果つる底なき/池井戸潤

4062731797果つる底なき
池井戸 潤
講談社 2001-06

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先日大変面白く読ませていただいた「空飛ぶタイヤ」の池井戸さんの、乱歩賞受賞作品です。
内容は、
二都銀行に勤める「私」の同僚でもあり友達でもある坂本が、突然死してしまう。
アレルギーによるショック死だというのだ。
その当日の朝、私は坂本に会いいつものように雑談を交わして分かれたばかり。
しかし、坂本は別れ間際に「これは『貸し』だ」と言うなぞの言葉を残していた。
その言葉と坂本の死は関係があるのか?
坂本のパソコンのデータを調べたり顧客情報を調べてゆくうちに、私はあることに気付いてゆく。
果たして坂本の死の真相は・・・。


乱歩賞にふさわしいミステリーらしいミステリーでした。
が、どうして、アレルギーによるショック死でないといけないのとか、その辺が納得できず、別の方法でも差し支えない所が残念。

しかし、池井戸さんと言うのはなんという魅力的な主人公を作り出すのか。
「空飛ぶタイヤ」もそうでしたが、この「果つる底なき」の主人公もすごく魅力的。
ストレートにかっこよいのです。
むろん、武術に長けるとか、格闘が強いと言う類のかっこよさでもイケメンで女が寄ってくるというタイプのかっこよさでもなく、一本通ってる本筋がかっこよいのです。

じつはわたしは本当に金融関連に対して(も)弱くって、「債権」「回収」「株券」「利率」とかに対しては、全然ダメなんです。
正直良く分からない部分が結構あった。
でも、それを差し引いて人間ドラマとして見たとしても十分読ませるものがあったと思います。

もっと金融に強かったら、面白さも倍増しただろうなと思うと残念ですが。
この池井戸さんの文章とか、すごく読みやすいし性に合っているだけに残念。

その意味では「空飛ぶタイヤ」は絶品でしたよ。
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グロテスク/桐野夏生

4163219501グロテスク
桐野 夏生
文藝春秋 2003-06-27

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今さら説明の必要もないと思うけれど、実際に起きた「東電OL殺人事件」を下敷きに作られた小説のようです。
読むまでは、殺された被害者を主人公にした物語なのかと思っていたけど、実は、殺されたのはOLの彼女(本書では佐藤和恵と言う名前で登場)と、もう一人ユリエという女性の二人です。
そして本書の主人公は、そのユリエの姉。姉(名前が出てない?)の視点から一人称語りで、ユリエとの姉妹としての生い立ち、Q学園での佐藤和恵との出会い、そして事件が起きて現在までを描き、その合間にユリエの日記や、殺人犯の中国青年チャンの告白、和恵の手記などが挿入されていて事件の全容に迫ると言う形です。

あまりにも生々しいというか、実際の事件をここまでリアルに描いた「小説」も類を見ないのでは?
被害者の遺族、特にお母さんの気持ちを思うと、ここまで細部にわたって、たとえ小説とは言えフィクションとは言え、すべてを白日の下にさらしても良いんだろうか?と、、、
まぁ、「読んでおいてそれは無いだろう」と言う感じでしょうけど、しかし読みながらそう思わずにいられませんでした。

今日図書館へ行ったので、佐野眞一氏の「東電OL殺人事件」も立ち読みしてきたのだけど、前書きの部分に殺された被害者のお母さんの手紙と言うか文章が掲載されていて胸がつまりました。

ひとりの女性の心の闇と言うよりは、本当に孤独で寂しい人生を描いた小説と言う事ではものすごく心に残りますが、好きなタイプの小説ではなかったかな。本書の中で一番「小説らしい部分」はチャンの「私のやった悪いこと」と言う章ではないでしょうか。そのほかはすべて物凄く生々しかった。
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不祥事/池井戸潤

4408534617不祥事
池井戸 潤
実業之日本社 2004-08

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「空飛ぶタイヤ」つながりでkeiさんにおススメしていただきました。
長編好きなわたしも十二分に楽しめる、銀行を舞台にした連作短編集でした。
と言うのも、連作と言いながら、一話一話のつながり方が「長編」と言っても良いようなラストに向けての展開です。

主人公は、銀行の組織の中の「臨店」と言う部署に配属された相馬と、その部下の花咲舞。
以前の部署で彼女と一緒だったことから、よく知る相馬は気の強い花咲を「狂咲(くるさき)」と呼んで顔をしかめて敬遠しているのだが、どうしてどうして、この花咲が臨店として本書の中で大活躍!
臨店としてあちこちの支店に、あるときは助っ人に、またあるときは内部告発の主を探すために、派遣されるのである。
ここでは銀行の、「水清くして不魚住」と言う内部の様子が描かれていてとっても興味深い。
その中で起きるいろんな事件やトラブルを、探偵よろしく花咲舞が解決して行くのだけど、すべてにおいて及び腰で日和見な相馬とは対照的なのが面白く、また銀行幹部はまるで時代劇の「代官と越後屋」みたいな感じなのも笑える。
いわばまともすぎるような勧善懲悪だけど、花咲舞の活躍は爽快だし彼女が切る啖呵の一つ一つがカッコよく、そして彼女の言う事は非常にまともで思わず「うんそうだ!」と頷いてしまうことばかり。

銀行を舞台にしているけど、難しい金融用語も出てこず、わたしにも非常に分かりやすくサクサク楽しく読めました。
20:08 : [本・タイトル]は行トラックバック(0)  コメント(8)

プリズム/貫井徳郎

440853367Xプリズム
貫井 徳郎
実業之日本社 1999-10

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ある若い女性の小学校教諭が殺された。
その女性教師は睡眠薬入りのチョコを食べたうえ、窓を割って入ったらしい何者かに、頭部を強打されて死んだらしいのだった。
チョコを送ったのは誰か、チョコを送った人物と殺人を犯した人物は同一人物なのか?そして、なぜ、女性教師は殺されなければならなかったのか??

その謎を、受け持ちの児童たち、同僚の先生、大学時代の友達などなどそれぞれが、探って行くという連作短編集。
児童から見たら申し分の無い先生であったけれど、他人の目からはまたそれぞれに違う面が見えていたところに、タイトルの意味があるのだと思う。
こういう推理小説らしい推理小説を以前は好んで読んだのだけど、今読むとやはり不自然だったりリアリティにかけたりする部分ばかりが目に付いた。

貫井さんらしく、サクサクと読ませられはしたし、意外性のあるラストもそれなりに面白かったけど、近年の「愚行録」「空白の叫び」には及ばないと感じた。
19:37 : [本・タイトル]は行トラックバック(0)  コメント(0)