【本】ドミノ倒し/貫井徳郎

4488027180ドミノ倒し
貫井 徳郎
東京創元社 2013-06-21

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「おれ」は、私立探偵の十村。恋人が死んだあと、恋人のふるさとである月影市で、探偵として開業した。
平和な田舎では探偵の出番はそうそうなくて、いつの間にか便利屋と変わらない仕事をしている。
そんなある日、美人が依頼にやってきた。
元彼が殺人事件の犯人として疑われている。疑いを晴らして欲しい。。。と。
その依頼人は、「おれ」の元彼女の妹だった。
殺人事件は詳しく調べていくと、連続殺人の様相を呈しており、そこには意外な真実が隠されていたのだった。



貫井さんには珍しく軽妙洒脱なコメディタッチのミステリーとなっている。
主人公が、気の強い依頼人に振り回される様子や、疑われている依頼人の元彼の、のぼーーんとしたキャラクターや、主人公の幼馴染の県警の所長のキャラクターなど面白く、なかなか読み応えがあった。

ドミノ倒しと言うタイトルに象徴されるが、どどーーっと次々に倒れていくように、真実が明かされていく。
貫井さんの作品には「プリズム」や「乱反射」があるけれど、なんとなく、ああいう物語の軽いタッチ版というか。。。次々に連鎖的に事件が起きていく部分が似ているように感じた。

納得しかねる部分もあるが、いつもの貫井さんのカラーでこの物語を書いてもらったら、もっと面白かったんじゃないか、コメディタッチはちょっと無理があったんじゃないかなと言う気持ちもするけれど、これはこれで、楽しめた。結末はかなり不気味だ。軽妙な物語とのギャップが効いているとは思う。
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【本】テティスの逆鱗/唯川 恵

4163297308テティスの逆鱗
唯川 恵
文藝春秋 2010-11

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美容整形をめぐる5~6人の女の物語。

中年女優の條子、キャバ嬢の莉子、普通の主婦である多岐恵、そして社長令嬢の涼香、彼女たちが通いつめる高級美容外科医の晶世・・と受付の秋美。それぞれの視点で繰り広げられる群像劇タイプの物語。
彼女たちは個々の立場と理由で、美に執着するんだけど、それがもう、凄まじい。最初から「よくやるよ」と思っていたけど、だんだんとエスカレートして、最後はもう唖然呆然とするばかり。
背筋がヒヤッとする狂気が含まれていて、読み物としては大変面白く、目が離せなかった。

世間的には、アンチエイジングと言う言葉がもてはやされ、美魔女なんていう人々もいて、とにかく「年をとる」ことにものすごく抵抗感がある。普通に年をとることが、まるで罪であるかのような・・・そんな風潮だと思う。
そこにはおそらく、美味しいビジネスが介在するんだろうとも思うけど、分かっていても、どうしても、踊らされてしまう自分がいる。
やっぱり老けてるよりは若く見られたいし、汚いおばさんになるよりは小奇麗なおばさんのほうがいい。そう見られたいという欲があるのだ。。。
しかし、見た目は関係なくしても、若く溌剌としているほうが、人生は楽しいことが多いと思う。だからアンチエイジングを悪いとは言わないけど、やっぱり程度ってものがあるよね・・。
ひとつを得ても、そのうちひとつじゃ物足りなくて、欲しいものはふたつになりみっつになり、いつまでも延々と求め続けなければならない。それが人間だということなのかもしれないけど。
幸せを求めているはずなのに、求めすぎることは逆に自分を不幸にする。

人間の領域を踏み越えてしまうと、神の逆鱗に触れてしまうという寓話的物語。
とても恐ろしくて一気に読んだ。

この前に同じく唯川さんの「途方もなく霧は流れる」と言う本を読んだ。その前の「手のひらの砂漠」が面白かったので、久しぶりに追いかけたくなったから。でも、イマイチ印象に残っていない(^_^;)
「手のひらの砂漠」と「テティスの逆鱗」は好みでありました。


17:41 : [本・タイトル]た行トラックバック(0)  コメント(0)

【本】慟哭の家/江上剛

4591132358慟哭の家 (一般書)
江上 剛
ポプラ社 2013-02-14

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たぶん、初めて読む作家さん。お名前はもちろん知っていたけど。。。

