や声だけで事件の真実に迫っていく様子は、とてもスリリングで読み応えがあった。
聡明な人格者のサー・ジョンは好感が持てた。

この、サー・ジョンを相手に、ダニエル先生はとにもかくにも「もっと屍体を下さい」の一点張りなのが可笑しくて。
「妊婦の標本を作りたい」「妊娠月に沿って何体も必要だ」「胎児の標本も欲しい」・・・などなど。
それを大真面目に主張するものだから、サー・ジョンも呆れるやらひるむやら・・という描写が、内容の壮絶さと裏腹なユーモアに溢れていて、本当に可笑しかった。

本筋であるミステリーの内容も、かなり面白い上に読みやすい。
本格ミステリなので、しばしば事件の全貌をおさらいしたいところを、サー・ジョンの解説付きでその時点での疑問と一緒に教えてもらえる。本格ものが苦手な私にも読みやすかった理由だと思う。


また当時のロンドンの様子もとても興味深かった。
不衛生で喧騒まみれで悪徳警官やら賄賂の横行。
暴動を起こしたら投獄されるニューゲイト監獄の様子の凄まじさ。解剖よりもよほど凄惨だった。
また、エレイン嬢が、読書すきなのだけど、本に関して言えば、翻訳から装丁まで、自分の望むままのオーダーメイドだということが驚き!
自分だったら、つまらない小説じゃなく、素晴らしい物語を本にしたいと思う。

というわけで、最初から最後までとっても面白く読んだ。
出来たら、「サー・ジョンと聖ジョージ病院解剖教室シリーズ」にしてもらいたいとさえ思ったのだけど・・・・・・・・・。残念というか、寂しいです。





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