【本】ジェノサイド/高野和明

4048741837ジェノサイド
高野 和明
角川書店(角川グループパブリッシング) 2011-03-30

by G-Tools


とても面白く読んだ。壮大で、まさにこちらの「思いを越える」内容。こんなに面白い本を今まで読んだか?と思ったぐらい。
最初はとても曖昧な輪郭でワケが分かりにくかったのだが、読み進むにつれ徐々に輪郭がはっきりとしてきて、途中やめられないほど釣り込まれ、鳥肌が立つような興奮を覚えた。
「素数」がこんなに大事だったなんて・・・というところからして、私には驚きの連続の本だった。

イラクで傭兵として戦争に参加しているイエーガーの元に、あるとき謎の仕事が舞い込む。「人類のためになる。しかし汚い仕事だ」と。イエーガーは病気の息子の治療費のために引き受ける。謎のミッションには、同じような傭兵の中から4人が選ばれていた。4人はアフリカ、コンゴ共和国へ向かう。
一方、科学者である父親を急病で亡くした研人。薬学部の大学院生で、創薬の研究をしている。父親の死後、父親からメールが届く。そこには、自分にとって無謀と思えるような創薬に関する指示があった。
一見関係のなさそうな両者がどこでどう繋がるのか。
両者を結びつける「ハイズマン・レポート」とは何か。


ここから先は内容に触れます。ご注意願います。


タイトルが「ジェノサイド」大量殺戮であり、さまざまな事例が盛り込まれていて、人間の残酷さを描いている。
同種同士でジェノサイドを行う生き物は、「ヒト」だけなのだ。
そう言うことが書かれている「ハイズマン・レポート」は、とても読み応えがあり、本当に科学者が書いたこういうものがあるのかと思えたほどだ。(著者の創作らしい!)
「ヒト」の進化の歴史は、ジェノサイドの繰り返しで、他を殺して生き残る強い種族が原生人類だとすると、その人類の中に必ずそういった残酷な「遺伝子」が盛り込まれているのか。
地球上で一番の害虫、ヒトの進化の過程など人類学・・或いは生物学、薬学などあれこれと目いっぱい科学方面の専門的なことがたくさん書かれていて、難しくもあったが、平たく説明されているので何となく分かった気にもなり、とても知的に刺激を受けたような気になって楽しかった。
新生人類の知能の描き方はリアリティがあってビックリした。「複雑な全体をとっさに理解する」とは、それがムリだということすらわからない自分には、よくわからなかったけれど、ルーベンスという超・秀才の解説によって噛み砕かれていて理解しやすくなっていて釣りこまれた。私達の言語が「1次元」というくだりには、本当に面食らってしまった。
このルーベンスの登場で、かなり物語の「全体像」がはっきりとさせられた。アメリカ大統領の観察も面白かった。

そして本書の一番の魅力は、研人と正勲とうい二人の若者の滅私奉公的な活躍ぶりだ。
研人は、そもそも情熱もなく惰性のように研究して「父親のようなつまらない科学者になるに違いない」将来を、あきらめたような生活を送っている。
そんな研人が父親の遺言を受け、「GIFT」という謎のソフトに触れ、正勲という強力な助っ人を得て変わっていく。
若い二人の「病気の子どもを助けたい」という純粋な情熱と、科学者としてのサガのようなものとの相乗効果。それが生み出す、爽やかで清清しいパワーに胸が熱くなった。タイムリミットがあるので余計に緊迫感があって、ますます一気に読んだ。

またアフリカという国の現状、今日日ニュースでも見かけるコンゴ共和国の内戦の原因や民族紛争のあらましをザクッと解説してあるのも読み応えがあり、とても考えさせられた。
ピグミーという呼び名が蔑称であるということや、彼らは人間以下の扱いで、時には食べられてしまう存在だとか・・・知らなかったし、驚き!でもその登場するピグミー人がジャングルの中で生き生きと活躍したり、彼らの生活習慣に触れるなども新鮮な驚きがあった。少年兵の問題はやはり胸に重く響いたし、どこを取っても興味深く読んだ。
コンゴのジャングルでの4人の傭兵達のやり取りや逃亡劇、ナイジェル・ピアーストのコミュニケーションなどもはらはらさせられて読まされた。

テーマは「ジェノサイド」なのかもしれない。
でも、私はもうひとつのテーマは「ギフト」だと思う。
新生人類から現生人類への、逆に現生人類から新生人類への。
正勲から研人への・・二人の若者から病気の子どもたちへの。
そして、父親から息子への。
研人の父親が研人に託した「想い」。それを受け取り、父親を思う研人。
深い感動があった。おススメ!


※一度目に読み終えたとき、驚愕の面白さ!と思い、2回立て続けに読みました。
※そんなに頭がいい新生人類の思考なら、これほど危ない目に会う前に脱出できたのでは?
※そして、もっと早く「クスリ」を開発できるのでは?
※新生人類の出現はこうも簡単に国家的ブレインたちに信じられるものか?
などなど、2度目の読書では、ちょこっと突っ込みたくなる部分もありました。
でも、それでも一気に読まされるだけの面白さがあって、最後はやっぱり泣かされました。





スポンサーサイト
11:26 : [本・タイトル]さ行トラックバック(2)  コメント(10)
shortさん、こんばんは。
なおぞうも読みました。すんごく面白かったですv

2011/04/27(水) 20:56:59 | なおぞう │ URL | [編集]

なおぞうさん、読みました?
面白かったね~!
こんなに面白い本読むと後の本が困るかも(笑)
壮大でゾクゾクして素晴らしかったですね。
もっと評判になってもいいのにね。

2011/04/29(金) 09:39:50 | short │ URL | [編集]

今年一番の本

2011/06/11(土) 02:57:09 | お名前は? │ URL | [編集]

> 今年一番の本

そうですか(*^_^*)
私も現時点では同感です!

