愛されない子/トリイ・ヘイデン

4152081961愛されない子―絶望したある生徒の物語
トリイ ヘイデン Torey L. Hayden 入江 真佐子
早川書房 1998-10

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続けて、トリイ・ヘイデンを読みました。
本当に中毒か?と思うぐらい読んでしまった。
何よりも作り事ではない真実の迫力も魅力だけど、トリイの文章力の高さに参っています。すごく読みやすく整然とした文章。飾り気のない淡々とした描写の中に、深い愛情が見えて虜になります。

今回は、トリイが結婚直前、イギリスに永住権を確保しようとして、ビザが手違いなどで下りず、アメリカを中々出られない、その間に頼み込まれて受け持った特殊学級での出来事です。

ダーキーという精神分裂症の男の子と、レスリーと言うトイレットトレーニングも出来てない重い精神遅滞の女の子、そして注意力散漫で暴力傾向の女の子マリアナの3人を受け持つことになったのだけど、そこにアイルランド紛争で傷ついた姉妹、ジェラルディンとシェモーナ、従兄弟のシェイミーが加わりトリイひとりで切り盛りするには限界となったとき、思わぬ助手の申し出があった。
それはレスリーの母親のラドブルック。
彼女は上手く我が子とかかわりを持てないばかりか、対人関係が確立できずに辛い気持ちを持っていた上、家庭での立場も良いものではなく、お酒に溺れては誰とでも寝てしまうような素行で有名だった。
彼女は結局、トリイの「もうひとりの生徒」として(肩書きは「助手」)クラスに入ることになる。
子供だけではなく大人に対しても同じような懐の深さで対するトリイ。しかも、その心情や状態の刻々と変わる変化も、これまた見事な筆運びで描かれていて、またしてもページをめくる手が止まらない。
彼女がなぜ人と喋るのが苦手なのか、その理由や、彼女が抱える過去の傷など読みすすめるほどに痛々しさで一杯になった。
完全武装で人を寄せ付けないでいたラドブルックも次第に変化してゆく。そこにやはり得がたいこのシリーズの魅力があります。
それと今回「アイルランドチーム(隊)」と呼ばれる3人が印象的。彼らの持つ悲しみがまた凄まじい。ふるさとが紛争でメチャクチャになり親や兄弟が殺されて平気でいられないとは思う。哀しい話で胸が塞ぐ思いがした。
中でも圧倒的な憎しみを持つジェラルディン。この子の精神構造の凄まじさは想像を越えるもので、これこそ、フィクションでは生み出せないキャラクターだと思う。誰が思いつくのだろう、こんなにも深い悲しみと憎しみを持つ心を。痛々しくてたまらなかった。
本当に大変な一年だということがよく分かり「最後の日」がより感動を持って迫る。
その後の顛末の書かれた「エピローグ」がまた良かった。でも、ジェラルディンだけは…。
どの子も幸せになって欲しいと思う。
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21:58 : [本・タイトル]あ行トラックバック(0)  コメント(2)
おじゃまします。
ここ3日ほどで トリイ・ヘイデン7冊立て続けに読んだものです。

どの本にも 彼女の愛情あふれる強さ、子供たちの言葉 にひたすら涙しました。

ジェラルディンのことは とっても切ないですね。

他の本からなのですが、村上春樹訳「心臓を貫かれて」というノンフィクションの中に

人はあまりに傷つきすぎると その傷と共にしか生きていけなくなってしまう。というような箇所がありました。

できるならば、より多くの人が傷つかない子供として過ごせるように、そうして、トリイ先生のようにいい先生にめぐりあえますようにと そして私も少しでも人に対する愛情を持てる人間でいて 少しでもいい世の中になることを祈るばかりです。

2009/06/10(水) 13:36:24 | (==) │ URL | [編集]

こんにちは、(==) さん、コメントありがとうございます1
3日で7冊!ハードでしたね。
だけど、次々に読んでしまうと言う、そのお気持ち分かります。
もっともっと読みたくなるんですよね?
トリイの子どもたち、印象的です。
私が一番好きなのは、「ヴィーナスという子」かな。
「くつの日」というのが、ものすごく感動的だったんです。
ものすごく心の優しいロリと言う少女の事も印象的です。
どの本も期待を裏切らず、読んでよかった!と思ったものばかりです。
また、ノンフィクションを読みたいんですが、もう書かれないのか・・・
是非とも読みたいですね・・・!

2009/06/11(木) 15:47:00 | short │ URL | [編集]

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