【本】地のはてから/乃南アサ

4062165937地のはてから(上) (100周年書き下ろし)
乃南 アサ
講談社 2010-11-16

by G-Tools

4062165945地のはてから(下) (100周年書き下ろし)
乃南 アサ
講談社 2010-11-16

by G-Tools



平凡な農家次男坊の妻、つねは、大正初期、夫に言われるままに夜逃げ同然に、ふるさと福島を後にして、北海道知床はウトロに開拓民として入植した。政府が掲げる入植心得とはまるで違った過酷な北海道の大自然の前に、なすところもなく途方にくれるような暮らしの中で、懸命に家族を守るつね。
物語は、その家族の姿を、つねの娘とわの視点で描く。
幼いうちから口減らしのために奉公に出されたとわの、賢く誠実でたくましい生き方。やがてとわも家庭を持ち、つねがそうしたように、母として家族を必死に守るように生き抜くのだが、そのとわにもやはり厳しい人生があるのだった・・・。


「言われているほど寒さは厳しくない」「想像するほど開墾は難しくない」「交通の便もよくなってきている」「子どもの教育も問題ない」「ちょっと働けば大金持ちになれる」などなど、政府の入植心得を読んで見ると、良くまぁこれだけ嘘八百書けるな~と思うぐらい、耳障りのいい事ばっかり書いてあります。
実際に彼らが体験させられた北海道ウトロでの暮らしは、過酷を通り越して悲惨としかいえません。日の光さえも入らない原生林、伐木でやっと開いても、あたり一面のクマザサはとても簡単に畑になるものではなく、ようやくの思いで畑にして、すずめの涙ほどの収穫を楽しみにするも、毎年沸いて作物を根こそぎ食べていくバッタの大群、教育どころか道はなく、井戸も電気もない暮らし。冬は凍えるばかりのその地で、一家は瞬く間に困窮していきます。
口減らしに出されたとわの奉公先は小樽で、とわは今まで見た事がない都会暮らしをします。大きな町、大きな道、たくさんの人がいて、井戸があり、電気がある。子守として滅多に休みもない生活は、まだまだ幼いとわにはつらいものですが、それでも、ウトロに暮らす家族を思い健気に耐えては、仕送りをします。
「二度と帰ってくるな」と、とわを送り出したつね。そんな母の言葉をうらみながらも、家族を思うとわの気持ちに泣かされることしばしば。
結局、つねにしてもとわにしても、家族や生活を守ることに必死の人生です。趣味だの、余暇だの、そんなことは思う暇すらありません。蛇口を回せば水が出る、つまみを回せばガスが出る、スイッチひとつで灯りがともる、車を使えるし、クルマがないとしても、道はあるのが当たり前、道がない不便なんて思ったこともない・・・
こんな生活をしながらストレスが溜まるだの悩みがあるだの・・・、心の底から恥かしくなります。
全編とおして、母つねと娘とわの、お互いを思い合う気持ちに感動したのですが、つねづね、母と娘の物語には複雑な感情を持ち、いろんなことを思わされてしまう私も、この二人のシンプルな愛情には、ただ胸が詰まりました。
とわの人生も波乱万丈です。何度も何度も泣けてきた。やっと人並みになったように見えても、戦争があったり火事に合ったり、かんなん辛苦とはこのことか・・・・が、どこまでも逞しく家族を守りぬくとわの生き方に、心から感動しました。おススメです。



●最後のほうが駆け足で、たとえばタマヨのことなど、あまりにもあっさりと過ぎていったのでビックリしました。もうちょっと書いてあげてほしかった。ある意味余計に切なかったです。
●三吉・・・ああいう結末は予想していなかったけど、私が三吉なら私だって日本軍のために兵隊になるなんて、真っ平ゴメンと思う。
●この物語のなかで一番よかったー!と思ったのは、つねの、いわゆるなさぬ仲の長男が、つねを大事にしてくれたこと、そしてそのお嫁さんが、とてもいい性格の人だったこと。つねが老後、今までで一番幸せ(と言うのは言い過ぎかもしれないけど)に生きていかれると思うと、心からホッとする。




数年前に「ロビンソンの末裔」(開高健・著)を読んだのですが、そのときも同じ衝撃を受けました。
その自分の読書感想に、「ワイルド・ソウル」(垣根涼介)に言及していたんですが、
どちらにも共通して言えることは、政府が国民をだまくらかしているような事実があったということに驚いたということ。
久しぶりにまた読んでみたくなりました。
ロビンソンの末裔 (新潮文庫 か 5-3)
ロビンソンの末裔 (新潮文庫 か 5-3)開高 健