2011/06/13(月) 11:04:28 | short │ URL | [編集]

ねーさま。ようやくさきほど読み終えました。
4日あまりかかりました。。。
正直なところ内容の重さもあって
ふへ~~~と疲れましたが
そんな壮大なお話久々だったので妙な充実感もあったりして(*^^)v

そうそう!ねーさまがおっしゃる通りハイズマンレポートってやたら信憑性があったので
実際にあるものかと思い
ついついNET検索しちまいました。
するとこの本しかHITせず^^;
高野さんの創作なのだなと思い 改めてスゴイ@@と思いましたね。
私が思ったのは
今の日本の首相にアキリがなってくれ!と思ったよ(笑)
あ、エマでもいいけどね(爆)

2011/06/21(火) 14:46:40 | らぴ~ │ URL | [編集]

らぴ~♪
読み終わって真っ先に来てくれたのね~ありがとう!
お返事が遅くなってゴメンね!(^_^;)

重い内容の部分、きっとらぴ~は苦手だろうなぁって思ったんだけど・・
最後はホッとしてもらえたんじゃないでしょうか!?
結局、「新生人類」っていうのは「ミュータント」ってやつなのね。
「新生人類」と「現生人類」は、共存できないって、考えてみたら怖いよね。
だって、今の人間だって、大昔には「新生人類」であり「ミュータント」だったんだものね。
なーんて!(笑)いろいろと考えさせられたし、刺激を受けましたわ。
うん、私も「ハイズマンレポート」検索した(笑)
本当に高野さんが学会で発表したらいいのに~~(笑)
そうそう、アキリが総理大臣に!
それがいいよね~!!きっと名案を次々に出して、賢い政治をしてくれるんじゃないかなぁ(*^_^*)


2011/06/24(金) 23:08:27 | short │ URL | [編集]

今までの中で最高
何回読んでも飽きない!

この本で高野さんの大ファンになったよ

2011/08/21(日) 13:18:30 | とかちか │ URL | [編集]

とかちかさん
コメントありがとうございます!
本当に面白かったですね(*^_^*)
私は2回読みましたが、とかちかさんは何度も読んでおられるんですね!
それほど面白かったですよね!
次作も期待します♪

2011/08/29(月) 10:41:43 | short │ URL | [編集]

私も読みました~。
民族紛争、大量虐殺、子供の兵士とか、人間同士の殺し合いの愚かさを考えさせられましたね。

私はすっかり違う方向で期待していたので、あらあらそっち?って。(爆)
むしゃむしゃと兵士たちが食べられたりする、そっち系を想像していたので。
私、そういう化け物話好きだし、それはそれはもうすごい期待値上がりまくってたんですよ。
なので、ああ、そうか、って。

バーンズ大統領がどうしてもあの大統領に重なって、そういうこと?って想像が膨らんでいきました。
私もこの後ハイズマンレポート検索するつもりだったんですよ~。(笑)
創作なのか。よく出来たストーリーですよね。
でも私は高野さんの小説は、ちょっと甘い方が好きなんですけどね。「6時間後に君は死ぬ」とか「夢のカルテ」なんてうっとりしました。

2011/10/19(水) 17:24:14 | じゃじゃまま │ URL | [編集]

じゃじゃままさんコメントありがとうございます!
読まれましたか!!
お疲れ様です!(笑)
でも、じゃじゃままさんの感想拝読したら・・・
あああ~~★×3!!
残念~~~!!・・・みたいな(笑)

別の方向を期待されましたか。
なんかそういう時って、ちょっとガッカリしちゃいますもんね。

>そういう化け物話好きだし

そうですよね~~グエムル系の・・・(笑)

>むしゃむしゃと兵士たちが食べられたりする、

やっぱりグエムル系の・・・(笑)

私は逆に、映画だとそれもいいけど、本では好きじゃないかもです。
いや、面白ければいいんだけど。

>「6時間後に君は死ぬ」とか「夢のカルテ」

どっちも未読です。
「13階段」がめちゃくちゃ好きだったけど、これはきっと
じゃじゃままさん的にはイマイチかもしれません・・・。
(だいぶ、じゃじゃままさんの趣味をつかんできたぞ!笑)

2011/10/20(木) 12:21:16 | short │ URL | [編集]

コメントの投稿











 管理者にだけ表示を許可

トラックバック

この記事のトラックバックURL

人類絶滅の可能性アフリカに新種の生物出現  まずは来訪記念にどうかひとつ!  人気blogランキング【あらすじ】急死したはずの父親から送られてきた一通のメール。それがすべての発端だった。創薬化学を専攻する大学院生・古賀研人は、その不可解な遺書を手掛かりに、...

2011/06/08(水) 10:21:31 | じゅずじの旦那

高野和明 著 

2011/11/08(火) 11:08:36 | Akira's VOICE