【本】はぶらし/近藤史恵

4344022416はぶらし
近藤 史恵
幻冬舎 2012-09-27

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人気だけど、初めての作家さん。
面白かった。
主人公は脚本家としてそこそこ成功している独身女性、鈴音。手持ちのマンションと、他に仕事場も持ってる。
そんな「恵まれた」人生を送っている彼女の元へ、あるとき、親しくもない高校時代の友人、水絵が頼ってやってくる。行き場のないその友人を、水絵が仕事を探すための1週間と言う期間限定で、泊めてあげることにした鈴音。
しかし水絵には幼い子どもがいたのだった。

そんな「他人」と同居することで感じるストレスや苛立ち、仕事が見つからない場合はどうなるのかと言う不安や疑問など、とても上手く描かれていて、主人公の心理が伝わってきた。

今まで自分ひとり、気ままに暮らしてきた鈴音は、家の中の自分じゃない人間の気配に疲れてしまう。たとえば、それはテレビを見る音だったり、いつもなら乾いた風呂場を使っているのに、自分が使うときにはビショビショと濡れているとか、自分の家なのにドアを開ける前にブザーを鳴らさなければならない不便とか、一見些細なこと。だけれど、そんな些細なことが重なれば結構なストレスになることは周知のことだ。
水絵は、風呂の残り湯で洗濯するのでお湯を捨てるなとか、一日入っただけでお湯を入れ替えるのはもったいないとか、家の主である鈴音に進言する。でも、それは鈴音が決めることで、鈴音がしたいようにすべきだ。なのに、鈴音は水絵の意向に沿う。
そこに加えて、仕事が見つからないのに、出て行けとはいえない鈴音の気の弱さというか、気のよさというか、優柔不断というか。でも私には鈴音は「良い人」に思えたのだけど・・・。そう言った鈴音の気性と、水絵の切羽詰ったからこそのずうずうしさ、居直り開き直りが、まったく噛みあわずに、読んでいてイライラした。
あんたがそれを言うことじゃない。筋合いじゃない!と思うことしばしば。

特に象徴的なのはタイトルにもなっている「はぶらし」。
鈴音が水絵親子にはぶらしを貸してやるのだけど、翌日水絵ははぶらしを買い、鈴音に返そうとする。しかし、返そうとしたのは、前日、自分が使ったはぶらしなのだ。。。
その心理がなんだか不気味で、その不気味さは全編通じて薄れることはなかった。


でも、人は人に「親切に」と心がけないだろうか?
昔話でも、汚い姿の老人に親切にすれば、その老人は神様だったり天使だったりして、親切にした人間に報いが訪れるだろう。だけど、実際にはそんなことはできっこないということか。
私のことで言うと、何度か、物貰いが家に訪ねてきた。お金をくださいとか。
あるいは、不幸を装った人たち??が、自分が売っている何かを買ってくれと言う。
ボランティア風の人が来た事もあった。(近所中軒並み回るようなのだがそういえば最近は全然見ない。)
でも、それは、お金を上げたり、買ってあげたりしても「あげてもよかったんだろうか??味を占めてまた来ないだろうか?私がだまされたんじゃないだろうか?」と嫌な気分になり、逆に何もしてあげずに追い返しても、結構な罪悪感を感じて当分の間、ウジウジとしてしまう。親切にしてもしなくても、どっちにしろ悶々と嫌な気分を味わってしまう。これはなぜ?いつも疑問だった。
自分に解決できない問題を持ち込まれた不快感からそう感じたのかもしれない。
だから水絵の気持ちはとても良く分かったし、また自分だったら、水絵のようにして上げられないと、逆に感心したという面もあったのだ。

物語は最後に、あっと思わされる結末になっている。
大きな驚きはないけれど、(実は映画「パシフィックハイツ」みたいな物語なのかと思ったのだった)ストンと腑に落ちる結末で、なんとなくすっきりした・・ような、しなかったような(笑)。

しかし、あんなにも執着した息子に対する態度が、やっぱり腑に落ちないと言うか?
だからこそ、この結末なのか。
なかなか印象的な物語だったと思う。

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【本】復讐/タナダユキ

4103338318復讐
タナダ ユキ
新潮社 2013-04-22

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内容(「BOOK」データベースより)
北九州の小さな町に赴任した若き中学校教師・舞子は、始業式の朝、暗い目の少年に出会う。教室で明るく優等生として振舞う彼には、ある忌まわしい記憶があった。その過去に呼応するように、置いて来たはずの秘密が少しずつあらわになっていく。人間の闇をえぐりだす緊迫サスペンス長編。


