さよなら渓谷/吉田修一

4104628042さよなら渓谷
吉田 修一
新潮社 2008-06

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俊介は、奥団地と呼ばれる古びた市営住宅に、内縁の妻かなことひっそりと暮らしていた。
が、隣に住む母子家庭の主婦が、子ども殺しの容疑を掛けられ、世間やマスコミに注目されてしまう。
隣に住むものへも影響は免れず、俊介は思いがけずマスコミがらみの古い知り合いに会ってしまう。
古い知り合いが、事件を追う記者の尾崎に漏らした俊介の過去とは・・・。
そして、尾崎が調べた事件の結末とは・・・。



やりきれない実在の事件をモデルにして取り扱っているので、感想も書きにくいです。
本筋の事件(過去)の詳細が、冒頭の事件をきっかけとしてだんだんと明らかになっていく。
その中で描かれる、男の気持ちと女の気持ち、自分だったらどうだろう?と思うと良く分かりませんが、小説としては面白かったです。

以下ネタバレで↓

隣の主婦が起こした事件というのは、秋田の我が子を含めた連続児童殺人事件のことで、主人公がかつて起こした事件とは、よく似た事件がたくさんあってどれの事やらわからないぐらいですけど、大学の野球部が起こした集団レイプ事件。
どっちの事件が展開に大事かというと、主人公側の事件です。はっきり言えば、隣の主婦が起こした事件は何も実際の事件になぞらえて描く必要を感じませんでした。
主人公側の起こした事件は、これも許しがたい事件。自分がこの事件の被害者だったら、というのは置いておいて、俊介とかなこふたりの関係は、切なさと哀れさと痛さとその他もろもろ入り混じった複雑な関係で、その辺が読みながらも釣り込まれた部分です。
とにもかくにもかなこの生涯が哀れで悲しい。そしてそれをかなこに与えたのは、ほかでもない俊介だったという事に、複雑な気持ちを抱きます。
同じグループで同じ犯罪を犯したひとりに、社長の息子がいて、その人物はその後とくに事件の影響も受けずに、まさにのうのうと暮らしている。その姿を見たときに俊介は「自分のあるべき姿」というのを悟ったんではないでしょうか。
罪を犯したものは、その後の人生をどう生きればいいのか。そんなことがなかなかリアルに描かれていると思います。




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越境捜査/笹本陵平

4575235881越境捜査
笹本 稜平
双葉社 2007-08

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警視庁捜査一課の鷺沼は、配置換えのあと暇をもてあまして、時効間際の殺人事件を洗いなおすことにした。それは悪質な詐欺事件の被疑者が殺害された事件であり、その折には殺された被疑者が被害者から騙し取った12億円という大金が忽然と姿を消しているという事件だった。この殺人事件を再び追い始めたとき、鷺沼はなにものかに付けねらわれ、闇討ちに合う。
消えた12億円をめぐって熾烈な争いが水面下で始まる。
鷺沼に事件を託した神奈川県警監察官室長の韮沢、なぞのちょいワル風刑事の宮野、誰が味方で誰が敵か、何が本当で何が嘘か、、裏金にまみれた醜い警察という組織の実態を明らかにしつつ、鷺沼は「正義のために」事件の真相を暴こうと思うのだったが・・・。
+++++++++
半分ぐらいまではとても面白く、息つく暇も与えられずに読まされた気がしますが、三分の一ぐらいから話が込み入りすぎて混乱してしまいました。
スピード感があって・・というより、緩急、の急ばかりでグイグイと引っ張られるので、半分ぐらいからすこし疲れてしまったというのもあり。
しかし、全体的に面白い小説でした。
主人公の鷺沼がカッコイイのです。上司の韮沢や、宮野とのやりとりなどに、男らしさをにじませていて、硬派な男前を堪能したカンジ。
物語は二転三転、四転五転・・・・?さすがに疲れますが、だからこそドキドキハラハラもさせてくれてグッド。
ラスト間際の展開はかなり盛り上がりました。最後の最後は「賛否両論?」と思ったけど、にやりとさせられる。わたしは支持!好きなラストです。硬派なエンタメとして楽しめました。


