【本】天才 勝新太郎

4166607359天才 勝新太郎 (文春新書)
春日 太一
文藝春秋 2010-01

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この本に興味を持ったきっかけは、先日読んだ雑誌「文藝春秋」10月号に、この本の著者のエッセイっていうのか載っていたのです。ちょうど明石家さんまさんがやってたテレビの番組でも、勝新太郎のことが取り上げられていて、それがとても面白くて。
偶然にもあっちからもこっちからも「勝新太郎」だったので、「文藝春秋」を興味深く読みました。
そこには黒澤明監督「影武者」を、勝新太郎が降板したときの顛末の真相・・みたいなのが書かれていたんです。

影武者の勝新降板劇は、勝新が自分の姿を確認するために、自分のビデオカメラを現場に持ち込み、黒澤監督がそれを嫌い、両者が対立して挙句に勝新太郎を黒澤監督がおろした・・と言うことになっているのだそうですが・・

実は、当時の力関係は、明らかに勝新太郎が上だったというのです。
黒澤監督はその頃はもう「ピークを過ぎ、過去になろうとしている監督」みたいな感じだったらしい。
逆に、勝新は乗りに乗ってて、役者としてだけではなく、自ら映像を作り上げていく才能を開花させてたみたい。
偶然こそが完全・・・という理想の基に、計算された芝居じゃなくて、即興によって映画を作り、結果かなりのヒット作品を生んでは(「座頭市」や「子連れ狼」(プロデュース))自社映画がヒットしない東宝の支柱的存在だったとのこと。
だから、東宝は黒澤監督よりも勝新に重きを置いてたらしい。
「影武者」の出演陣も勝新の人脈が大きく影響しているそうです。
さんまの番組なんかでも、その人物を見ていると魅力的だったんだなぁと思えるもんね。他の役者さんたちにも慕われてたんだろうなと思う。

黒澤監督も「用心棒」や「椿三十郎」のころは、俳優やスタッフの意見を積極的に取りいれて、現場でリハーサルを重ねて映画をじっくり作り上げていくと言う手法だったらしいけど、ハリウッドに参加??してから変わったみたい。
ハリウッドでは、予算とスケジュールにとても忠実であらねばならなかったらしく、黒澤監督はそれで痛い目をみたようで(トラトラトラ)、「影武者」もハリウッドが出資していたので、どうしてもハリウッド式でやる必要があったと。
綿密に計算された完璧な脚本コンテで、そのとおりにやるというスタイルの監督に、あれこれアイデアや口を出してくる勝新は疎ましい存在だった。
勝新はそんな黒澤監督を見限ったんだそうです。
で、現場にビデオカメラを持ち込んだ。
黒澤監督ここぞとばかりに激怒。呆れる勝新は現場を出て行く。
黒澤監督それで勝新をクビに。(クビにするタイミングを狙っていた)
勝新は戻りたかったそうですが、許されず。
周知のごとく仲代達也に交代して撮られた影武者はカンヌでグランプリ受賞。黒澤監督は再び脚光を浴び、そして勝新はわがままな俳優と言うレッテルとイメージで映画製作の第一線を退く・・・というオチになるとのこと。

書いたのが時代劇研究家 春日太一氏。


結構私が持ってるイメージとは違う勝新太郎さんの姿があって、ちょっとした驚きと感動がありました。


で、この本を教えていただき読んだわけです。
そこには、ますますイメージの違う勝新太郎の姿がありました。
妥協できない・・というんでしょうか。そんな一言では言い表せないでしょうが。
自分も苦しみながら「いい映画」「いい映像」を撮っていく。納得できるものを妥協せずに作る。
観客を楽しませたいという欲求と、観客をごまかしたくないという理想、自分の理想にあくまでも忠実にありたい、あらねばならないという、ストイックな姿勢は自分を追い込むだけではなく、周囲をも疲弊させていくのです。
壮絶・・その一言に尽きます。
この本を読むと、どんな大物俳優もかすんで見えるほど。

