面白かった!こういうのがほんとに好みのタイプの小説です。
3人の14歳の少年の出会う前と、出会った後のことを描いてあるんですが、背景や人となりを丹念に描いているので、読み応えがあった!!
読み終えるのが惜しいとさえ思えました。
最初は誰にも好感など持てずに、それでも物語りそのものに引き付けられて読んでいたのだけど、読めば読むほどにだんだんと少年たちが魅力的に思えてきて・・・。
少年たちはぜんぜん変わらないのだけど、こっちの気持ちがだんだん少年に引き付けられていくと言う感じで、ともかくおもしろかった!
「愚行録」に続き、はまりました!
貫井さんの小説は結構読んでるけど、一番は「空白の叫び」に決まったね。2番が「愚行録」。次も期待していますよ!!
+++++あらすじ+++++
久藤美也(くどうよしや)は、その女性的な名前から小学校のときいじめにあう。中学になり、あることがきっかけでいじめた側と立場が逆転してからは、一匹狼的な存在で己の権勢をひけらかし世の中すべての凡庸なものを憎む問題児になってしまう。そこへ久藤美也が最も嫌う凡庸この上ない教師がやってきた・・・。
葛城拓馬は裕福な医者の家庭に生まれ、一見何不自由のない暮らしをしている。まれに見るような美少年でもあり、特別な存在の拓馬はいつも平常心を失わないのだが、唯一彼をいらだたせる存在は、父親の使用人宗像の一人息子の英之だった・・・。
神原尚彦は、母親に捨てられたも同然で、祖母と叔母との3人暮らし。祖母が突然病気になり、母親と久しぶりに連絡を取り合うが、尚彦の目の前で母と叔母は醜い争いを始めてしまう。姉妹であるふたりの間に何があったのか。そして、死んだと聞かされていた父親が生きていると知ると同時に、病気の祖母が死んでしまい・・・。
同じ14歳と言うことのほかには、ぜんぜんつながりのない3人。この3人のつながりが見えてきたとき、物語は3人を転落の淵に立たせます。たった14歳の少年たち。彼らが、自分たちに襲い掛かる運命の波にどう抗うのか、それとも飲み込まれてしまうのか。
+++++感想+++++
少年たちの心理描写を丹念に描いてあり、最初こそ少年たちの理屈っぽさや、年の割りに老成しすぎていることなどに鼻白んでしまう部分もあったのだけど、だんだんと彼らの気持ちに引き付けられていった。
特に印象的だったのは久藤美也。
人間が、明るさや前向きな気持ち、悪い言い方では軽さや欺瞞、偽善と言った、社会生活を送る上で良くも悪くも必要な感情をすべてそぎ落とすとこういう人物になるのではないかと言う感じがした。
ある意味ここまでシンプルな人間はいないのでは?と言うほどに達観したシンプルさがあって、最初は嫌悪感しか抱けなかった久藤に対して、だんだんとカッコよく見えてきたのが不思議だった。
久藤のほかの二人も十分な心理描写が出来てて、それぞれにものすごく感情移入していった。
久藤と逆に、かわいそうな生い立ちの神原は最初こそ同情したり、好ましく思えたりしたが、だんだんとその芯にある邪気を感じていったのもおもしろい。
少年たちが犯した罪にたいする気持ちや贖罪と更生という少年法とは切っても切れない問題に、こういう形で切り込んだのも目新しく感じた。
前編暗いし、ラストも決して爽やかといえない、それどころか後味が悪い部類に入るのかもしれない。それでも、わたしは目が潤んだ。
これからどうするの、と言う思いと、ある意味では「よかったね」と言う気持ちと、これからがんばりな!と言う気持ち、いろんな気持ちが混ざり合った不思議な感じ。
この少年たちのその後の物語も読みたい気がしたのだった。