かなりセンセーショナルな作品だと思う。大きな問題提起を示し、読み応えがある作品だった。
でも、小説、エンターテイメントとしては、私個人的にはイマイチだった。
はっきり言って申し訳ないけど小説として面白くないのだ。
でも、それでも、内容として誰もが読むべきと感じさせられる重さがあり、頑張って最後まで読んだ。

男は、自分の妻子を殺害する。
自分も一緒に死ぬつもりだったが死に切れず、心中未遂事件となった。
息子はダウン症だったのだ。
妻も夫も将来を悲観し、また、子どもの世話にかかりきりになる生活に疲れ果てての犯行で、一見、同情の余地がある事件のようだ。実際、夫も罪を認め、死刑にしてくれの一点張り。弁護士も要らないという。
しかし、絶対に弁護士はつける必要がある。
そこで国選で弁護に当たることになった、新米弁護士の駿斗。
駿斗の目を通して、ダウン症の子どもを持つ家庭を取り巻く社会や、人々の心のありかたを問うていく。

男が殺した自分の息子はダウン症だ。でも、だからと言って殺して良いわけがない。
知能が低いから、生きる喜びを持たないから、だから殺してもいいと言う男の言い分は、どう考えても身勝手なものなのだけど、いざ自分がその立場に立ったとき、男のような選択をしないでいられるのか??という問いかけがある。
さらに、社会はどう感じているのか。ダウン症の子どもは生まれないほうがいいのか。(出生前診断によって異常が見つかった胎児は中絶されることが多く、ダウン症児の子どもは減っていると言うのだ)
生まれないほうがいい命、
生きる意味のない命
死んだほうがいい命
そんな命があるのか、と言う問いかけ。
社会的に役に立たないなら(生産性がないなら)生きている意味がないのか、生きる喜びがないのか、殺されても仕方がなかったのか、殺すことが愛情だったのか・・・延々と繰り返して問いかける。

やがて物語りは裁判に辿り着く。
裁判官が出した判決は・・・。

実際にダウン症児の会などに取材をされたようで、ダウン症児を持つ家庭の気持ちなど、真摯にリアルに描かれていたと思う。ぜひとも広く読まれることを願う1冊です。
16:53 : [本・タイトル]た行トラックバック(0)  コメント(0)

【本】特捜部Q ―カルテ番号64― /ユッシ・エーズラ・オールスン 吉田 薫

4150018715特捜部Q ―カルテ番号64― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
ユッシ・エーズラ・オールスン 吉田 薫
早川書房 2013-05-10

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待ってました!の第4弾。
すっかりおなじみになった特捜部Qのメンバーの活躍。またお目にかかれて嬉しい限りです。
今回も面白かったけど、いろんな事件が入れ子のように絡み合ってて、すこし(いや、かなり)混乱したし、その分登場人物も多くて、覚えきれず、苦労してしまった。。
内容に触れますので、未読の方はご注意ください。
(内容に触れておかないと、せっかく書いても自分でも結局どんな話だったっけ?となり、書いている意味がないと思うので・・・(^_^;)要するに、しばらく立つと忘れちゃうんですよ)














・デートクラブの女性オーナーが襲われると言う事件が起きる←カールの元同僚の妹
・それに触発されたローセが、80年代の未解決事件を掘り起こしてきた。それは、同じくデートクラブの女性オーナーのリタ・ニルスンが謎の失踪をとげたと言うもの。
・カールの伯父が溺死した事件。30年前の事件だが、事故死で処理されていて時効でもあるのに、カールの従兄で伯父の息子が、自分が殺してカールもそばにいたと言い出していた。
・「明確なる一線」という政党がある。実は「密かなる闘争」と言う裏の顔を持ち、ある思想によって恐るべき行動を推し進めている。
・ある盛大なパーティーで、自分の隠していた過去をばらされてしまった社長夫人のニーデ・ローセンの生涯。

これらのことが、1985年~と2010年を中心に、行きつ戻りつして進行していく。
中心となる事件の中心人物は、ニーデ・ローセンとクアト・ヴァズで、ニーデがクアトに過去を暴露されてしまうシーンから物語が始まる。
そのふたりの間に何があったかをなぞりながら、特捜部Qの捜査(30年前のデートクラブオーナーの失踪事件)との接点は何か、と言うことに徐々に迫っていく。
デンマーク王国で、過去、実際にあった出来事、とても凄惨なことが国家規模で行われていて、読み進めるうちに明らかになっていく。これが実際にあったことで、法律もそのようにあったということが、衝撃。
それが「いま」にどう伝わっているか・・・おぞましい実態が明らかになっていく。