読み応えがあった。
加害者の家族、被害者の家族・・ふたつの立場にリアルに寄り添っていたように感じた。
先日読んだ「北斗」(石田衣良)では、加害者本人の気持ちが描かれていた。全然違う物語なのだけど、自分の中では関連を感じ、思い出しながら読んだ。私も知っている過去に少年が起こした有名事件の、あれやこれやとパーツを集めているように思ったのと、冒頭の導入部がイマイチ掴みどころがなかったのが残念なぐらいで、次第に釣りこまれていった。
特に、自分の双子の兄弟を殺された中学生の心情が、痛いほど伝わってきて、最後のほうは泣けた。
タイトルのとおり「復讐」の物語であり、主人公が「復讐」を思い立つまでの心情がとても説得力豊かに描かれている。そのころにはこの主人公にとても同情していたために、復讐をし遂げないでこのまま忘れて(忘れられなくても)平穏に幸せになってほしいと念じてやまなかった。
被害者家族にしても、加害者家族にしても、どちらも想像を絶する辛い境遇に身を置かれる。立ち直ることが出来ない人も多いだろう。立ち直ることが出来たとしても、それも想像を絶する経過があるだろう。
加害者本人が断罪されたとしても、だからといって亡くなった命は還らないし、被害者家族の受けた悲しみが癒されるわけではない。
ほんに憎むべきは「犯罪」だと思った。このテーマは乃南アサさんの「風紋」「晩鐘」が印象深く、それには及ばないと思うけれど、こちらも重く心に残る物語だった。
「北斗」の感想でも書いたけど、完全ノンフィクションでは書き得ない。フィクションだからこその説得力だと思う。
16:42 : [本・タイトル]は行トラックバック(0)  コメント(0)

【本】北斗/石田衣良

4087714640北斗 ある殺人者の回心
石田 衣良
集英社 2012-10-26

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内容(「BOOK」データベースより)
幼少時から両親に激しい暴力を受けて育った端爪北斗。誰にも愛されず、誰も愛せない彼は、父が病死した高校一年生の時、母に暴力を振るってしまう。児童福祉司の勧めで里親の近藤綾子と暮らし始め、北斗は初めて心身ともに安定した日々を過ごし、大学入学を果たすものの、綾子が末期癌であることが判明、綾子の里子の一人である明日実とともに懸命な看病を続ける。治癒への望みを託し、癌の治療に効くという高額な飲料水を購入していたが、医学的根拠のない詐欺であったことがわかり、綾子は失意のうちに亡くなる。飲料水の開発者への復讐を決意しそのオフィスへ向かった北斗は、開発者ではなく女性スタッフ二人を殺めてしまう。逮捕され極刑を望む北斗に、明日実は生きてほしいと涙ながらに訴えるが、北斗の心は冷え切ったままだった。事件から一年、ついに裁判が開廷する―。


感想
私の場合前半読むのが辛いと言うよりも小説として面白みを感じなかった。でも後半、裁判の部分は一転、とても読み応えを感じた。事件や人生を振り返る主人公の心理描写に圧倒された。犯した罪を償うと言うこと、反省し後悔する、改悛と言うこと、それが本当はどういうことかと考えさせられた。
死刑でいいんだと言う主人公の内面を深く深く追求する。もちろん、殺人は許されない。でも・・・。
ノンフィクションで、いろいろと殺人犯の物語を読んできたけ。ノンフィクションのほうがリアルだし重々しいと思っていた。けれどこちらは、フィクションだからこそ、ここまで殺人犯の心情を描けたと思う。
「小説」の大きな力を感じた。
11:14 : [本・タイトル]は行トラックバック(0)  コメント(0)

【本】憤死/綿谷りさ

4309021697憤死
綿矢 りさ
河出書房新社 2013-03-08

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おとな
トイレの懺悔室
憤死
人生ゲーム


「トイレの懺悔室」
小学生の子供のころに、懐いていたよそのオジサン的な存在の「親父」。親父の家に行って、「洗礼」と「懺悔(告解)」の真似事をした記憶がある。大学を出て就職し、小学校の同窓会で地元に戻ったら、当時の遊び仲間が病気の親父の面倒を見ていた。
嫌な物語だ。親父はどうなったんだろう。トイレって言うのが・・苦手で。夢に出てきそうな・・(^_^;)

