【本】64/横山秀夫

416381840564(ロクヨン)
横山 秀夫
文藝春秋 2012-10-26

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横山さんの本って久しぶりに読みました。
半分ほど読んでるようだけど「クライマーズハイ」と「出口のない海」が断然良かった記憶がありますが、この「64」はそれらに並ぶ名作と思います。
最初はとてもとっつきとっつきにくい感じがしたんだけど・・。

舞台はD県の県警察。
主人公の三上は、8ヶ月前に人事異動で刑事部から刑務部所属の広報に移動してきた。
不本意な人事に納得できず、「2年で刑事部に戻る」と強い意志を持っている。
三上が最初に手がけたのは、広報室の改革だった。めざすは広報室を「自治」。
しかし、三上の一人娘が家出をしてしまい、捜索に警察の力を借りた三上は牙を抜かれてしまったも同然。
事件記者との交渉も広報室の自治とは行かず、ひたすら警察上部の意向に沿ったものになってしまうのだった。
そんなとき、警察庁長官がD県に視察に来るので、段取りをつけるように言い渡される。
警察庁長官の目的は、ロクヨンの時効を一年後に控えて、ロクヨン事件の被害者家族への面会。
ロクヨンとは、14年前の昭和64年に起きた、少女誘拐・殺人事件だった。
三上はその視察訪問に疑惑を持つ。
はたして、隠された本当の目的とは・・・。


三上の娘の家出、そして無言電話。三上夫婦にとっては娘からの電話としか思えない。
時を同じくして、とある交通事故の匿名報道に揺れる広報部。上部からは匿名で推し進めるように言われるし、記者たちからは加害者名の開示を迫られるのだ。
ロクヨンの時効まで1年。被害者の父親はかたくなに心を閉ざし、警察庁長官の訪問を拒む。
ロクヨンのことを調べると出るわ出るわ、不可解なことが出てきて三上の刑事根性をくすぐる。
三上は刑事部に戻りたいけれど、一度刑務の仕事をすれば、刑事部からはスパイごとき扱いを受ける。刑務の、影の人事権を持つといわれる二渡と三上には浅からぬ因縁がある。

最初は戸惑ってしまった。
64と言う事件の真相を探るミステリー?・・・ではない。
警察内部のパワーバランスと確執を描く警察小説?・・・と言うのも違う。
娘の家出を含む三上の家庭の問題や、記者達との報道協定をめぐる激しいバトル、ともかくいろんな要素がてんこ盛りで、私には掴み所がないというか、何を軸に読めばいいのか良くわからいまま読みすすめた。

ところがところが・・・・・・。
後半。
怒涛の展開が待ち受けていた。
今まで混沌としていた世界が急に開ける感じ。

混沌が徐々に収まってくると、ひたすら興奮した。

ロクヨンを絡めた現在の事件。
ただでさえ緊迫感あふれる事件の渦中で、怒号が飛び交い嵐のようになる記者会見が余計に緊迫感を増す。
そこにかかわる記者達との攻防。そして「ウチの記者達」の気持ち。
泣かされた。
徐々に増す広報室内の連帯感、そして徐々に変わっていく三上の気持ち。
刑務と刑事の間で揺れ動きながらも自分の立場を明確にしていく部分にとても読み応えを感じた。
何もかも、目を離せない展開で、ページをめくる手が止まらない。

相変わらず会話も文体もタイトだから、すらーっと読んでしまうと意味を汲み取れない。
読み逃さないように気をつけてじっくりと読む。
ああ、そうだったのか。あれもこれも・・ここに帰結するのか、と言う驚き。
ミステリーだった。やっぱりミステリーだった。それも思いっきり重厚な。しびれた。

「事件」の真実にまた泣かされ、「犯人」の思惑に頭が下がる気持ちがした。
やがて出した三上の「結論」も感動した。

最初はとっつきにくかったし、宮部さんの「ソロモンの偽証」を抜いての1位に首をかしげたのだけれど、読み終えてみれば、読みづらいと感じた分、難所を攻略した達成感と充足感が大きかった。
余韻を引くのでまた読み返したくなる物語。
このミス1位も頷ける。

面白かった!!
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【映】人生の特等席

B00B2E6NWW人生の特等席 ブルーレイ&DVDセット(初回限定生産) [Blu-ray]
ワーナー・ホーム・ビデオ 2013-04-10

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劇場鑑賞

淡々とした展開で、思ったよりもドラマティックではなかったけど、飽きずに見せられたのはやっぱりイーストウッドの貫禄か。やっぱり彼自身の監督作品よりはパンチに欠けたのは否めない。ラストも「ハイハイお目出度いね」って感じだったけど、一緒に見に行った娘が面白かったようなので、それでOKです。でも「グラントリノ」みたいなのがまた見たいです!