ひとこと:
金髪でピアスで家事をマメにするオネエことばの刑事、宮野がお気に入りだったので、終盤事件に介入する人物があっちからこっちからと増えてきたために、宮野の印象が薄れてしまったのが残念でした。

ひとことその2:
主人公鷺沼を柴田恭平で2時間ドラマになっているんだそうです。まだ放送していないのかな。非ドラマ体質なので見ることはないかもしれませんがキャストは気になります。宮野は誰がやるんだろう?
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歳月の梯子/アン・タイラー

4163161805歳月の梯子
アン・タイラー
文芸春秋 1996-04

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お初の作家だけど、女性心理をえぐる事に長けていると言う評判を聞いて読んでみました。
とてもおもしろかった。グイグイと読まされました!

子ども達も大きくなり、自分が家庭の中でそれほど重要ではないと思えて、ちょっと落ち込み気味の主婦(つまり「空の巣症候群」)が、唐突に家出をしてしまう話です。
最後にはどうせ収まるところに収まるんでしょ・・・と、斜に構えて読んでたんですが、これが面白くって一気に読んでしまいました。
「ふとした拍子」の家出に、自分自身も戸惑いながら、新しい土地で新しい自分になることを、リアルに具体的に「実現」していく主人公。あれよあれよと生活の地盤を固めていく主人公の姿が、とても眩しいのです。生き生きとした主人公に、こちらも「翼」をもらったような気分で、とても爽快になれました。登場人物たちもみな好感が持て、彼らとの関わりの中で「変化」してゆく主人公の姿には、ワクワクさせられたし、スリリングですらありました。
小さな心理描写がリアルで丁寧、だから自分自身に置き換えて読みやすい展開で、「わかるわかる」と共感を呼ぶ箇所がいたるところにあります。

家出、なんて、主婦には大冒険。
しかし、知らない街で、心機一転、まったくのゼロからやり直したい。今まで持っていたものを全て捨てて、家族も知人もいないところで全然違う生活を始めたい、って、誰にでもこう言う気持ちはあると思うな〜わたしは。
ただ色々考えると、たいていの人が思うだけで終わるのだと思う。主人公ディーリアにはその「いろいろ」を想像することができなかったのか、それができないくらいいっぱいいっぱいになっていたのか。よーく考えるとちょっと鈍感なような気もしたけど、読んでる最中はそんなことは思わない。ディーリアには「一歩」踏み出す「勇気」があったのだと、思いました。
できるのなら、こんな風にしてみたい・・・一度しかない人生だもん、一度くらいこんな事があってもいいのじゃない?と思いながらしばし、爽快感に浸りました。
じっさいにそれをやったときには、寂しくもなるだろうし、恋しくもなるだろうという、そういう気持ちも含めて、すべてが面白かったです。

しかし、子どもって言うのは、母親は自分を無条件で愛してくれて当たり前だと思ってるもんね。
お弁当箱を出さなかったり、洋服を脱ぎ散らかしたり、漫画やビデオを出しっぱなしにしては怒られても、すぐにムッとして反抗的な口答えをして、お風呂だとかゴハンだとか言っても全然聞いてくれなかったりしておきながら、でも、だからそれが母親の家出の一因になるって言われても、絶対に理解しないと思う。こっちはそれで、マジで家出したいぐらいキレそうになることがあるんだけどね。
そんな風に絶対的に「安心」(⇒愛情を疑わない)している子どもがいると思うと、家出なんてとんでもないですわね。

以下ネタバレ↓

わたしは、あっちの街で関わった人たちを「タイムトリップ」のように、「なかったこと」にするのか?って言う所がちょっと疑問。もちろん、話の結末としてはこれで良いと思う、でも、たとえばディーリアがハウスキーピングをしていた家のノア坊やとか・・。そのおじいちゃんのナットとか。ディーリアをほんとに頼りにしてしまっている人たちを、やっぱりサムの言うように「捨てる」ことになるんだろうか?そうだとすれば、やっぱり深く関わってしまったディーリアの「罪」のようなものを感じるのだけど。