「憤死」
これも幼馴染と大人になって再会する話。友達の自殺未遂を「興味がある」と言う主人公に、共感は出来なかったけれど、話を読んでいくと、まぁそれならそう思うのかもしれないな・・と言う気にさせられた。
でも、結局この主人公が、主人公なりの方法で、彼女を「好き」な気がした。嫌いと言ってはいても。
だから後味はそれほど悪くなかった。

「人生ゲーム」
これを読んだらちょっと人生ゲームをするのが怖くなるかも。
人生ゲームをする機会があるようには思えないけど・・・。

この本は幼馴染と子供のころの思い出が共通のテーマだった。どらもサクサクと面白く読めた。
23:22 : [本・タイトル]は行トラックバック(0)  コメント(0)

【本】ビッグ・ドライバー/スティーブン・キング

4167812185ビッグ・ドライバー (文春文庫)
スティーヴン キング Stephen King
文藝春秋 2013-04-10

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久しぶりにキング作品を読みました!
私はシリーズモノとか、超!!長編(「IT」とか「ダークタワーシリーズ」その他)とかも読んでなければ、短編集もあんまり読んでなくて、一時マハったんだけど、だいたい1冊程度の長編がすき。
今回のこの本は、一冊の中に「ビッグ・ドライバー」と「素晴らしき結婚生活」という中編がふたつ、入っています。

ダークタワーシリーズを一番目の「ガンスリンガー」をやっとの思いで読み、続きをさっくりと断念したのが最後のキングだったかなぁ。。という私にはちょうど良い長さだった。(短編は苦手なので)

どちらも似たテイストの物語で、ごくごく普通の中年女性が、とんでもなく恐ろしい目に合うという。
加害者(犯人)がとても怖い。そして主人公は容赦なく残酷な目に会わされる。
その容赦のなさも怖くて面白い(っていうと語弊があるけれど)のだけど、女性がどうやってその場を「クリア」していくかと言うところが見所。
弱い女性が被害にあって、強くなっていく。。。あんまり書くとネタばれになるので止めておきますが。
とにかく例によってドキドキハラハラさせられた。
中編なので、すこしあっさり気味かなとも思ったけど・・。
面白くて一気読みした。
おススメです。

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【本】ハピネス/桐野夏生

4334928692ハピネス
桐野 夏生
光文社 2013-02-07

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都会のおしゃれなマンションで3歳の娘と二人で暮らしている有紗。毎日子どもたちを通じて集まっているママ友5人グループの一人だ。何かにつけ自信がない有紗は、他のママ友とちがい、同じマンションでも賃貸住まい。だけど、自信欠如の原因はそれだけではなく、決して知られたくない秘密があったからだった。

小説としては、とても面白かった。
世の中にはいろんな人生があり、その人生にもいろんな分かれ道があり、どの道を選ぶかでまた違う人生になるんだろうなぁ・・などと思いながら読んだ。すべては「他人事」である。小説なんてどれもそうなのだけど、特にこの小説は「他人事」感が強かった。
最初はこの有紗と言う主人公の性格にいらいらしてしまう。でも、読むうちにその態度の理由が分かってきてなんとなく納得。よくよくこの主人公の過去を知ってみると、なんという哀れな人なんだろうと思えてきた。
しかし、この有紗は決定的な間違いを犯している。(後述)それだけが理由ではないが、自立心がないことからも、好感と言うものがまったく持てない。それどころかママ友の(パパたちも)誰にも好感が持てない。
有沙が仲良くしている美雨ママにしても、こういうタイプも苦手。そもそもこの○○ママと言う呼び方からして好かん!!
個人的に、彼女たちとはあまりにも環境が違うので、共感できる部分がない。有沙の「秘密」にしろ、美雨ママの「秘密」にしろ、個人的にはありえないとしか思えない。
しかし、他人事だからこそ「面白い」と思いながら読むことも出来たのかもしれない。

