2006'10.01
![]() | 心にナイフをしのばせて 奥野 修司 文藝春秋 2006-08 by G-Tools |
1969年、就学して間もない男子生徒が同級生に殺される。
無残にも首を切り落とされて…。
神戸の「酒鬼薔薇事件」よりも28年前に、よく似た事件が起きていたのだ。
本作は、その被害者側の姿を追ったルポルタージュ。
読めば、被害者側がどんなに苦しみながらその後の約30年を生きてこられたかが分かる。時には同じような文章が続く淡々とした描写、それはとりもなおさずその地獄から抜けられずに苦しんできたと言う事実を浮き彫りにする。
睡眠薬を常用し、殆どを寝て過ごしたお母さん、寡黙にもただひたすら堪えるだけのお父さん、殺伐とした生き地獄のような家庭で「わたしが死んだほうが良かったのだ」と思いながら生きてきた妹。(おかあさんは妹の世話すら放棄した)
その苦しみは一見徐々に薄れ、普通の社会生活ができるまでには回復するかに見える。だけど、決して、癒されてはいないのだ。
この一家に、その事件が及ぼした影響のあまりにも大きさに、読者は押し潰されそうなほど重みを感じます。
殆ど一冊、被害者家族の取材で費やされ、加害者のことはチラッとしか出てこないのがちょっと物足りない。
しかしここで明らかになった、加害者はと言うと…。
情報は少ないけど、すごいインパクトです。
少年法と言うものに守られ、厚生施設を出た後は姓も変え誰だか分からぬようにその後を生きて、なんと弁護士となり名誉ある暮らしをしていると言う。
被害者家族には、示談にて決められた700万円ほどの金額の、ほんの数パーセントの40万ほどの金額が支払われただけで、あとは知らん振りをする加害者家族。
お金の問題じゃない、もらっても手もつけたくない、と思う気持ちと、誠意を見せて謝罪してほしいという気持ちに苛まれる被害者家族。
そんな被害者のお母さんに、弁護士となった少年Aがぶつける言葉がすごい。
「お金が必要なんですか
少しぐらいだったら貸すよ
印鑑証明と実印を用意してくれ
50万円ぐらいなら準備できる
今は忙しいから一週間あとで…」
「謝ってください、一度も謝ってくれてない」
というお母さんに
「なんでおれが謝るんだ」
と言い放つ少年A。
…
言葉もない。
それが正しい司法のあり方でしょうか?
罪を償い、更正することは大事だし、すばらしいことだけど、苦しみからいつまでも(多分死ぬまで)逃れられない被害者側にたいして、これほど「のうのうと」と言う言葉が似合う生もないのではないかと思えてしまう。
犯罪加害者の更正にかける年間支出は466億円。
かたや被害者のための予算は11億円。
なんか間違ってる…と思わずにいられなかった。