こちらもチェック↓「結婚のアマチュア」

結婚のアマチュア (文春文庫)
結婚のアマチュア (文春文庫)Anne Tyler 中野 恵津子

文藝春秋 2005-05
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歳月のはしご (文春文庫) あのころ、私たちはおとなだった (文春文庫) The Amateur Marriage 寄り添って老後 (ちくま文庫) ウエハースの椅子 (ハルキ文庫)

17:22 : [本・タイトル]さ行トラックバック(0)  コメント(0)

北尾 トロ/裁判長!シリーズ

4167679965裁判長!ここは懲役4年でどうすか (文春文庫)
北尾 トロ
文藝春秋 2006-07

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4163675604裁判長!これで執行猶予は甘くないすか
北尾 トロ
文藝春秋 2007-04

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雑誌に連載するために、裁判の傍聴をはじめ、それにはまってしまった著者の裁判傍聴記録。
最近は裁判員制度開始時期が迫ってるので、よくこう言う本が出てると思う。今まで裁判傍聴録というと、佐木隆三氏のとか、固い系のしか読んでいなかったので、こう言うちょっぴりファンキーで野次馬根性丸出しの本を読むのは新鮮でした。しかし、著者が裁判傍聴にのめりこんでいくように、裁判には「ドラマ」がある。人間のおかしみや悲しみ、人生、あらゆるものが凝縮されているのだと思う。
特筆すべきは、傍聴を趣味にしている熱心で裁判を知り尽くした「傍聴マニア」たちの存在。彼らは裁判の行方を殆どぴたりと当てると言う。事件のケースの内容よりも裁判に携わる人たち、裁判官や弁護士や検察官に目が行くようになり、裁判所の「人事」が気になりだしたら一人前なんだとか。
裁判の行方は、ひとえに「人間」が決めているものだと言う事も、改めて実感させられる。
映画「それでもぼくはやってない」の中にもこういった「傍聴マニア」と呼ばれる人が登場するが、モデルはこの著者なんだと、周防監督が言ったとかいう「裏話」も書いてある。
また、映画「それでもぼくは」のモデルケースとも言うべき、冤罪裁判と思われたケースは後にやっぱり被告人がわいせつ行為をしていたのが明らかになったとか、まぁ色んな裏話にビックリさせられます。
「4年でどうすか」のほうは、右も左も分からない著者がだんだんと傍聴のコツを会得していくあたりの流れや、オウムや山田みつ子、佐木隆三というビッグネームも登場し、非常に興味深い。
そして、「執行猶予はあまくないすか」のほうは、そのタイトルにもなった警官の嬰児殺し事件など、インパクトのあるものもあり、また傍聴マニアの筆頭であるダンディ氏の行方が大変きになるところ。ダンディさん、トロさんに連絡して下さい!!

裁判所が近かったら(地裁じゃなくて、高裁ぐらい)わたしもマニアになりそう。なんか、私の求めているのはこう言うことなのかもしれない。野次馬ですみません。

4652078153気分はもう、裁判長 (よりみちパン!セ)
北尾 トロ
理論社 2005-09

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4101282528危ないお仕事! (新潮文庫)
北尾 トロ
新潮社 2006-05

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410128251X怪しいお仕事! (新潮文庫)
北尾 トロ
新潮社 2006-03

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4344407997キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるか (幻冬舎文庫)
北尾 トロ
幻冬舎 2006-06