以下、どうしてもネタばれになるので、これから読む人はご注意ください。



















有沙の犯した間違い、それは「過去がある」と言うことではなくて、それを「黙っていた」ことだ。過去があると言うのと過去を黙っていると言うのは全然違う。もしも私が有沙の夫であれば、間違いなく腹も立つし信用できないと思うし離婚だって考えるかもしれない。私の息子の妻がもしもこんな過去を黙って結婚したのなら「息子はだまされた」と思うに違いない。失敗したことで臆病になった気持ちは分かる。でも、これは隠しておくべきことではない・・・・・などと思った。そこだけはなんだかリアルに腹が立ってしまった(^_^;)。
わが子が離婚する、そのために孫には二度と会えないかもしれないと思って泣く、夫の両親が私には不憫で仕方がなかった。(夫の父親だけが好感の持てる人物であった。)
もとは自分のせいなのに最後までそれを認めず夫のせいにしていた主人公には、最後まで反感を覚えた。夫も「どっちもどっち」なのだけど、それを「ドロー」と言う感覚がまた嫌い。

と、徹底的に登場人物が好きになれなかったけど、小説としては一揆読みの面白さがあった。ドラマになるんじゃないの??綺麗なママ友たちなんて絵面がよさそうだしスポンサーもつきそうだ。


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【本】ブラックボックス/篠田節子

4022510455ブラックボックス
篠田節子
朝日新聞出版 2013-01-04

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食の安全に大きく真正面から取り組んだ意欲作。自分が食べているものを信用できなくなる恐ろしさがあった。巻末の参考資料を見て、ますますこの物語がただのフィクションでなく、現実に起きていることなんだと慄然とした。
滅多に食べないのだが、たとえばファミレスのサラダなんかは、切り口の新鮮さを保持するために、薬液に漬けると聞いていた。家庭で調理すれば分るが、生野菜は切れば間もなく変色する。長時間サラダバーに置いておいても変色しないなんて、それだけでも不自然なことだ。
しかし、この本を読んで、外食のサラダを避ければそれでいい、スーパーのカット野菜を使わなければそれでいい、と言う問題ではないと言うことがよーくわかる。
田舎なので隣のおばちゃんが自分の畑で作った作物をくれたりする。自分の家にも小さいながら畑があり、両親が細々と季節の野菜を作ってくれる。収穫作業は手伝ったり任されたりしている。
土は当然付いているし、食べるためには落とさなければならない。洗って綺麗にして、虫がいたら取り払う。
たしかにスーパーで買うよりも手間がいるのだ。
でも、今の主婦達は(この言い方も良くないらしい。食の管理を引き受けているのが主婦だけで、子どもの健康状態に問題が起きれば母親だけの責任とされる物言いに問題があるのだ)徹底的に手間を嫌うことが多い。
消費者のニーズは、安心して食べられる安全な作物。泥がついてなくて、虫もついていない、虫食いの痕もない、見た目の美しい野菜。扱いやすく手間いらず、そのうえ栄養豊かで味もいいもの。。そして、安いもの。。。
生産側は消費者のニーズと、コストと言う両面をクリアして農作物を作らねばならない。その結果、この本に登場するようなハイテク農場が・・・いや、ハイテク農作物工場とでも言うべきファームが登場するのだ。
残留農薬や偽装表示には敏感な消費者達。でも、農薬を大量摂取した野菜と、その必要はないけれど遺伝子操作された野菜を比べたら、どちらを選ぶのだろう?
また、表示義務のない薬品も中にはあり、それらがいくつか体内に入り独自の化学反応を引き起こさないとは限らない。
自分のことだけなら危機感も低いかもしれない。しかし我が子にそんな危険な食べ物を与えることが出来るのか。
いま、子ども達に多い重篤なアレルギー反応だって、元はその母親の長年の食生活に原因があるといわれたら?
食は生きることの基本中の基本だ。
本書はそれらに対して人々が、あまりにも無知でいい加減できちんと学習しなかったことへの警告であり、わがままを求める姿勢に対して反省を促しているのだと思う。
しかし、そんなことをいっていたら何も食べられない・・。とどうしても思う。
そしてだからと言ってどうすればいいのか分らない。
無知で無力だ。
このまま自分達に都合の良いことだけを求め続ければ、やがてその要求は企業の餌食となり、今よりももっととんでもないものを食べさせられる時代が来る。そんな危機感でいっぱいになってしまった。

小説としては実は読みづらい。
まるで生協の学習会で勉強させられているような感じだった(私には)。
物語のメリハリもそれほど大きくないので、だれてしまった。主人公達にもイマイチ肩入れできない。
テーマとしてとても興味深いし、提起される問題には瞠目すべきだと思うけど、いかんせん「物語」としては面白みに欠けたと思う。
それでも、一読の価値ある作品だろう。
海外労働者の実態や、農家の現状にも言及していてその点も読み応えがあった。
以前読んだ「震える牛」も良く似た感じがしたけれど、小説としては「震える牛」のほうが面白かったかな。
11:30 : [本・タイトル]は行トラックバック(0)  コメント(0)