こんな俳優だったのか・・勝新太郎という人は・・・。驚き以外の何もありませんでしたね。

座頭市のイメージしかないですけど、それだって子どもだった私には泥臭すぎて、良さも魅力も分からなかったですし、「独眼流正宗」(NHK大河ドラマ)は、見たような見なかったような曖昧な記憶しかなくて、残念ながら勝新の秀吉を覚えてないです。

うーん、大河ね~・・・。見てたと思ったんだけどあまりにも記憶がないんですよね。以下個人的なこと→この時期私は長男が2歳。添い寝をしてたからかなぁ・・・あんまりテレビを見ていなかったのと、結婚した相手であるだんなが大河ドラマを見ない人だったので、それでも私は当初見続けていたんだけど、前年の「いのち」は確かに見た記憶があるのに、「独眼流」はそういえばない・・。きっとだんなとのチャンネル争いの攻防があって、負けたんだと思う・・・・それ以後大河ドラマは見ていません。同時にドラマというものを見なくなってしまいました。ま、本の感想には関係ないことですが(^_^;)
ともかく見ておれば勝新太郎さんの秀吉について語れたのになぁ。

「戦場のメリークリスマス」は劇場に行きました。
ビートタケシのやった役を、本当は勝新がやるはずだったそうで・・・。
うーん・・。見たかったなぁ。タケシは今でこそスーパースターだけど当時まだ役者としては・・・うーん・・・でしたもんね。

最後は周知のとおり病魔に侵されて亡くなってしまうわけですが、そのくだりはまるで知人の話でも聞いているように胸が痛み、涙が出ました。
こんなにもイメージと実物がかけ離れている人も珍しいでしょうね。
もっと早くこういう人だと知っていたら、もっと私も「座頭市」を見たのかも・・断言はしませんが(^_^;)。

本としてとてもすぐれた評伝で読み応えがあったと思います。
おススメ!


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16:01 : [本・タイトル]た行トラックバック(0)  コメント(4)
不知火検校がおすすめと 中村さんが 言ってました。僕は 座頭市が カツシンのイメージかなぁ。

2010/11/27(土) 11:24:12 | 坊谷津光五郎&紅匂ふ&座頭市&大宮貴三郎&村石太マン │ URL | [編集]

> 不知火検校がおすすめと 中村さんが 言ってました。僕は 座頭市が カツシンのイメージかなぁ。

いらっしゃいませ、コメントありがとうございます。
HNは勝新太郎さんの役名などですね(*^_^*)
中村さんって、ひょっとして中村努さんですか?
「不知火検校」見たくなりました!
DVD化されているのですね!すごい!

2010/11/27(土) 13:43:39 | short │ URL | [編集]

はじめまして。いつも楽しく拝見させていただいております。

「天才 勝新太郎」私も読みました。春日さんの文章がうまくてすぐ読んでしまいました。当時、勝新と黒澤明の確執はワイドショーを賑わしたものでした。

勝新が「影武者」を降板した経緯を知りたくて、この書を手に取りました。代役の仲代達也の影武者を勝新はインタビューで「失敗作だな・・・」と言ったのを鮮明に憶えています。

そして今度は「黒澤明」という人を知りたくなりました。
下記2作品を読み、特に「裸眼の映像」は素晴らしいと思いました。
しょ~とさんのご感想も聞きたいところです。お暇なとき是非読んで見て下さい。

複眼の映像―私と黒澤明 (文春文庫)
橋本 忍 (著)

黒澤明vs.ハリウッド―『トラ・トラ・トラ!』その謎のすべて (文春文庫)
田草川 弘(著)

2011/01/18(火) 10:41:45 | 播州そうめん │ URL | [編集]

播州そうめんさん
いらっしゃいませ。いつも読んでくださっているとのことありがとうございます(*^_^*)
この本、とても面白かったですね。
感想にも書きましたが、勝新さんのイメージがまるで違って見えました。
今だったらもっと理解できるかもしれない勝新の魅力・・・若い頃にはわかりませんでした。
本のおススメありがとうございます。
図書館にありましたので、今度借りてきます。
ちらっと評価も見たら、評判が良いですね。
読むのが楽しみです。ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします(*^_^*)

2011/01/19(水) 21:17:44 | short │ URL | [編集]

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