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財布のつぶやき /群 ようこ

404883987X財布のつぶやき
群 ようこ
角川書店 2007-12

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いつもながらユルユルと楽しめるエッセイになっております。
群さんもお年を召されてきて、最近は老後のご心配をなさる文章が多いようですが、今回も「老い」ははずせません。そして、そこが読者の共感を得る部分でもあるんですよね。
独身でいらっしゃる群さんは、老後は仲良しの女性ばかり3人で、長屋のように住まいたいと思ってらっしゃる。独身女の老後はさぞかし寂しいだろうと言う人は、昔はいたかもしれないけど、今はいないんじゃないでしょうか。この群さんの計画を聞いて「いいなぁ」と言う気持ちが、全くない人などいないでしょう。最近の心境の変化としては、以前は何が何でも東京にいたいと思ってたのに、最近は東京じゃない方がいい、と思うようになったそうです。
老後のためにせっせと持ち物を処分されているらしいんだけど、それが大変なんだって。その点はこころして読みました。なんたって、わたしもすっごい貯め魔だもんね。でも、物欲っていうか、ブランド物が欲しいと思ったりと言う「買い物癖」は全然なく、むしろ人よりもずっと少ないので、その部分はこの路線で頑張りたいと思います。
群さんって売れっ子作家なのに、いつも「お金がない」って言う感じです。彼女のエッセイを読むと、いつも「弟さんは何をやっているんだろう」と、ちょっと非難めいた気持ちになってしまいますよね。年収1000万円の独身の男性なら、姉のお金を当てにしなくても充分、立派な家を建てられるだろうしお母さんにもお小遣いをふんだんに上げられるだろうし。他人の家庭のことにくちばしを挟むなんていけないわ、と思いつつも、どうしても「なにをやっとるんだー!」って言う気持ちになってしまうんですよねぇ。そうじゃないでしょうか、みなさん。
17:15 : [本・タイトル]さ行トラックバック(0)  コメント(2)

自閉症ボーイズジョージ&サム/シャーロット・ムーア

475721443X自閉症ボーイズジョージ&サム
シャーロット・ムーア 相原 真理子
株)アスペクト 2008-01

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すっごくよかったです!!オススメ!

3人の息子のうち上のふたりが自閉症。そんなシングルマザーの奮闘記です。冒頭に、この著者の「とある朝」の様子が描かれている。それを読むと、わぁ大変だなぁ…と思ってしまう。
しかし、本書を読めば読むほどに、その気持ちは大きく変わってゆきます。
もちろん大変なことは変わりません。この著者(お母さん)には頭が下がる気持ちでいっぱいです。でも、ここにあるのは、自閉症を抱えたお母さんの苦労話を、涙ながらに語るものでは決してありません。自閉症の子どもたちとの毎日が、リアルに、ハツラツと、生き生きとユーモア混じりに描かれているのです。
全編にわたってわたしが感じたのは「暗くない」ということ。明るいと言うよりともかく「暗くない」んです。暗くなければ「明るさ」は、おのずと後から付いてきます。
そして、著者が冷静だということ。二人は自閉症と言う点では同じだけど、タイプが全然違うのです。そして3番目の息子は自閉症ではない。三人三様の息子たちの様子を目の当たりにして、その違いを楽しんでいるようにすら感じられるのです。
彼女はこのように、冷静に自分の子どもたちの個性を観察して、分析して、どうすれば子どもたちにとって一番なのかを最優先する努力をしています。そして事実から目を背けず、子どもたちをありのままに受け止めている様子が伝わります。もちろん、常にあるのは母親としての深い愛情。
子どもたちが、どんな事をしでかしても、どんなに自分が大変な思いをしても、それをくよくよしない。くよくよしているよりは前向きに受け止めて、その状況の中で出来る限り子どもたちとの生活を楽しもうとする著者のすがたが、本当の子育てとはこうあるべきだ、こう言う母親でありたい、と感じさせてくれるのです。それは自閉症とか自閉症でないとか、その枠にとらわれず、万人に感じさせるはずです。
最後に著者は、自閉症の子どもを抱える人が周囲にいたとして、その家族に手を差し伸べる方法を、具体的に提示しています。日本人はシャイなのでなかなか積極的に自発的に動くことが出来ませんが、そのときはこの本を思い出したいです。

このジョージとサムの弟ジェイク(自閉症ではありません)が、最後に母親に訴える言葉があります。ジェイクの言葉を聞いて、このお母さんの子どもたちへの接し方が、本当に愛情深いものなんだと、確信できます。そのジェイクの言葉は、是非とも本書で、実際に読んでみて下さい。

すべてを読んだ後、もう一度冒頭の「ある朝」のエピソードを読み返しました。最初に読んだ時とは全然違う目で、彼らの様子を読むことが出来ます。
11:58 : [本・タイトル]さ行トラックバック(0)  コメント(1)