それと同時に、特捜部Qのメンバーたちのプライベートももちろん差し挟まれ、目が離せない。
カールとモーナの関係は?
カールと妻ヴィガとの関係は?
前回から引き取っている全身麻痺の同僚、ハーディは?
アサドの本当の姿は?正体は何者か?
ローセの中のユアサは誰なのか?
そして、伯父の死の真相は?
なによりも、ハーディーともどもカールが巻き込まれた「あの事件」に新たな進展があり、カールがますます不利な立場に立たされているんだけど、それが気になる!!!
などなどなどなど・・・。

カールの家、今でも結構いろんな人が同居しているけれど、また今回増えてるような・・。下宿人のモーデンに彼氏?が出来て、ミカと言う男が家に入り込んでいる。でも、その彼の存在がとても大きいし、彼によってある事実がもたらされた瞬間のカールの動揺が・・・いとしかった。カールが大好きになってしまう。
アサドも今回とんでもなく危ない目に。次回までに回復してくれるんだろうか。心配。明晰な頭脳ととんでもない行動力がちゃんと失われずにいて欲しい。
でもそれで、いかに自分が彼らを大事に思っているか自覚する、そんなカールがとても好き。まさかの萌え!

今回は、事件の全容よりも、カールのそんな部分にとても親しみを抱き、ますます彼らが大好きになった。

なんかもう・・・文章内容ともにめちゃくちゃだけど、このままアップします(^_^;)
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【本】手のひらの砂漠/唯川恵

4087715086手のひらの砂漠
唯川 恵
集英社 2013-04-05

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これは・・・・かなりショッキングで恐ろしい小説だった。
DV夫から逃れようとする妻の物語なんだけど、ものすごくリアリティというか、説得力のある内容で、とてもフィクションとは思えない迫力があった!
仰々しい「小説らしい」出来事はそんなに起きるわけじゃなく、割と展開としては「地味」なのかもしれない。もっともっとサスペンスフルな設定にも出来ただろう。
でも、あえて「地味」な設定であるからこそ、その恐ろしさがリアルに迫ってきたと思う。

夫から身をかくし、女ばかりの施設でひっそりと暮らすさまは、角田さんの「八日目の蝉」を思い出させた。
しかし、100%共感するには、少なからず複雑な立場の「八日目の蝉」の主人公に比べ(比べることもないとは思うけど)こちらは、100%同情してしまった。
被害女性に対して惜しみなく手を差し伸べる人たち、同じ境遇ゆえに心を寄せ合うもの同士、その中で異端児もいれば・・という、登場人物同士のつながりも良かった。
しかし、夫の執念深さはとどまるところを知らない。
DV夫と言うのは、とても周到で姑息で・・・そしてとっても執念深い。その心理を思うと、ほとんどホラーだ。
どうしたら逃れられるのか??
本を読みながらドキドキハラハラさせられた。
巻末の参考資料を見てみると、これは決して丸きりの作り事ではないと言うことが、分かる。
こういう男は必ず存在して、こんな風に虐げられ辛い思いをしながらも、自分が悪いのだと思いこまされている女性が、たくさんいるんだと確信させられる。
法律は必ずしも守ってくれないという。
じゃあ被害者はどうやって身を守ればいいんだろう??
暗澹としてしまった。

小説らしいラストが待っているのだけど、それは賛否両論があるだろう。
でもどうすることが一番なのか。答えがあるのだろうか。
主人公の今後に思いをはせて、どうか幸せになってほしいと願わずにいられなかった。





正直言って今まで唯川さんを見損なっていたのかなと反省してしまった(^_^;)。
何作品も読んできたけど、ここまでハマった物語は初めて。。。なんて、ナニサマ的発言で大変失礼だけど、今後はチェックして、追いかけようと思った。期待しています。
17:31 : [本・タイトル]た行トラックバック(0)  コメント(0)

【本】血の轍/相場秀雄

434402320X血の轍
相場 英雄
幻冬舎 2013-01-25

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元刑事の香川が殺され、真相を追う刑事部の兎沢。しかし、同時に公安の志水も真相を追っていた。
激しくぶつかり合いながら、真相に近づいていく両者。
どちらが先に辿り着くのか。
そして、数年前は同じく刑事部の先輩後輩として、志水は懇切に兎沢の面倒を見て、刑事としてのノウハウを教え込んでいた。この数年間に何があったのか、両者の間の決定的な断裂はどうして出来上がったのか。
兎沢と志水の過去の出来事を徐々に明らかにしつつ、刑事部と公安の亀裂の内幕をあぶりだす。


面白かった~~!!!