22:38 : [映画タイトル]さ行トラックバック(0)  コメント(0)

【本】禁断の魔術/東野圭吾

4163816909禁断の魔術 ガリレオ8
東野 圭吾
文藝春秋 2012-10-13

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今回のガリレオはよかった~。
書き下ろしだからでしょうか?
「容疑者X」に並んで、印象に残るガリレオシリーズとなりました。
タイトルもいつもよく出来てますね!

「透視す(みとおす)」
ホステスに自分の仕事や名前を透視された湯川。そのホステスが後日殺されてしまう。
残された家族と、透視のからくりの切ない関係。

「曲球る(まがる)」
妻を殺されてしまった野球選手。クルマの塗装が剥げて妻の不審な行動が浮かび上がる。
妻が夫に求めていたことは・・・。

「念派る(おくる)」
双子の姉が殺された。妹にはそれが「わかった」のだ。双子の不思議なテレパシーによって。
テレパシーは存在するのか。湯川がその問題に挑む。

「猛射つ(うつ)」
政治部記者が殺された。足跡を追ううちに湯川と出身高校が同じ少年が浮かび上がってきた。湯川と接点もあると言う。いきなり壁に穴があく、いきなりバイクが炎上する。なにか湯川に関係があるのか。。



どれも力作でした。
というのは、今回、特に謎解きには重点が置かれておらず、犯人の発見逮捕の描写はあっさりしたもの。
物取りの犯行だったり、思ったとおり怪しい人物の犯行だったりと、ストレート。
でもたとえば、「透視す(みとおす)」では、死んだホステスの家庭の事情にドラマがあり読み応えがある。
ホステスは義理の母親との折り合いが悪くて、家を飛び出したのだ。
お互いに憎んでいると思わされた母子の気持ちが明らかになったとき、彼女の死が心から切なくなった。
「曲球す(まがる)」でも、野球をあきらめようとしている夫に対する妻の気持ちが分ると、そこに深く感動する。どちらも、死んでしまった被害者が、生きているものに送る「気持ち」がとても印象深い。
短編ながらも人間ドラマが濃厚に描かれていて読ませられた。
そして「猛射つ(うつ)」では、湯川が珍しく後輩に当たる少年に入れ込んでしまう。その少年のために、あわや犯罪を犯すか・・!!というところまで追い込まれるのだ。
冷静沈着な湯川が、珍しくあたふたしているようで、湯川にここまでさせる少年に拍手喝采である(笑)。
焦ってる湯川に、シリーズ中初めて「萌え」を感じた!!
とてもよかった。

今回もガリレオシリーズはラムちゃんにお借りしました。ありがとうございました(*^_^*)
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【本】虚構の道化師/東野圭吾

4163815708虚像の道化師 ガリレオ 7
東野 圭吾
文藝春秋 2012-08-10

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「幻惑す(まどわす)」
クアイの会というカルト教団の取材に行ったライターが目の前で信者の飛び降り自殺を見る。
草薙たち警察は、自殺を不審と感じ、殺人では?と疑うが、教祖は自殺した信者に触れてもないのだった。
そのからくりを湯川が見破る。

「心聴る(きこえる)」
幻聴が引き起こす自殺や事件。草薙危機一髪。湯川に草薙の姉さんが見合いを勧めているのが可笑しかった。

「偽装う(よそおう)」
湯川と草薙が友達の披露宴に行って事件に遭遇。それは、作詞家夫婦の殺人事件。発見者は娘で、湯川たちは道中ほんの少し関わりがあった「アウディの女」だった。
死んだ順番が大事、という話。

「演技る(えんじる)」
舞台演出家が殺された。ケータイの発信着信がカギになるのか。
私が同じ状態のとき、ケータイで誰かに電話するなら、アドレス帳の一番の登録者じゃなくて、たぶん、着信記録とか発信記録とかで、同じ相手にかけると思う。それが一番早いから。
この犯人の動機もまったく共感できず、後味の悪い話だったと思う。
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【本】七つの会議/池井戸潤