死のロングウォーク/スティーブン・キング

4594004539バックマン・ブックス〈4〉死のロングウォーク
沼尻 素子 リチャード・バックマン スティーヴン キング
扶桑社 1989-07

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キングの初期の作品のようです。なんとも暗澹たるロードムービーのような、いや、小説だからロード・ノヴェルとでも言うのでしょうか。近未来、アメリカでは「ロング・ウォーク」というゲームが開催され、全米中を期待と興奮の坩堝に落とします。100人の少年を無差別に集め、ルールに従って銃殺してゆく、最後の一人になるまで逸れは続けられる、歩いている間は眠る事はおろか、立ち止まる事もできず、速度が落ちただけでも警告を与えられ、警告が1時間に3回発せられたら4回目には…。なんとも残酷でショッキングな内容です。読んでいるうちに段々と辛くなってくると同時に、目が離せない物語。結末は予想が付くのですが、予想が裏切られる事を切望して読んでしまった。甘かった。。。

見知らぬ100人の少年たちがロング・ウォークを通じて友情を育み、極限の中でも相手を思う気持ち、あるいは思い出話の中にある少年たちの思春期など、キングらしい爽やかな部分もありますが、いかんせんあまりにも残酷な設定。キングの好きな人にしかすすめられないかも。「バトル・ロワイヤル」はこの小説を元にして作られたに違いないですね。

21:54 : [本・タイトル]さ行トラックバック(0)  コメント(0)

死のロング・ウォーク/S・キング

4594004539バックマン・ブックス〈4〉死のロングウォーク
沼尻 素子 リチャード・バックマン スティーヴン キング
扶桑社 1989-07

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キングの初期の作品のようです。
なんとも暗澹たるロードムービーのような、いや、小説だからロード・ノヴェルとでも言うのでしょうか。
近未来、アメリカでは「ロング・ウォーク」というゲームが開催され、全米中を期待と興奮の坩堝に落とします。
100人の少年を無差別に集め、ルールに従って銃殺してゆく、最後の一人になるまで逸れは続けられる、歩いている間は眠る事はおろか、立ち止まる事もできず、速度が落ちただけでも警告を与えられ、警告が1時間に3回発せられたら4回目には…。
なんとも残酷でショッキングな内容です。読んでいるうちに段々と辛くなってくると同時に、目が離せない物語。
結末は予想が付くのですが、予想が裏切られる事を切望して読んでしまった。甘かった。。。

見知らぬ100人の少年たちがロング・ウォークを通じて友情を育み、極限の中でも相手を思う気持ち、あるいは思い出話の中にある少年たちの思春期など、キングらしい爽やかな部分もありますが、いかんせんあまりにも残酷な設定。
キングの好きな人にしかすすめられないかも。
「バトル・ロワイヤル」はこの小説を元にして作られたに違いないですね。
14:59 : [本・タイトル]さ行トラックバック(0)  コメント(0)

そうだ、葉っぱを売ろう! /横石 知二

4797340657そうだ、葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生
横石 知二
ソフトバンククリエイティブ 2007-08-23

