【本】ポリティコン/桐野夏生

4163299009ポリティコン 上
桐野 夏生
文藝春秋 2011-02-15

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4163299602ポリティコン 下
桐野 夏生
文藝春秋 2011-02-15

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大正時代東北の寒村に、トルストイの思想に共感を得た芸術家たちが創ったユートピア「唯腕村(いわんむら)」で繰り広げられる愛憎劇。
プロローグでマヤの母親失踪のくだり
第1部では東一が主人公、第2部ではマヤが主人公・・という展開。
プロローグからずっとマヤが主人公かと思っていたので、ちょっと拍子抜けした(^_^;)

今なお、なんとか残っている唯腕村は、すでに現代社会の縮図ともいえるような問題だらけのコミューンになっていました。
少子高齢化、貧困、若者のふるさと離れ、過疎、後継者不足、などなど。
初代、唯腕村創設者の孫に当たる東一は、後継者として村でしぶとく生き抜く決意をしていますが、いつしか村を私物化し、新しく入村してきた謎の美少女を自分のものにするために権威を振りかざします。

とにもかくにも主人公の東一が、ゲスな男なのです。反吐が出るぐらい・・・。
それでも、なんだかよくわからないパワーに溢れていて、彼のやることから目が離せません。
「トルストイアン」という人々が居るそうで・・。トルストイの思想に心酔している人たちのことらしいです。
この辺のことは、私は偶然にも直前に、映画「終着駅ートルストイ最後の旅」を見ていたので、結構分かった気がします。映画の中に登場するコミューン、そう言うものを目指して創られた村だったんだろうなぁ。
でも、たとえば、この謎の美少女マヤなどは、行くところがなくて仕方がなくここに住むことになったのですが、その暮らしのあまりにも貧乏な様子に、本当にここをユートピア(理想郷)と呼んで良い訳がないと確信。
次々と理想郷の実態が明らかになって行く過程など、グイグイと読まされました。
内部は男女がただれた関係をそこかしこに展開している・・などということも、結局「理想」ってそう言うことなのか・・と苦々しい苦笑が付いて出る感じです。
村に残って村を盛り立てて行きたいという、最初の東一の気持ちに、なんとなーく胡散臭さを感じたんだけど、どんどん東一の本性も明らかになって来て、本当に虫唾が走るような男だと思いました。

桐野さんらしく、結局この男は「破滅」行きの列車に乗ったのだ、、乗りたくないのに知らずに乗ってしまったんだ・・と思いながら読みました。その予想は・・・外れたような当たったような。

この続編もあるような、ないような。

とにかく、よくわからないパワー渦巻く吸引力のある作品ではありました。東一、暴走列車もいいところ。どこまで暴走するのかをじっくり見てやろうじゃないかという気にさせられたのでした。

桐野さんはどこかのコメントで「唯椀村と東一を愛してください」って書いていたけど、東一を、不思議な引力がある男・・と思いこそすれ、愛することは・・ムリかなー。
マヤも好きにはなれないキャラクターだったし、登場人物に共感する気持ちはイマイチ沸かなかったと思う。
第一部の終わりから第二部への転換が、少し唐突な感じがして・・・第一部のそのあとはどうなったのか、そこが知りたかったけれど、個人的にはそこで東一は「ジ・エンド」だと思った。だから第二部は意外。何があったんだろう、それも気になる。

大長編の上下巻だけど、個人的にもうちょっと書き込んでもらっても良かったかなーと思いました。
読者は贅沢でわがまま、ゴメンナサイ。

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