新潮社 1973-01
売り上げランキング : 394823


Amazonで詳しく見る
by G-Tools


4101329737ワイルド・ソウル〈上〉 (新潮文庫)
垣根 涼介
新潮社 2009-10-28

by G-Tools

ワイルド・ソウル〈下〉 (新潮文庫)
ワイルド・ソウル〈下〉 (新潮文庫)垣根 涼介

新潮社 2009-10-28
売り上げランキング : 91331


Amazonで詳しく見る
by G-Tools





スポンサーサイト
13:49 : [本・タイトル]た行トラックバック(1)  コメント(6)
書店で見かけて、気になってました。久々の長編ですよね~図書館で予約しょうか。
感動できる本なんですね。やっぱ読みたいわ。

2011/01/28(金) 09:46:50 | あさみ │ URL | [編集]

あさみさん コメントありがとうございます(*^_^*)

よかったですよーこれ!
「風紋」「晩鐘」ほどではないけど、私としてはその次ぐらいに来るかな。
方言がちょっと読みづらいですね。
★×4か、4,5って感じですかね。
「国銅」みたいな、そこまでは行かないです。

2011/01/31(月) 10:42:18 | short │ URL | [編集]

shortさんのこの感想を読んで、ずっと読もうと思っていて、ようやく読みました~。
すごく良かった!
普段だったらおそらく手に取らなかったと思うので、shortさんに感謝です~。
「半分の月」も良かったです。

2011/07/03(日) 22:27:46 | りつこ │ URL | [編集]

りつこさん、いらっしゃいませ(*^_^*)
なんと嬉しいお言葉を・・!!
ブログに感想を書いていて、これ以上嬉しいコメントはありません。
ありがとうございます。
乃南さん、あまり読まれないのですね。
「風紋」「晩鐘」あたりはいかがでしょうか?
「半分の月」いつの間にか読了されていたんですね!!
私も読まねば~~!
りつこさんの感想拝読して、原作も良いんだなぁ~~と、嬉しくなりました(*^_^*)


2011/07/05(火) 11:06:07 | short │ URL | [編集]

私もやっと回ってきたので読みました。
shortさん同様、垣根さんの作品を思い出しました。
私なんて、たとえば庭掃除や大掃除で頑固な汚れ落とす、とかそんな程度のことでも途中で途方に暮れて嫌になっちゃって投げ出すのに、開拓なんて途方に暮れまくりますよ。

でももしも自分がその時代に生きていたら、生き抜くために必死で働くんだろうなって。
だからとわやつねの強さ、逞しさに賞賛の嵐でした。

作四郎のようなバカ亭主に意見することのできない時代かもしれないけど、ちょっとあの夫婦にはイライラしましたけどね。でもつねも貧乏くじ亭主だけど、強い。
とわはもっと強いけど。

三吉との再会はがっかりでしたね。でもああいうオチだからこそ、すっぱり諦めもつくってもんで。
とわはどちらが心の幸せだったでしょうか。三吉と駆け落ちして、森の中で暮らすのと、心を置いたままの松二郎との暮らしでは。

とわがいたら三吉もそんな姿にはならなかったでしょうし。

私も栗林の長男がつねを大事にしてくれたのは嬉しかったです。義理の仲とはいえ、昔の日本は家族を大事にしてたのが分かります。

小樽の奉公時代の話も好きなんですけど、あのサヨちゃんの後釜の女の子が奥様に見つかって言い合うところ、すっきりしちゃって。

上下巻ですけど、読みやすかったですね。

2011/10/26(水) 11:36:34 | じゃじゃまま │ URL | [編集]

じゃじゃままさん、コメントありがとうございます!
読まれたんですね~
上下2巻あるけど、そんなボリューム感は無いですよね、なぜか(笑)
とわもつねもすごいですよね
今こうして、ちょっとでも寒くなってきたら「はやく暖房を出さないと!!」と思うのに(^_^;)
考えられません~~~私も。

三吉、本当に残念だったけど・・・・
うーん、どっちが幸せでしょう。
三吉と暮らす道を選んでも苦労と後悔が待っていたかもしれませんよね。
苦労は間違いなく10倍ぐらいあっただろうし、いや、100倍か。

つねの晩年が穏やかで本当によかったです。
それが何より。
じゃじゃままさんがおっしゃるように、確たるハッピーエンドじゃないけど
なんだか心が温まる、休まるようなラストでした。

2011/10/26(水) 18:16:46 | short │ URL | [編集]

コメントの投稿











 管理者にだけ表示を許可

トラックバック

この記事のトラックバックURL

地のはてから(上) (100周年書き下ろし) 作者: 乃南アサ 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2010/11/16 メディア: 単行本 クリック: 1回 この商品を含むブログ (3件) を見る 地のはてから(下) (100周年書き下ろし) 作者: 乃南アサ 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2010/1

2011/07/03(日) 22:28:17 | りつこの読書メモ