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いつも、読んだ後に暗ーい気持ちになってしまうような「ノンフィクション」を好んで読む私ですが、今日は違いますぞ。
ものすごく気持ちがいい、前向きでパワーをもらえるようなノンフィクションをご紹介します。
それがこの本。「そうだ、葉っぱを売ろう!」です。
今から30年ほども前に、ある新米(たったハタチ)の農協職員(営農指導員)が、過疎にあえぐ瀕死の徳島県の上勝町を「葉っぱビジネス」によって、華々しく蘇らせる物語。
各種メディアでも頻繁に取り上げられているらしいので、ご存知の方も多いかもしれません。
著者は1979年に20歳で上勝町農協に「営農指導員」として採用されます。
小さな過疎の町で活気も覇気も感じられない、低迷しているという感じの町。
それではいけないと、著者が農家の人たちに「改革」を唱えても、「よそ者に何が分かる」と一蹴される。
そんな雰囲気の中で、頼みの綱である収穫元の「みかん」が冷害で根こそぎやられてしまうという大ピンチが襲います。
「ミカン農協」と言うだけに、ミカンに頼り切っていた上勝町の農協は、大打撃。しかし、そのピンチが逆にチャンスとなる、つまりミカンが冷害にあって初めて一丸となって復興に取り組むと言う、、、殆ど全てはそこから始まったようです。何か出来ないか、何かと模索した挙句に取り組んだ末に生れた「彩」事業。
葉っぱビジネスとはつまり、懐石料理などの「飾り」のような「妻もの」である「葉っぱ」を売るビジネス。ちょっと自然があれば葉っぱなんてその辺にいくらでもある、その葉っぱが売れるのか?という常識を覆し、ちゃんと「彩」というブランドの「売り物」になって、町を見事に生き返らせてゆくのです。
かと言って初めから「葉っぱビジネス」が成功したわけではなくて、もちろん苦労もあれば失敗も、いろーんな紆余曲折があるのです。それをどうやって乗り越えて行ったか、挫けない著者の頑張りに感動するのです。
そんな著者と気持ちを一体にして町の人たちも、いろんなことに取り組んでいく。その姿の前向きな事といったら、読んでるだけで元気が伝わってくるよう。そして、人と人とのつながりの大切さなども大いに再確認させられました。
著者は「暇ではいけない」と考えました。暇だと人の悪口や愚痴や、よくないことばかり考えてしまう、そんな暇がないぐらい「忙しい」ほうが人のためにはいいんだ。と。
でも、忙しいとは「心を亡くす」と書く、忙しい事は必ずしも人にとって「良い」事ではないと思っていたのですが、著者の言う「忙しさ」はここでは「生き甲斐」となっているんです。
この本を読めばこの町の人たちが、「忙しい」イコール「楽しく元気に生きている」ということが分かります。人々が元気になればもちろん、町全体も生き生きとしてきます。
この町は女性の年よりもパソコンやインターネットを使いこなしています。年寄りには出来ない、とあきらめない。
病気になっても自分の葉っぱや農作物を売ることが楽しみで、早く元気になろうとする。人を動かしているのは「気」なんだと、しみじみ思います。

見て!この表紙のおばさんの元気な笑顔を!
今の社会に一体何が必要なのか、答えがつまってる本だと思いました!
10:32 : [本・タイトル]さ行トラックバック(1)  コメント(4)

14歳/千原 ジュニア

406213799214歳
千原 ジュニア
講談社 2007-01-13

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麒麟田村氏の「ホームレス中学生」と共に読みたかった本。
今テレビで見ている著者、千原ジュニアとはずいぶんイメージが違うような気がする…いや、納得できる気もする。
せっかく合格した中高一貫教育の中学に通ううちに、自分を見失い、不登校になり、屋根裏部屋に鍵を掛け終日パジャマ姿で過ごすようになった千原ジュニア。
そのことで親は言い争いもするし、母親は泣いている。
千原ジュニアの心の中は、いろんな言いたいことや想いが渦巻いているのに、それを言葉で親に伝えられない。そして、爆発して壁に穴を開ける。すると余計に母は泣く。そんな毎日が綴られていきます。
読んでいてかなり重苦しかったです。
田村の「ホームレス中学生」みたいな感じかと思って読んだけど、ユーモアと人情あふれる「ホームレス中学生」とは全然違ってキツかった。延々と自分でもどうにもならない内面が描写されているんだもん。こう言うのは読んでいて伝染しそうな気がして、こちらも不安定な気分になってしまう。
自分のこどもがこう言う自体になったとき、親としての真価が問われる気がするけど、なかなか立派な対応は取れそうにないわたし。やっぱりご飯に薬を混ぜ込むかもしれません。
ただ、突破口が開けるのは「おばあちゃん」のお陰なのですが、(引きこもりの子どもの気持ちをほぐしたのはおばあちゃんだった…どこかで聞いたような話です)そこから、兄とコンビを組んで漫才師として生きていく道を見つけるくだりは、かなり感動的でした。
真っ暗な中にいたんですね。
でも、その暗い洞穴の先に一条の光が差し込み始め、やがて光射す世界に…。
ラストにすくわれます。
今は明るく笑ってるひとも、ちょっと前は辛い時期があったんだと、今辛い人も、今は見えない光が壁の向こうほんの1センチの所まで来ているかもしれないんだと思える作品。
12:23 : [本・タイトル]さ行トラックバック(0)  コメント(2)