とても、重厚で読み応えのある警察小説だった。
公安部が徹底的にヒール扱いなのが気になったが、このとおりだとすれば恐ろしい!
共感目線は完全に刑事部だった。
どうして兎沢がこんな態度の悪い刑事なのか。公安を、志水を憎むのか・・。
実は最初はとっつきにくい小説なのだけど、この二人の過去の確執が徐々に徐々に明らかになるところで、ぐっと鷲づかみにされた。
それと、現在進行の殺人事件の真相・・というよりも、刑事、公安、どちらが先に真相に辿り着くのかという点が、とてもスリリング!刑事部頑張れ~~!!みたいな気持ちでグイグイと読まされる。うまい~。
ふたりの断裂の過程には、また、もうひとつ、隠された真実があり、それもまたある種の真実の上に出来上がっていたと言う・・二重三重に驚かされる設定で、読み終えたときは唸ってしまった。面白かった!!

それと、私がとても気に入ったキャラクターがいた。
物語の核を握る彼ですよ。
ああいうことが出来る人間が、これからの「スーパーマン」だと思う。
常人には出来ないこともやってのけるそのスキルの高さに萌えた!!
彼をまた使ってシリーズ化してもらいたいと思った。

著者の作品は、「震える牛」を読んだけど、こちらも大変読み応えがあったので、他の本も追いかけたいと思う。


10:24 : [本・タイトル]た行トラックバック(0)  コメント(0)

【本】沈黙の町で/奥田英朗

4022510552沈黙の町で
奥田英朗
朝日新聞出版 2013-02-07

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中学生が校内で死んでいた。事故かいじめか。
・・・と書くと、宮部みゆき「ソロモンの偽証」を彷彿とする。
実際、新聞で連載が始まったとき、当時雑誌連載中だった「ソロモンの偽証」に酷似しているんじゃないかと思ったことを思い出す。単行本になったものを改めて読んでみると、やっぱり似ていると思えてしまう。
読んでいる最中も気が弱い校長とか、面倒な叔父とか、どっちに出ていたんだっけと混乱してしまった。
しかし、宮部さんの描いた中学生たちがある意味理想的な子供たちだった(自分たちで裁判を開くほど賢く実行力がありパワフルだった)のに対して、奥田さんの描く中学生は実にリアル。しゃべるのが下手で、語彙力がなく、物事の真実をうまく伝えられなかったり。とても残酷で、子どもと大人のまさに狭間にいる。妙に義理堅かったり、また、単に目立ちたかったり。
そうそう、子供ってこんな感じだよね。。と思う。
物語は「中学生の死」という大きな痛ましい出来事の背景にあるものを、丹念に掘り起こす。
当初考えられたこととは、おおよそ違う事実が次第に明らかになってくる。
一概には言えないのだ。いろんなことが絡み合っている。些細な感情のささくれや小さな齟齬がやがて大きな結末を引き起こす事もあるのだ。
この出来事を、もしもテレビや新聞などのメディアを通してみたら、私はいったいどう受け取っただろうか。事件の背景に実際にあったことは、とても数百文字の文章や数十分の映像にまとめられるものではない。でも、普段私たちはそうやってまとめられたものの表面だけを見て、事件の全容を知ったつもりでいるんじゃないだろうか?
そんな問題を投げかけられたと思う。
余談だけど、この小説の連載終了当時、まったく良く似た事件が実際に起き(事件が起きたのはその前年だったが)世間に衝撃を与えていた。類似性に慄いたものだった。この物語は単なる物語ではないと改めて思わされたことだった。
いじめによる事件として主犯格の少年たちが4人、逮捕や補導されるが、それも中学2年生と言う学齢は、13歳から14歳になる年であり、13歳なら補導、14歳なら逮捕だ。
たった一日だって、誕生日が来ているのかまだなのかによって世間的な立場が変わる。
そんな疑問も投げかけられた。
特に読み応えがあったのは、母親目線で描かれた部分。
自分の子供がこういう事件に関わっていたら・・。ここに登場する母親は死んでしまった子供の命を悼んだり、その母親に哀悼の念を感じるなどと言うことが殆どなく、とてもエゴイスティックに感じられた。
だけど、もしも自分がこの親の立場だったら、自分だってきっとエゴ丸出しになるのかもしれない・・と思ったり、あるいはここまで我が子の為にエゴイスティックになるなんて、ある意味親としては感動するべきなのだろうかと思ったり・・。
しかし、死んだ子の母親の気持ちには泣かされてしまった。死んでから、事実が次々と分かってくる。自分が思っていた我が子の姿とは違う姿も見えてくる。いたたまれない。母親が女子中学生に気持ちを吐露する場面があるのだけど、子ども相手にそこまで言う?と言う気持ちもあったが、それよりも、そうせずにいられない母親の気持ちが切々と迫ってきて、泣けてたまらなかった。
子どもが死ぬ・・なんて痛ましく悲しいことか。やり切れない。
深く大きな悲しみが残った。
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【本】父のひと粒、太陽のギフト

