生かされて。/イマキュレー・イリバギザ

4569656552生かされて。
イマキュレー・イリバギザ スティーヴ・アーウィン 堤江実
PHP研究所 2006-10-06

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去年「ホテル・ルワンダ」を見て衝撃を受けたけれど、この本ではそれ以上の衝撃を受けたと言ってもいいと思う。
この著者のイマキュレーという女性は、ルワンダの大虐殺の3ヶ月間を狭いトイレに6人から8人のスシ詰め状態で過ごして、生き残った数少ないツチ族のひとりなのだ。
たまたま、フツの牧師にかくまわれて、過酷ではあるけれど生き抜くことができ(飲み食いはおろか、排泄も自由に出来ない。無論声を出したり体を動かす事も殆ど出来ないのだ)のちは国連で働き、こう言う本を出すのだけれど、「ホテル・ルワンダ」以上に生々しく恐ろしい虐殺の様子が、ここにありありと描かれている。
ある日を境に突然お隣さんが、仲良しが、親友が自分を殺しにやってくる恐怖。鉈を、オノを手に惨殺にやってくる。
惨殺と言うのは生ぬるい。まさに文字通り切り刻むように殺すのだ。女性はレイプの末に。
「ホテル・ルワンダ」でも、女性はフツに捕まるぐらいなら自殺する事を選ぶと言うシーンがあったけど、ここでも著者がそのように決意するシーンがある。
国連はおろか、よその国は逃げこそすれ、助けには一切手を貸さない。
ラジオでは「ツチを殺せ。ツチが生きていた痕跡をすべて消せ」という放送がある。
フツ同士でさえ、ツチに温情を見せれば即ためらわず殺す。
何百と言う死体が何重にも積み重ねられ、真っ黒な絨毯のようにハエがたかっている。もちろん、死体が腐るにおいは当たりいったいに充満している。
本当にいったい何が人をここまでおぞましい心に駆り立てるのか・・・。


そのルワンダの虐殺が細かに書かれているだけが本書ではない。
想像もつかないような絶望の中で、自分たちの愛する家族の命を奪ったフツへの怒りに燃えるのだけど、信仰をよりどころとしてそれを乗り越えて行く姿が印象的なのです。
何不自由ない暮らしをしているときは、信仰は上滑りしがちなのだと思う。逆境の中でこそ信心は熟成され、真の高みに成長してゆく。皮肉な事だけど、この体験で著者は神の存在をより身近に感じ、そして神の助けを得てこの状況を見事に乗り越えてゆくのだ。
しかし、それは並大抵の事ではない。
フツの人たちが悪いのじゃない、彼らの心に入り込んだ悪魔が悪いのだと、理性では分かっていてもこれほどの体験の後、あっさり許すという気持ちにはなれずに苦しむ。が、結局は「許す」と・・・。そして許すことで前進して行く。自分が救われるためには許すことが肝心なのだと言う事を身をもって示してくれるのだ。
でもツチのみんなが彼女のように思うわけではない。恨む人も、復讐を実行する人もいるだろう。いま、ルワンダはどうなっているのか・・・。
イマキュレーさんが言いたい事は、ルワンダの悲劇はどこの国でも起こりうること、虐殺によって傷ついたのはヒューマニティだ。
ひとりひとりの心に宿る愛こそ、世界を救えるのだ・・・と言う事。
彼女が言う「愛」の重み。
こんな事が二度とないように・・・とは、言葉が軽すぎて言うべき言葉が見当たらないのだ。
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悪童日記/アゴタ クリストフ

4151200029悪童日記
アゴタ クリストフ Agota Kristof 堀 茂樹
早川書房 2001-05

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「大きな町」から戦禍を逃れて、「小さな町」のおばあちゃんの家に疎開した双子の兄弟の物語である。
・・・と、聞くとおばあちゃんの元で孫が愛情いっぱいに受けて、戦争の影におびえながらも、幸せな毎日を過ごし、そして戦争が終わって母親が引き取りに来ておばあちゃんと涙の別れを・・・みたいな、ほのぼの系の物語を想像するかもしれない(しないかも知れませんが)。
それが、全然違うのだ。
どこが違うかと言うと、頭から・・・。
まず、おばあちゃんは巷では夫を毒殺した「魔女」と呼ばれており、ものすごく貧しい暮らしぶりで、不衛生きわまりなく、その上に性格もひねくれている。
子どもたちにきちんと愛情を持って接するとか、教育を与えるとかいうタイプの、こちらの求めるようなおばあちゃんの姿からは著しく逸脱しているのだ。
そんなおばあちゃんの家で、双子たちはたくましくしたたかに成長してゆく。学校に行かずとも、自分たちで勉強したり、自分たちをお互いに鍛えあったりして必要な事をちゃんと身につけて行く。
不思議な事に、この生活の中からおばあちゃんとも信頼関係を築いてゆき、愛情さえ見えてくるのだ。
それらが日記のように、双子の視点で描かれて行く。
日常の些細な出来事を、淡々と語るように書かれているだけなのだけど、なぜか引き込まれて一気に読まされる。
読み終えてみれば、謎が多い。
母親とおばあちゃんの関係がどうしてこんなにこじれているのか。
兄弟の名前も知らされないままだし。
そして、そして、このラストは・・・。
どうしたって続きが読みたくなるではないか。
どうしてこの結末をこの双子が選んだのか。
続編を読めば分かるのだろうか。
22:36 : [本・タイトル]あ行トラックバック(0)  コメント(5)