4532171164七つの会議
池井戸 潤
日本経済新聞出版社 2012-11-02

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空飛ぶタイヤ」から「鉄の骨」「民王」「下町ロケット」「ルーズヴェルト・ゲーム」「ロスジェネの逆襲」・・・その他・・・と読んできたけど、どれも「空飛ぶタイヤ」よりも面白いと思える作品は正直言ってなかった。なんとなくマンネリでよく似たテーマに良く似た展開。今回はタイトルからして短編集かと思って期待しなかった。
が!!
これがまぁ私的には「空飛ぶタイヤ」に次いで、と言うより遜色ないほど面白く感じた!
舞台は、東京建電というメーカー。大手電機メーカーのソニックの下請けのひとつである。
タイトルのとおり、各章それぞれいろんな会議があり、連作短編の形を取っている。
第一話は「居眠り八角」。八角というお荷物社員が上司をパワハラで訴え、それが会議に発展する。
第二話は「ねじ六奮戦記」。東京建電よりもうひとつ下請けの町工場だ。兄と妹のふたりが工場の経営について論じれば、いつでもそれが「会議」になる。
第三話は「コトブキ退社」。不倫の末に会社を辞めることになったOLが、自分の仕事を残そうと、会社に軽食コーナーを作ろうと会議に諮る。
と言う風に、一見すればそれぞれがどう繋がるのか分らない。
が、第一話の「居眠り八角」のラストでどうにも腑に落ちない、疑問が解明されないまま物語が続いていて、なんとな~~く、2話3話を読むと、その疑問の答えに近づいているのが分ってくる。
やがて現れてきたのは、池井戸さんお得意の、企業の・・いや、世の中の収益至上主義に対する反感。嫌な上司、嫌な企業を描かせればお手の物なのだろう。
第2話に登場するねじが発端のひとつである。
ねじ、小さな小さな「部品」だ。
その小さな部品がやがては巨大なトラブルを引き起こしていく、その過程がとてもスリリングに描かれていて釣り込まれた。
また、東京建電では、徹底したコストの削減を目指し、それはもう阿漕なほどなのだけど、そのために社員に対する思いやりがない。社員はまるで使い捨ての「部品」扱いだ。社員は会社の一本のねじにすぎない、そう言っているように思えた。
ねじも社員も、ちっぽけなひとつの部品が反乱を起こしているようでもあり、その符号が面白く感じたし、爽快な気分にさえなった。
「空飛ぶタイヤ」などのほかの作品にも共通するのだけれど、客に対して誠実さのない企業は、客、人のためじゃなくひたすら儲けのためにある企業は、本当に恐ろしいと思える。
「仕事は儲けのためにするのではない。人の助けになるのだ。客を大事にしない商売は滅びる」
作中人物の言葉だけれど、ずっしりと心に残った。
ラストは決してハッピーエンドと一口に言えるものではないだろう。
でも、そのほろ苦さと、やっぱり池井戸作品らしい爽快感と、絶妙のバランスだったと思う。
とても面白かった。オススメ!!


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【本】月と雷/角田光代

4120043991月と雷
角田 光代
中央公論新社 2012-07-09

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今年は結構角田さんの本をたくさん読ませていただいたなぁ。
「曽根崎心中」「ひそやかな花園」「紙の月」「かなたの子」そして本作「月と雷」なんと5冊も。
あと短編を借りたけど、結局読まずに返した本が一冊。どうしても短編集は苦手です(^^;
今まで、イマイチそこまで好きになれなかった作家だけど、私の中では「紙の月」「ひそやかな花園」「対岸の彼女」が角田作品のベスト3というところでしょうか。(コンプリートしてないんだけど)

そんな中において、最新作品のこの「月と雷」はかなりインパクトが弱いというか、パンチに欠けるというか。読んでいて巻き込まれるような感じはなかった。原点回帰というコメントがあるけれど、なんとなくわかる。「地上八階の海」とか「プラナリア」を読んだ時の気だるさというか、モヤモヤ感みたいなのがあったかもしれない。
でも、読み終えて日にちが経っても割と物語のイメージは残っている。そんな小説だった。

