2007'01.07
![]() | 茶々と秀吉 秋山 香乃 文芸社 2006-06 by G-Tools |
歴史上の人物は後年の研究や考察によって、良くも悪くもなりうるものです。今生きている人間だって、見る角度を変えれば違う面が見えるのだから、何年も何十年も、写真すらない時代に死んでしまっている人物に関してはなおの事。
秀吉は、せっかく無一物からやがては天下人へののし上がりを実現させたサクセスストーリーの主人公であるにもかかわらず、無謀な朝鮮出兵を試み失敗し、失意のうちに死んでしまい果てはお家断絶とまでなったおばかな武将?
そして、茶々はその秀吉にはべり、正妻ねねを苦しめながら秀吉の甘い汁を吸いわがままの限りを尽くした悪女?
このシリーズはそんな偏見を払拭する物語です。
前作「茶々と信長」の続編である本書、柴田勝家と於市の方の自害により、幼い妹たちと一緒に秀吉に引き取られた所から、今回の物語はスタート。
そして、周知の如く秀吉の側室となり淀城を与えられ、淀のかたと呼ばれ一世を風靡する、秀吉が死ぬまでの茶々の半生を描いてあります。
逆に言えば、ここでは茶々との秀吉の半生を描いてあるということ。
二人の心の交流がすごく丁寧に描かれていて読ませられます。
茶々が秀吉に心を開き、ふたりが心を通わせあうまでになるくだりの心理描写が丁寧で説得力があるので、ちょっとときめいてしまうほどです。
「抱くときは心も一緒に抱く(無理には抱かない)」という秀吉のせりふに、くらっとしてしまいました(笑)。
この「茶々と秀吉」では、茶々の視点から見た秀吉の心理描写によってなぜ狂気ともいえる朝鮮出兵までに至ったのか、すごく説得力に満ちた解釈がされていて、深く納得してしまいました。
茶々は聡明で洞察力もあり、人の心を思いやる気持ち、慈しみの心、そして強さ、と何もかも兼ね備えた女性で、その性質的な美点や芯の強さが余す所なく描かれ、茶々に好感を持たないではいられません。
そして、そんな茶々が思ったひと秀吉、彼にも好感を持ちます。
元来人間臭く機転が利き賢く、そして明るく豪放磊落と言う感じの秀吉は人すきがする人物だと思うけど、ひときわ魅力的に描かれているのではないでしょうか。
彼の人生が終わるとき、しみじみと涙が出ます。
露とをち露と消へにしわが身かな
なにわのことも夢のまた夢
次は「茶々と家康」ですか。これも期待大!待たれます!
![]() | 茶々と信長 秋山 香乃 文芸社 2005-02 by G-Tools |