【本】微笑む人/貫井徳郎

4408536075微笑む人
貫井 徳郎
実業之日本社 2012-08-18

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【内容】
エリート銀行員の仁藤俊実が、意外な理由で妻子を殺害、逮捕・拘留された安治川事件。
犯人の仁藤は世間を騒がせ、ワイドショーでも連日報道された。
この事件に興味をもった小説家の「私」は、ノンフィクションとしてまとめるべく関係者の取材を始める。
周辺の人物は一様に「仁藤はいい人」と語るが、一方で冷酷な一面もあるようだ。
さらに、仁藤の元同僚、大学の同級生らが不審な死を遂げていることが判明し……。
仁藤は本当に殺人を犯しているのか、そしてその理由とは!?
(Amazon紹介ページより)


【感想】
小説家の「私」が、事件のルポルタージュを書くという形式なので、インタビューなどがあり、あるいはそのインタビューを小説風にして書いたり、と、とにかく「伝聞」が主な内容になっている。関係者の証言から、事件の真相に迫って行こうとしている。
それは良く分るのだけど、湊かなえさんの「白ゆき姫殺人事件」を読んだばかりだったので、なんとなく物語の作りが似ている気がしてならなかった。
途中までは大変面白く、この殺人犯とされる仁藤の背景が気になる。一見とても善良そうに見えて、時折垣間見せる邪悪な一面・・・。
その邪悪な一面が殺人を犯したのか、どうなのか。犯したとすればそのときの心理状態は?本当の動機は?そもそも、本性はどうだったのか。
しかし、最後まで読み終えて読者に分ったことは。

ここからネタばれ&辛口コメントです。未読の方、ファンの方はご注意ください。
















結局最後まで読んでみたら、あまりの中と半端っぷりに唖然としてしまった。
え?そこで終わり?
えええええええ???
マジで??
と、思ってしまう。
だって、何ひとつ、分らないままなんだから!
なんとなく匂わせておいて、さぁ、本当のところはどうなの?と思ったところで・・。
おわり。
うーん。そりゃないよ~~。

たまにありますよね。こういう小説。あとは読者の想像に任せます・・みたいな。
ただでさえ私はその手の結末が嫌い。
想像で・・って(^_^;)
小説家なんだから、最後まで責任持ってよ!って思わず言いたくなります。
こういうラストが好きな方もいらっしゃるでしょうが、私はダメ。

途中まで面白かっただけに残念です。

辛口ゴメンナサイ。




著者の作品のマイベストは「乱反射」「空白の叫び」「愚行録」です。
乱反射 (朝日文庫)乱反射 (朝日文庫)
貫井徳郎

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愚行録 (創元推理文庫)愚行録 (創元推理文庫)
貫井 徳郎

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空白の叫び〈下〉 (文春文庫)空白の叫び〈下〉 (文春文庫)
貫井 徳郎