智という青年は、恋人と長く続かない上に、振られる時に「普通の生活ができないところが怖い」と言われてしまう。その原因を探ってみると、自分の生きて越し方に原因があったと思う。
覚の今までの人生とは・・・。
というところから始まる物語。
とてもイライラする。智のような男じゃ、私も嫌だしまた娘の彼氏や夫になられても困ると思う。
普通のことを普通にできない、その原因は母親直子と根無し草のように流れ流れてその場しのぎの生活を続けてきたことによって、「普通」ではない人格が出来上がってしまった・・というのが、読んでいるうちにわかってきて、イライラがちょっと収まってきた。
その親子が、家に来た時から自分の生活は「普通」じゃなくなってしまったと思う泰子。
やっぱりどこか「普通」とは違う考え方や感じ方を抱えている。
これから「普通」の幸せを手に入れようとした矢先に、またもや、智の登場で困ったことになってしまう。
泰子の行動もどこか不安定で、これまたハラハラというよりもイライラさせられる。
こういうふうに読者に、いや~~な感じを与えるのが、著者はお手の物だ。
なんだか腹が立ったり、ムカついたりもしながら、結局ふたりを最後には応援する気持ちにさせられてしまった。
普通、普通・・・普通であることがそんなに大事なの?という意見もあると思うけれど、私はこの本を読んで「うん、普通って大事だ」と思った。
普通に朝起きる。
普通に朝ごはんを作って食べる。
普通に洗濯や掃除など家事をする。
ある程度はサボったり散らかしたりもしながら、家のなかを快適に保つ。
晩御飯はお菓子やファストフードじゃなく(たまにはいいかも知れないけど)ちゃんとご飯を料理する。
仕事をする。家に帰る。
休みの日にはゴロゴロしたり家族でレジャーに行ったりする。
ごくごく普通の人生。
平凡極まるかもしれない。
でも、それが大事なんだ。
泰子との出会いによって、今まで漠然と普通じゃないことに慣れ親しんできた智が、少しづつでも普通の生活をできるようになったらいいと思う。ラストにはその片鱗が見えてほっとした。
主人公ふたりは、これからその平凡だけど普通の幸せを是非とも手に入れて欲しいと思ってしまった。
そんな風に思えたこの作品、インパクトは弱いと感じたけど、私にはやっぱり「地上八階の海」や「プラナリア」よりも読後感が良い作品だった。
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【本】逃走/薬丸岳

4062178834逃走
薬丸 岳
講談社 2012-10-11

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【内容】
閉店後のラーメン店で、店主が何者かに暴行され死亡した。通報により駆けつけた救急隊員に、「約束を守れなくてすまない」と声を振り絞り、被害者は息絶える。通報した若者を容疑者として始まった捜査は、早期解決が確実視されていたはずだった……。(講談社HPより

【感想】
本を返してしまい、手元にないので、記憶だけで書いています。ご了承ください。
ということで、さっそく↑のあらすじを見て、死んだ男の末後のセリフ「約束を守れなくてごめん」がもう、記憶に残ってないという・・・(^^;。
当然「約束」っていうのが何だったのかも忘れてる・・。そんなシーンあったっけ・・。(おいこら)
まぁともかく、殺人の容疑者はすぐに割り出され、事件と同時に行方をくらませた施設出身の小沢裕輔が捜索される。小沢裕輔には一緒に施設で育った実の妹恵美子がいて、彼女も独自の方向から兄を探す。
妹は兄がそんな事件をしでかしたと信じられない。
読み進めるうちに、本当に若者が犯人なのかどうか、そして動機はなんなのか・・妹目線で事件に迫っていくのだけれど、なんだかだんだんと事件の真相に対する興味が薄れていってしまった。
過去、小沢兄妹の身に降りかかった出来事が端を発していることがわかってくる。
事件がすべて解明した頃には正直申し上げて、ストーリーの平凡さにがっかりした。
「天使のナイフ」「悪党」がとても良かっただけに、ああいう作品がまた読みたいと思ってしまう。
今回、登場人物の誰にも共感ができずに、魅力的と思えるキャラもなかった。
そこにも原因があったと思う。

どうも、宮部さんの「ソロモンの偽証」があまりにも面白かったので、その後に読んだ本はイマイチ面白く感じないのです。たいへん辛口になってしまい、申し訳ありません。
10:36 : [本・タイトル]た行トラックバック(1)  コメント(0)

【映】007/スカイフォール

B00B1NYC7M007/スカイフォール 2枚組ブルーレイ&DVD (初回生産限定) [Blu-ray]
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 2013-04-03

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<ストーリー>
トルコ イスタンブール。MI6(英国情報局秘密情報部)のエージェント007ジェームズ・ボンドは、各地で潜入捜査をしているNATOの諜報部員の情報が記録されているハードドライブを強奪した敵を追跡し、その組織をあと少しのところまで追い詰める。しかし、あと一歩まで迫ったところで、先に潜入していた同僚エージェント ロンソンが傷を負ってしまう。そんな中、上司のMは非情にも敵の追跡を最優先にするよう指令を下す。後から駆け付けたアシスタントエージェント イヴと共に、敵を追跡するボンドだったが……。Amazon紹介文

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