4344022769父のひと粒、太陽のギフト
大門 剛明
幻冬舎 2012-11-09

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夢破れて、姉から紹介してもらった会社でいやいやインターンとして働くことになった小山大地(30歳・ニート)。そこは、農業界に名をとどろかせる若き天才・水倉陽太が 経営する、ひまわり農場という農業会社だった。 実家の家業でもあった農業を、初めはかろんじ ていた大地。だが黙々と新種の改良に打ち込 み、実作業をこなす水倉の姿を目の当たりに し、次第に働くことの意味、農業の面白さを見 出だしていく。 そんなある日、突然水倉の死体が畑で発見され た。 大地は、水倉のひとり息子・陽翔とともに、水倉の死の真相に迫ろうとするが……。

ひとりの天才の背後にうかびあがったのは、悲しき農村の因習だった。ミステリー界の新鋭が挑む新境地。 若者たちの成長とともに描かれる、新社会派ミステリー。(Amazon紹介文)


今回は「農業」ですか!
とても面白く読んだ。
ミステリーと言うよりも、主人公大地の成長物語と言う側面で、読み応えがあった。最初のダメっぷりが徹底されているからこそであり、ダメダメなニートが農場に入ったことで急速にしっかりしていくのを見るのは、とても気分が良かった。
大地だけではなく、農場の社長や家族など(息子がとくに)魅力的で好感が持てた。登場人物のすべてが生き生きとしていたと思う。こういう物語は感情移入しやすく読みやすいのだ。
日本が抱える農業の問題点を素人にも分りやすく描いてあるし、TPPの問題にしても、ひとつの意見として素直に「そうかも」と思える。
ミステリーとしてはイマイチ弱いと言うか、種明かしを読めば説得力に欠ける。
いくらなんでもそれはないだろうと思った。
ミステリーにせずとも面白い物語になったのではないかと思うんだけど、逆にミステリー(殺人事件)にしたことで、メリハリがあって印象的な物語になったと思う。
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【本】月と雷/角田光代

4120043991月と雷
角田 光代
中央公論新社 2012-07-09

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今年は結構角田さんの本をたくさん読ませていただいたなぁ。
「曽根崎心中」「ひそやかな花園」「紙の月」「かなたの子」そして本作「月と雷」なんと5冊も。
あと短編を借りたけど、結局読まずに返した本が一冊。どうしても短編集は苦手です(^^;
今まで、イマイチそこまで好きになれなかった作家だけど、私の中では「紙の月」「ひそやかな花園」「対岸の彼女」が角田作品のベスト3というところでしょうか。(コンプリートしてないんだけど)

そんな中において、最新作品のこの「月と雷」はかなりインパクトが弱いというか、パンチに欠けるというか。読んでいて巻き込まれるような感じはなかった。原点回帰というコメントがあるけれど、なんとなくわかる。「地上八階の海」とか「プラナリア」を読んだ時の気だるさというか、モヤモヤ感みたいなのがあったかもしれない。
でも、読み終えて日にちが経っても割と物語のイメージは残っている。そんな小説だった。