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【本】舟を編む/三浦しをん

4334927769舟を編む
三浦 しをん
光文社 2011-09-17

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本屋大賞を受賞した本作品、私もそれで興味を持って図書館に予約したのだけど(買わない派でごめんなさい!)順番が回ってくるのに、なんと半年以上待ちました。それだけ人気がある・・ということで、読み終えてみればそれも大いにうなづける面白さ!
最初、タイトルを聞いたとき、なんとなく時代小説かな~と思った。「天地明察」みたいな感じかな?と。何の根拠もなかったけど、そう感じたのです。
でも、開いてみたらこの本は、辞書編纂の物語でした。
定年間際の荒木は、次に編む辞書のために人材確保に動く。そこで「まじめ」(馬締)という社員に出会う。まじめと辞書部のひとたちは、その後15年をかけて、ひとつの辞書「大渡海」を作り上げていくのである。
私たちが普段何気なく使っている辞書。そこには本当に、想像を絶するほどの、気が遠くなるほどの工程があるし、時間も必要なのだということが分かる。言葉に関する考察もそうだけど、使われている紙にしても…。
ひとつのことを、みんなが協力し合って成し遂げていく達成感と感動。
読んでいて、実にわくわくさせられました。
三浦さんはご自身がオタクなだけに、こういう言語オタクの描き方もお上手。興味のない人間がそばにいたら必ずや面食らうしあきれるだろうと思うような会話を、とてもリアルに描いていると思う。
冒頭の、荒木と松本先生の会話なんかは、「感動すべきところ?」「笑うところ?」という際際のラインが絶妙だったのじゃないでしょうか(^_^;)。
ここに登場する言語オタク、辞書オタクというべき人種の人たちが、言葉に、辞書に向ける深い愛情と畏敬の念が、こちらにも伝わってきて驚きもするけれど、私は心から胸を打たれた。
世の中というか、私たちが教授する文明は、どれほどの、こういうオタク(エキスパート)たちの手によって作られ、豊かになっているんだろう。意識せずとも知らぬ間に、たくさんたくさん恩恵を受けているんだなぁ…と、しみじみとしてしまった。
それだけじゃなくて、登場人物たちのやり取りがまたいいのだ。
人が人を思う気持ちがてらいなく描かれていて、ラストなどは大泣きしてしまった。
まじめさんという主人公の人物造形もよかったけれど、私は最初に同じ部署で働いていた西岡さんが大好き。見た目は軽薄で、辞書にも言葉にも疎い西岡だけど、その実はちゃんと辞書に対する愛情も、そしてまじめを支える気持ちもあって、この人がこの本の中で一番好きだった。好感を持てるキャラクターがいるかどうかは、小説を読む上でとても大事なことだから、ここも作者にまんまとやられた感じだ。
辞書、それは見た目は(本にしてはごついけど)小さなものだ。
でも、そこにとても壮大な空間を感じることが出来る。
海のような、宙のような、広大な無限の空間の中で、一そうの舟が浮かんでいる。その舟が「言葉」なのだ。人間になくてはならない言葉が、そんなイメージを浮かび上がらせてくれる。
この物語をこの尺で描いたこともすばらしいと思う。潔くズバッと何年間も切り取られている手法も見事だった。切り取られはしていても、その間もいつも彼らと一緒にいたような、その間の出来事が目に浮かぶような気分にもなった。
直感的に「天地明察」と同じにおいを感じたのだけど、それは間違ってなかった。
天地明察」と「クローバーレイン」を髣髴とさせる爽快感と感動があった。
おススメです!



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【本】147ヘルツの警鐘 /川瀬 七緒

4062178311147ヘルツの警鐘 法医昆虫学捜査官
川瀬 七緒
講談社 2012-07-18

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すっごく面白かった~!おススメ!!

147ヘルツというのは、ハエの羽音の周波数なんだそう。スズメバチの羽音が150ヘルツで、ハエは保身のためにハチの真似をしているんだとか。
そういう虫トリビアを読み、へぇ~~!とわくわくする感じ。これは私なりに知的好奇心が刺激されたためだろうと思う。そんな楽しさがある、珍しいミステリーだ。
ある殺人事件があり、捜査本部は昆虫学者を捜査に加える。なぜなら死体の内部から大量の生きたウジが出てきたからだ。
捜査に加わった昆虫博士の赤堀は、女性なのだけど無類の昆虫好き。
ウジでも平気で触るし、必要ならなめもする。彼女が虫に向けるまなざしは、愛情と尊敬であふれんばかり。
その振る舞いは理解できない他人には奇矯ですらあるのだけれど、読者としては生き生きと虫に接する彼女から目が離せないのだ。とても魅力的に映る。
そうして彼女は虫との対話により、真実に近づいていく。その過程はとてもスリリングだしまた、ワクワクもした。
読者同様、捜査担当の刑事、岩楯も彼女に惹かれていくし、彼女と信頼関係を築き上げていく。
殺人事件の背景には意外な真実が隠されていてそれも気になるんだけど、こんな風に彼らの人間関係もとても気になった。
岩楯だけじゃなくプロファイリングを学んだ鰐川も十分注目された。この刑事二人のコンビもいい。これからぜひともシリーズとして読んで行きたいと、切に思わされた。

ひとつだけ難を言うなら…

ここからネタばれです。ご注意ください。(反転してください)

拓己の結末は不満。というか悲しすぎる。ご都合主義でもいいじゃない。あの少年に未来をあげてほしかった。赤堀との出会いがきっと彼を変えたはず。あまりにも悲しくて切なすぎた。なぜなんですか?と作者を責めたい。



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