【本】卵をめぐる祖父の戦争/デイヴィッド・ベニオフ

4150018383卵をめぐる祖父の戦争 ((ハヤカワ・ポケット・ミステリ1838))
デイヴィッド・ベニオフ 田口俊樹
早川書房 2010-08-06

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新年最初の読書はこちら「卵をめぐる祖父の戦争」です。
なんとなく愉快そうなタイトルです。
作家である著者が、自分の祖父の戦争体験を聞いて本にした・・と言う形です。
語り口が「おじいさん」の一人称なので「わし」となっていて、軽妙でユーモラスなので、なんだか楽しいコメディなのかと思ってしまったのですが、れっきとした戦時中の体験談。それもかなり悲惨で過酷。タイトルからは想像もできません。

舞台はドイツ占領下のロシアのピーテル(レニングラードの愛称)、17歳の「わし(レフ)」はあることがきっかけで軍部に捕まってしまう。同じく軍隊からの脱走兵として逮捕されていたコーリャとともに、ある指令を受ける。死刑を免れるためにふたりはその指令を果たすために街に出るのであった・・・。

この「指令」と言うのは、軍の大佐の娘が結婚するときにどうしても必要なケーキを焼くための卵を1ダース集めると言うもの。卵1ダースで命が助かるなら軽いもの・・と思ってしまうんだけど、この時代のロシアの町全体はとてつもなく飢えているのです。卵どころか日々の食糧さえも満足に入手できず、ひたすら人々は空腹をもてあます毎日。どこをどう探しても卵なんてない。犬や猫も食料になってしまうほどなのですから。あるときは自分たちも「食糧」になるかと言う危険に見舞われたりもします。
ふたりは意を決して、ドイツ軍の陣地に乗り込むのです。卵のために・・。

この「卵探し」の間にふたりが残酷で陰惨な場面を見聞きしたり、過酷で苛烈な体験をしたり・・。
タイトルや文体から受ける軽妙でユーモラスなイメージとあまりにもギャップのある内容に呆然としてしまいます。「わし」レフが一方的にコーリャを敬遠していたのが、だんだんと友情を感じ始め、ふたりの距離が近づいていくと物語にどんどんひきつけられました。
こんなにも命がけで卵を探すなんて・・あまりのばからしさ。滑稽です。
命と卵・・それがどうやって天秤ばかりに乗るのか。戦争と言う狂気がそうさせるのだと、滑稽であればあるほど、その狂気が際立ちました。
命よりも重いものはないはずなのに、卵よりも軽々しく扱われる。それが無性に悲しくて切ない。だけど滑稽で・・・。
そしてそんな中でも、彼らがちゃんとたくましく、ミッションの遂行とともに成長していく姿がとても印象的でした。心に残る物語でした。

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2011/06/13(月) 00:02:09 | 笑う学生の生活