智という青年は、恋人と長く続かない上に、振られる時に「普通の生活ができないところが怖い」と言われてしまう。その原因を探ってみると、自分の生きて越し方に原因があったと思う。
覚の今までの人生とは・・・。
というところから始まる物語。
とてもイライラする。智のような男じゃ、私も嫌だしまた娘の彼氏や夫になられても困ると思う。
普通のことを普通にできない、その原因は母親直子と根無し草のように流れ流れてその場しのぎの生活を続けてきたことによって、「普通」ではない人格が出来上がってしまった・・というのが、読んでいるうちにわかってきて、イライラがちょっと収まってきた。
その親子が、家に来た時から自分の生活は「普通」じゃなくなってしまったと思う泰子。
やっぱりどこか「普通」とは違う考え方や感じ方を抱えている。
これから「普通」の幸せを手に入れようとした矢先に、またもや、智の登場で困ったことになってしまう。
泰子の行動もどこか不安定で、これまたハラハラというよりもイライラさせられる。
こういうふうに読者に、いや~~な感じを与えるのが、著者はお手の物だ。
なんだか腹が立ったり、ムカついたりもしながら、結局ふたりを最後には応援する気持ちにさせられてしまった。
普通、普通・・・普通であることがそんなに大事なの?という意見もあると思うけれど、私はこの本を読んで「うん、普通って大事だ」と思った。
普通に朝起きる。
普通に朝ごはんを作って食べる。
普通に洗濯や掃除など家事をする。
ある程度はサボったり散らかしたりもしながら、家のなかを快適に保つ。
晩御飯はお菓子やファストフードじゃなく(たまにはいいかも知れないけど)ちゃんとご飯を料理する。
仕事をする。家に帰る。
休みの日にはゴロゴロしたり家族でレジャーに行ったりする。
ごくごく普通の人生。
平凡極まるかもしれない。
でも、それが大事なんだ。
泰子との出会いによって、今まで漠然と普通じゃないことに慣れ親しんできた智が、少しづつでも普通の生活をできるようになったらいいと思う。ラストにはその片鱗が見えてほっとした。
主人公ふたりは、これからその平凡だけど普通の幸せを是非とも手に入れて欲しいと思ってしまった。
そんな風に思えたこの作品、インパクトは弱いと感じたけど、私にはやっぱり「地上八階の海」や「プラナリア」よりも読後感が良い作品だった。
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【本】逃走/薬丸岳

4062178834逃走
薬丸 岳
講談社 2012-10-11

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【内容】
閉店後のラーメン店で、店主が何者かに暴行され死亡した。通報により駆けつけた救急隊員に、「約束を守れなくてすまない」と声を振り絞り、被害者は息絶える。通報した若者を容疑者として始まった捜査は、早期解決が確実視されていたはずだった……。(講談社HPより

【感想】
本を返してしまい、手元にないので、記憶だけで書いています。ご了承ください。
ということで、さっそく↑のあらすじを見て、死んだ男の末後のセリフ「約束を守れなくてごめん」がもう、記憶に残ってないという・・・(^^;。
当然「約束」っていうのが何だったのかも忘れてる・・。そんなシーンあったっけ・・。(おいこら)
まぁともかく、殺人の容疑者はすぐに割り出され、事件と同時に行方をくらませた施設出身の小沢裕輔が捜索される。小沢裕輔には一緒に施設で育った実の妹恵美子がいて、彼女も独自の方向から兄を探す。
妹は兄がそんな事件をしでかしたと信じられない。
読み進めるうちに、本当に若者が犯人なのかどうか、そして動機はなんなのか・・妹目線で事件に迫っていくのだけれど、なんだかだんだんと事件の真相に対する興味が薄れていってしまった。
過去、小沢兄妹の身に降りかかった出来事が端を発していることがわかってくる。
事件がすべて解明した頃には正直申し上げて、ストーリーの平凡さにがっかりした。
「天使のナイフ」「悪党」がとても良かっただけに、ああいう作品がまた読みたいと思ってしまう。
今回、登場人物の誰にも共感ができずに、魅力的と思えるキャラもなかった。
そこにも原因があったと思う。

どうも、宮部さんの「ソロモンの偽証」があまりにも面白かったので、その後に読んだ本はイマイチ面白く感じないのです。たいへん辛口になってしまい、申し訳ありません。
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